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冒険者ゴートの一生  作者: ケバブ
四章
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ポートの街と駆け出し冒険者3

野営所は簡易的な釜戸と屋根がある東屋のような場所だった。


「さあ皆さん、今晩は私が夕食をご馳走しますよ!といっても猪肉ですけどね」


夕食を済ませようという所でテッドさんがおどけながら皆に肉を振る舞うと発表する。


まさか食べられると思っていなかったのか護衛の冒険者や子供たちそしてもう一人の乗客である少年も嬉しそうだった。


ただでいただくのも申し訳ないと、普段から大人数の料理を作り慣れているという奥さんが調理をかってでてくれた。旦那さんは奥さんの補助係をするらしい。


他の人も見張りや寝床の準備等、馬の世話等それぞれの役割を全うしていく。俺も子守りという大役をしっかりと果たさなければならないというもの。



「今ある調味料だとこれくらいしか出来ませんが…」


個人的には不本意な出来なのだろうか、自信無さげにスープを配膳していく。


調理して貰った感謝を伝えてから食べ始める。


「うまいな…」


誰かがぼそりと呟いたのが聞こえたかと思えば、皆がうまいうまいと笑顔で食べ進める。


俺も一口。確かに美味しい。

勿論猪特有の臭さが全く無いわけでは無いがかなり抑えられていて、人によってはこれが好きという人も居るだろう。肉の量だけはかなりあったため皆お腹一杯食べることができた。



食後、腹も少し落ち着いてきた頃、どうしてこんなに美味しく出来たのか聞いてみたところ、なんでもお茶用のハーブで肉と相性が良いものが有ったらしく、そのお陰で臭みがいい感じに取れたみたいだ。

野営所の料理としてはかなり上等な夕飯になった。



片付けも済み、其々の時間。子供が居る組は早めの就寝だ。


俺は体が鈍らないように鍛練をしようと護衛に一声かけて、少し離れた場所で体を解し何時ものように素振りを始める。


暫く槍を振り続け最後に全力の突きを放った所で深呼吸。


パチパチと時間が時間だからか静かな拍手が聞こえる。途中から近くで見ていたことには気がついていたが、ただ見学している様子だったので後回しにしていたのだ。


「凄い凄い!槍が体の一部みたいだ!」


興奮したのか無邪気にはしゃぐ声。想像と比べかなり可愛らしい声色に驚く。

朝、馬車に飛び乗って来た時は咄嗟の事だったから余り意識していなかったが、改めて聞くと完全に女の子の声だ。フードを被っていたこともあって勝手に少年だと勘違いしていた。


「誉め言葉、どうも。ずっと寝てたから聞かなかったけど君も冒険者?」


「うん!うち…じゃなかった、私のなまえはカンナ…です、九級の冒険者です。よろしくです!」


そういいながら握手のために手を差し出すカンナ。


「俺は七級冒険者のゴート。こちらこそよろしく。あ、依頼中でもないし楽な話し方で構わないからさ」


物凄く違和感のある敬語に苦笑しながら握手に応じる。その手は大きさこそ少女のそれであったが、努力の跡が解る手だった。


そこからは互いに冒険者同士、使ってる装備の話や今までこなした依頼についてなど話題は尽きない。


「まだ十三歳なのに九級は凄いな!」


話をしていてカンナの年齢に驚く。


「少しだけ土魔法が使えてね。たまたまだよ」


「勿論それも有るんだろうけど、カンナが地道な努力を怠っていないのが大きいんじゃないか?」


誉められたのが余程くすぐったかったのか。照れ臭そうに頭をかくカンナ。その拍子にフードが取れる。やや中性的ではあるもののかなり整った顔立ちだ。身長も年の割には高めなので声色さえ変えれば少年に見えなくもない。


「顔、隠してたんじゃないのか?」


「絡まれるの面倒だから何となく隠してるだけだから。それに冒険者同士ってのもあるし、ゴートさん良い人そうだしね」


良い人か、少し照れる。次の話題にいこう。


「そういえば、俺はポートの街初めてなんどけどカンナは?」


「何を隠そう、うちはポートの街出身なんだ!少しまえリンの街に依頼が沢山有るって話を聞いて行ってたんだけど、最近落ち着いてきちゃったからね。それなら慣れてるポートの街の方が仕事しやすいかなと思って戻ることにしたんだ」


「そうだったのか、もし良ければおすすめの店とか有ったらおしえてくれよ」


「だったらいっそのことうちが街案内してあげようか?」


「それは助かるけど何か申し訳ない気がするな…」


「その変わりと言ってはあれだけど、うちに指導を頼めないかな。一日何て言わない、一時間だけでも良いんだ!」


カンナの真剣な眼差しに少し驚く。

年齢の事を考えればまだまだあせる必要は無いはずだが、何か事情があるのだろう。


歳も性別も違うのだが、なぜかデミの村をでたばかりの自分を思い出す。


「俺で良ければ指導しよう」


気が付けば口からでる肯定の意、

明確な目的がある旅路でもあるまいしここで力を貸す位なんて事無いだろう。


翌朝軽い朝食を済ませて出発。速度が余り出ない分早い時間からの移動だ。


初日に猪の襲撃というアクシデントが有っただけにどんな旅路になるかと思ったが平和な旅路。


道中は子供たちと遊んだり、カンナと鍛練方法について話ていたから退屈することも無かった。


こうしてポートへの旅は順調に進んで行く。


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