ポートの街と駆け出し冒険者4
「皆様、あと一時間位でポートの街に到着します」
夕暮れも近くなった頃御者の声と共に独特の香りが風に乗りやってくる。
隣に座っているカンナが風を感じるように目を瞑る。
「この匂いを嗅ぐと地元に帰ってきた感じがするなー」
カンナがそう言うってことはこれが話に聞いていた潮の香りってやつか。単純に良い匂いとは言えないが、決して嫌じゃない。不思議な匂いだ。
「ゴートは街についたらどうするんだ?」
すっかり性別を隠さなくなったカンナがポートの街に到着してからの予定について聞いてきた。確かに案内して貰うことにはしたけど細かい話はしてなかった。
「こんな時間だし取り敢えず宿かな。カンナは実家があるのか?」
「まあそんなとこ。それよりいつ街を案内しする?」
「カンナさえ良ければ明日とかどう?俺も初めての街に着いてすぐ依頼を受ける気は無いし」
取り敢えず海を見ることと魚介類食べること。この二つを達成しない事には依頼どころではないのだ。
「まっかせといて!」
なんとも頼もしい返事。
「あ、見えてきた!ゴートあれがポートの街!」
乗り出すように前を指差すカンナ。
その指の先には夕暮れ青から赤へと美しいグラデーションを見せる海と空。
「これが…綺麗だ…」
人生初の海はそれはそれは美しいものだった。
この時見た光景は一生忘れないだろう。
俺が余韻に浸っている間に、馬車はもう間もなく街に到着という所まで進んでいる。降りる準備をしなければ。
それから数分後、俺はついにポートの街に到着した。
ポートの街は北に主となる門があり東西に小さめの門という作りで、南側は海となっているようだ。また街に入って直ぐわかったが、北から南にかけて段々と土地が下っていっている。恐らく海からここまでずっと緩やかな坂道となっているのだろう。
「それではお二方、今回はどうもです」
家に戻るのだろうテッドさんが声をかけてくれた。後ろでは子供達が手を振っているので振り返しながらテッドさんに伝話しかける。
「暫くはこの街に居ますんで何かあれば冒険者組合に伝えて下さい」
「ええ、ゴート君も是非この街を楽しんで!」
俺以外はここが地元、挨拶が済むと慣れた足取りで帰っていく。
カンナにも声をかけようとした所で明日の集合場所を決めていなかった事を思い出す。
「カンナ、明日何処へ何時に集合にする?」
「ここに九時で良いんじゃない?ここからならこの街を端からずずっと紹介出来るし」
「わかった。それじゃ明日はよろしく頼むよ」
「任せといて!んじゃまた明日!」
そう言って街の中心部へと走って行った。
俺もぼんやりしてないで今晩の宿を見つけなければ。
少し歩いた所に素泊まりの宿を見つけた。
明日折角カンナに案内して貰えるのだから今日のところは海の幸は我慢するのもありか。
それに買った保存食が少し余っているから食べ切らないと。中途半端に残すより一度食べきってまた買う方が多少お金はかかるが管理がしやすい。
宿で一泊分の料金を払い部屋に向かう。飯付きの宿は明日から楽しめば良い。
他人と長時間いた気疲れや移動疲れも多少有ったため、軽い鍛練をした後に残った保存食を食べ早めに床についた。
ポートの街初日は何をするわけでもなく、あっさりと終わったのだった。




