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moment  作者: しん
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第二十九幕

ナナーside


「おはようございます」

「おはよう、ナナさん」

あれ、晋作さんまだ寝てるのかな。

「ふぁ〜あ」

「あ、晋作さん。寝不足ですか?」

「考えごとがあってな」

「へぇ。珍しい、もしかして熱でもあるんじゃ」

冗談めかして熱を測ろうとする。

「俺様を何だと思ってんだ!考えごとくらいする」

「はいはい、ごめんなさーい」

わいわいと朝餉を食べ終えると

「わたしはこれから出かけるけど、帰りは遅くなるから先に寝てて構わないからね」

わたしの頭を優しく撫でながら小五郎さんが言う。

「はい、わかりました。

 お仕事がんばってくださいね」

「ああ、行ってくるよ」

小五郎さんを見送って広間に戻ると

「よしっ!邪魔者は居なくなったな!」

邪魔者って…

「出かけるぞ、早く準備しろ!」

「え、!もうっ急なんだから〜」

と言いながらいそいそと支度をしに部屋に戻る。


「お待たせしました」

「おう、それじゃあ行くか」


晋作ーside


ふふ、今日の段取りは完璧だ!

なんせ、昨夜は一睡もせずに考えたからな。

小五郎も今日はお偉いさんの接待で遅くなるし

むふふふっ。


「どうしたの、晋作さん?変な顔してるよ」

あははっ。と楽しそうにナナが笑う。

「ねえ、今日はどこに連れていってくれるの?」

「それは着いてからのお楽しみだ!」

向かったのは西洋の骨董品を扱う市場だ。

「わぁ〜!懐かしい!」

「ナナの時代にもあったのか?」

「はい、ここまで古いのはないですけど、これを改良したものがたくさん流通してましたよ」

「そうか。未来では当たり前のようにあるのか」

「晋作さん、向こう見て来てもいい?」

「ああ、あんまり離れるなよ」

「は〜い」

嬉しそうに向こうへ走っていく。

連れてきて正解だったな。

「そこの旦那!良いものが入ったんでぇ!

 見てってくださいよぉ!」

「意中の人に持ってこいの品ですぜ!」

「何だと?!早く見せろ!」

「へい、これでさぁ!」

「何だこれ?ただの輪っかじゃねぇか」

「違うんで!これはえんげーじりんぐって言って

 西洋じゃあ好いた女の左の薬指にはめるんで」

「ほぉー。気に入った!一番いいやつをくれ」

「へい!まいど〜」

店のおやじに包んでもらったリングを懐に入れて

ナナのところに行く。

「なんか良い物は見つかったか?」

「あ、晋作さん。見たことないものがたくさんあって夢中になっちゃった!」

「わはは!それは良かった!そろそろ飯にするか」

いつも贔屓にしている料亭に向かう。


ナナーside


わあぁ〜高そうな料亭。

前に連れてきてもらったところもすごかったけど

ここはより一層豪華だ。

こういう時に思い知らされる。

普段はふざけてばっかりだけど、晋作さんってお偉いさんなんだなぁ。

まじまじと晋作さんの顔を見てると

「ん?どうした、俺様に見惚れてるのか!」

わははっと子どもみたいに笑ってる。

運ばれてきた料理は宮廷料理みたいに豪勢なものだった。

「はぁ、もう食べられない」

「満足したか?」

「うん!とっても美味しかった!」

「よし、腹も膨れたことだし温泉にでも入るか」

「えっここ温泉もあるの?」

「ああ。美肌になるってここらじゃ有名らしい」

美肌に!?それは、ぜひとも入らなくちゃ。

「今って入れるのかな?」

「今日は一日貸切にしているから、いつでも入れるぞ」

え!貸切って料亭全部?そういえば他のお客さんのいる気配がないような。

「ほら、行くぞ」

「う、うん」


晋作ーside


料亭を貸切にしたのは、他でもない

ナナと一緒に温泉に入るためだ。

他の男にナナの裸を見せるわけにはいかないからな

恥ずかしいから先に入ってろと言われたが

遅いな…


「おーい!まだかぁ?のぼせさせる気かー」

「い、いま行きます」

カラカラカラ…

「やっと来たか」

「だ、だめ!晋作さんこっち向かないで」

「なんだ、背中流してくれないのか?」

「いいけど、こっち見ないでね!」

「へいへい」

ざっぱぁーん。

温泉から出てナナの前に背を向けて座る。

ゴシゴシ。

「痒いところないですか?」

「んー、右のほう」

「ここ?」

「あ〜そこそこ!」

背中を流し終わったところで前を向く。

「きゃっ、晋作さん!こっち向かないでって言ったのに」

「俺しか見てないんだからいいだろ」

「前も洗ってくれ」

「もう、あんまり見ないでよね」

見ないでって手拭いで隠してるじゃねぇか。

「…この傷、どうしたの?」

胸にある古傷を見て聞いてくる。

「ん?あぁこれか。まぁ日本を変えようとしていると色々あるのさ」


ナナーside


晋作さんの胸には大きな刀傷があった。

未来のわたしたちの平和な時代のために、晋作さん達がこうやって体を張っていてくれていたんだ。

なんだか胸がきゅーっとなって、思わず晋作さんの体を抱きしめる。

「ナ、ナナ?!む、胸が…ちょっ」

「きゃっ!晋作さん何か当たってる、、えっち!」

バシンっと思わず平手打ちをしてしまった。

「いってぇ〜。しょうがねぇだろ!

 好きな女が目の前に裸でいるんだから」

「だってびっくりしたんだもん…」


晋作ーside


ちゃぷん。

ナナがおずおずと温泉に入ってくる。

「ほら、こっちにこい」

「変なの当てないでね」

「…努力する」

そばにきて俺の頬に触れる。

「叩いちゃってごめんね。まだ痛い?」

「大丈夫だ、気にするな」

よいしょっとナナを抱き上げ膝の上に乗せる。

「きゃ、」

「滑らかな肌だな」

「あ、ありがと」

ナナの華奢な肩の上に顎を乗せる。

「今日は楽しかったか?」

「うん!すっごく楽しかったよ!

 誘ってくれてありがとう。晋作さん」

「……」

「晋作さん?」

「あんまり可愛いこと言うな。いま、必死に抑えてるんだからな」

「…あ、なるほど」


温泉から出て部屋に戻り熱を冷ます。

「あ、晋作さん!髪の毛乾かさないと風邪引いちゃうよ」

そう言って髪を手拭いで丁寧に拭いてくれる。

気づいたらナナの膝の上で寝ていた。

煽いでくれている団扇のそよ風が気持ちいい。

未来の子守唄だろうか…心地よい涼やかな声がまた眠りへと誘う。

こんな幸せを感じることができるなんてな

「起こしちゃいました?」

「いや、いい気持ちだ」

また目を閉じて深い眠りに落ちていく。


ひと眠りしたところで藩邸へと戻る。

俺としてはそのまま泊まるつもりでいたのだが、

ナナがどうしても帰ると言うので仕方なく帰路につく。


小五郎ーside


今は何をしているだろうか。

晋作のことだ、きっとわたしが居ないことをいいことに彼女を連れ回しているに違いない。

帰りにナナさんの好きな甘味をお土産に買って行こう。

「…はん!桂はん!」

「ん?何だい?」

「何だいじゃありまへん、わてのことほったらかして何考えてはりますの?」

「何って」

わたしは今何を考えていた?

「もしかして、好きな女子でもできたんとちゃいます?」

「そんなわけないだろう?わたしにはお前だけだよ」

甘い言葉を耳元で囁く。

「ほんなら早く可愛がってくださいまし」

「先に情報だよ」

「嫌やわぁ、わての誘いを断るなんて桂はんくらいですわぁ」

「これも仕事なんだ、わかってくれるだろう?」

芸妓から幕府の情報を聞き出す。


「かなり遅くなってしまった」

馴染みの芸妓がなかなか帰してくれず、甘味処も閉まっていた。

勇足で帰路を急ぐ。

藩邸の門の前に誰かが立っていた。

「ナナさん?」

こちらに気付いて小走りで向かってくる。

「小五郎さんっ!おかえりなさい」

「まだ起きていたのかい?」

「はい、夜食を召し上がるかと思って用意を」

「そうか。ありがとう」

「はい!お風呂沸いてますから先に入ってきてください。その間に夜食を温めておきますね」

「ああ、お言葉に甘えさせてもらうよ」


風呂から上がると夜食が用意されていた。

「夜中にすまないね」

「いえ、遅くまでお仕事お疲れさまでした」

「君が労ってくれるなら頑張る甲斐があるよ」

「そうだ、明日は何か予定はあるかい?」

「明日ですか?特に何もないですよ」

「それならわたしと逢い引きしてもらえるかな」

「あ、逢い引きって小五郎さん!」

「美味しい甘味処があるんだ」

「甘味処!行きたいですっ」

「じゃあ決まりだね」


ナナーside


今日は小五郎さんと甘味処に来ている。

「ん〜おいしいっ!ほっぺたが落ちちゃう」

「ふふっ。喜んでもらえて何より」

小五郎さんと甘味を楽しんでると

「あら、桂はん?」

綺麗な女の人が小五郎さんに声をかけてきた。

「菖蒲か、三味線の稽古の帰りかい?」

「あい。そんなことより、昨日はさっさと帰ってしまわれて寂しかったんですぇ」

「すまないね」

「今度はたっぷり可愛がってくださいまし」

そう言って女の人は行ってしまった。

昨日帰りが遅かったのはあの人と一緒にいたのかな

「小五郎さんってやっぱり女の人に人気あるんですね」

「そんなことないよ」

あの女の人の小五郎さんを見る目、そんなことあると思うんだけどな。

「さっきの人はどういったお知り合いなんですか?」

「菖蒲かい?彼女は芸妓で情報源の一人だよ。

 幕府の情報を流してくれる」

「へぇ、そうなんですか」


小五郎ーside


菖蒲と会ったのは想定外だったな。

ナナさんは気を悪くしていないだろうか。

「他に行きたいところはあるかい?」

「えっと、お昼の買い物でもいいですか?」

「構わないけど、もう帰るのかい?」

「はい、そろそろ晋作さんも起きる頃ですし」

「それにさっきみたいに知り合いの女性の方に見られると良くないかなって」

「そんなこと気にしなくていいよ」

そう言って手を握ろうとすると避けられてしまった。

「ナナさん?」

「さ、行きましょう!晋作さんが起きちゃいます」


藩邸に戻り三人で昼餉をとる。

晋作は奇兵隊の訓練に行き、ナナさんは洗濯物を干しに庭へ降りて行った。

「ナナさん、手伝うよ」

「ありがとうございます」


「…軽蔑したかい?」

「え?」

「女性を利用していると知って軽蔑しただろうか」

「そ、そういうわけじゃ!お仕事だってわかってます」

「でも、わたしの知らない小五郎さんがいて寂しくなったと言うか…その、」

「...!」

これは期待してもいいのだろうか。

「焼きもちを焼いてくれたのかい?」

「へ?焼きもち?!そ、そんなこと...!」

「ふふふっ。顔が真っ赤だよ」

「小五郎さんが変なこと言うからですよー!」


ナナーside


もうっ、小五郎さんってばサラッとそういうこと言うんだから。

両手で顔を扇ぎながら隣で笑っている小五郎さんを見る。


ガヤガヤ。

訓練場のところがいつもより騒がしい。

「なんだか今日は訓練場が賑やかですね」

「ああ、今夜は騎兵隊の慰労会があるんだよ」

「そうなんですね!よかったら配膳のお手伝いしましょうか」

「ありがとう。ぜひ頼むよ」

洗濯を干し終えて慰労会の準備の手伝いに台所へ向かう。


夕刻になり、訓練を終えた奇兵隊の人たちがぞろぞろと大きな広間へと移動し始める。

人数が多いので配膳をするのに何度も台所と広間を往復する。

全員に食事が行き渡ったところでお酒を注ぎに行く。


「はいどうぞ、晋作さん」

「おう!さんきゅーだ!」

「今夜は無礼講だっ!!食べて飲んで騒ぐぞ~!!」

つづく

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