第十四幕
朝、目が覚めると何だか頭がフワフワする。
「風邪かな」
なんて思いながら台所に向かう。
女将さんと朝餉の準備をする。
みんなと朝餉を終えて、庭の掃き掃除を始める。
太陽が異様に熱い。
と思った瞬間。
フラッ。
「ナナさん!」
倒れかけた身体を龍馬さんが支えてくれる。
「どうしたがや?」
「ん、少し熱っぽいみたいです」
龍馬さんはおでこに自分のおでこをくっ付ける。
「本当じゃ!部屋で寝たほうがええ」
お姫様抱っこで部屋に連れて行ってくれる。
「今、薬を持ってくるき。ちくと待っちょれ」
そう言って部屋を出る。
少しして龍馬さんがお盆に薬と水を乗っけて戻ってくる。
「ほれ、口を開けて」
言われるがまま口を開ける。
薬と水を飲ませてくれる。
「ん、ゴクッ」
また布団に横になる。
「薬が効いたら良くなるき。もうちょっとの辛抱じゃ」
そう言って頭を撫でてくれる。
「何か欲しいものはあるか?」
フルフルと首を横に振る。
「ほうか」
「龍馬さん…お仕事は?」
「ん?今日くらい休んでも大丈夫じゃろ」
「ダメです!大事なお仕事」
「おまんの身体も大事じゃ」
「わたしのことは気にせず行ってください」
「しかし」
「薬も飲んだし大丈夫ですよ」
「…ほうか、すぐ帰って来るき。ちくと待っちょれ」
「はい」
ポンッと頭を撫でて部屋を出ていく。
静かになって少し寂しさが広がる。
夕方になって龍馬さんが帰って来た。
「入るぜよ」
目を開ける。
「眠ってたか」
「少し…お仕事はどうでしたか?」
「おう、上手くいってるぜよ」
「そうですか」
「気分はどうじゃ?」
「今朝よりは良くなりました」
「ほうか、夕餉はお粥にしてもらおうか」
「はい」
「ナナちゃん」
慎太さんが部屋に入ってくる。
「大丈夫ですか?」
「うん」
「これ、良く効く薬です」
「ありがとう」
「入るぞ」
今度は以蔵が入ってくる。
おしぼりとお水の入った桶を持っている。
「冷やしたほうがいい」
おしぼりを水に濡らして少し絞る。それをおでこに乗せてくれる。
「気持ちいい…」
「お前は頑張り過ぎだ、少しは休め」
「ありがとう」
「入るよ」
武市さんが入ってくる。
「大丈夫かい?」
手には本を数冊持っている。
「寝ているだけでは退屈だと思ってね、本を持ってきた」
「ありがとうございます」
部屋の中が賑やかになる。
「おんしら騒ぐとナナさんが休めんじゃろ」
龍馬さんがみんなを嗜める。
「それもそうだね」
「後でまた来ます」
「ゆっくり寝ろ」
そう言って三人が出て行く。
「すまんの」
「いえ、龍馬さんがお仕事に行ってから、部屋の中が静かで寂しかったんです」
「ほうか」
障子が開く。
「邪魔するぞ」
「こら晋作、開ける前に聞くものだろ」
高杉さんと桂さんだ。
「お二人共どうしたぜよ?」
「ああ、ナナさんが風邪を引いたと聞いてね。栄養のつくものを持ってきた」
「早く治せよ!」
「これはありがたいぜよ!女将さんにお粥に入れてもらおう」
「台所に持っていくよ」
「案内するぜよ」
桂さんと龍馬さんが部屋を出る。
「大丈夫か?」
「はい…」
高杉さんがおでこに手をあてる。
「少し熱があるな」
「高杉さんは大丈夫ですか?」
「馬鹿野郎!こんな時に人の心配をするやつがいるか!」
と、でこぴんされる。
「痛っ」
「全くおかしなやつだな」
乱れた髪を直してくれる。
「高杉さんの手、冷たくて気持ちいい…」
「お前が熱いんだ」
手を掴んで頬にあてる。
「…!」
「はぁ…」
「なぁ、口吸いすると相手に伝染るらしい。やってみるか?」
「結構です」
「やっぱりか」
がくんと肩を落とす高杉さん。
障子が開く。
「晋作、あんまり長居するとナナさんの身体に障るよ」
「そうだな」
「ナナさん、お大事に」
「はい、ありがとうございます」
「玄関まで送るぜよ」
「いや、いい。ナナについてやってくれ」
「すまんちや」
二人が帰っていく。
「今、女将さんにお粥を作ってもらってるき」
「はい」
「邪魔する」
スッと障子が開く。
「大久保さん!?」
「風邪を引いたと聞いてな」
「ほうですか」
「先ほど女将に薩摩からの野菜や果物を渡しておいた」
「ありがとうございます」
「早く治せ」
それだけ言って帰っていく。
「ほんにおまんはすごいぜよ」
龍馬さんは何故か感心している。
「何か欲しいものはないかの?」
首を横に振ろうとして止める。
「あの…」
「ん?」
「手を握っててもらえますか?」
「こうかの?」
優しく、だけどしっかりと握ってくれる。
「はい」
そのまま目を閉じる。
「おまんが元気じゃないとみんな気が気でないようじゃ」
「わしも」
消えゆく意識の中で龍馬さんの声が聞こえる。
少し眠ってからお粥を食べて薬を飲む。
早めに休むように言われて眠る。
朝目が覚めるとすっかり治っていた。
「んー!たくさん寝た!」
台所に行って朝餉の準備をする。
部屋に行くと
「ナナさんおはよう」
「もう大丈夫がか?」
「はい、おかげさまで。ご心配おかけしました」
ぺこりと頭を下げる。
「元気になって良かったです!」
「うん!」
「以蔵もありがとう」
「別に、俺は何も」
みんなで一緒に朝餉を食べる。
後で、長州藩邸と薩摩藩邸にお礼を言いに行かなきゃ。
昨日、桂さんと大久保さんが持ってきてくれたお野菜と果物を頬張る。
「美味しい…!」




