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現代の工場勤務だった俺、董卓に転生したので酒池肉林を楽しむつもりが、気づけば天下を統一していました  作者: 水原伊織


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第9話 本社の自爆、爆速の現場急行、そして最大の収穫

「董公! 洛陽にて超ド級の大炎上クーデターが発生いたしました!」


進軍中の俺のもとへ、血相を変えた李儒が駆け込んできた。


「何が起きた? 何進のやつ、上手くやったのか?」


「いえ……何進大将軍、十常侍の罠にハマって宮中で討ち取られました!」


「……は?」


俺は思わず耳を疑った。


(外部から俺たちを呼び寄せて圧力をかける前に、本人の首が飛んだだと……!? どんなガバガバなリスク管理をしてるんだあいつは!!)


話を聞けばさらに酷い。

大将軍(CEO)を殺されたことに激怒した袁紹(若手エリート幹部)らが、激昂して軍を率いて宮中に突入。片端から宦官(髭のない男)を殺して回るという、収拾のつかない大暴走を始めたというのだ。


「さらに最悪なことに! 宦官の一人・段珪だんけいが、幼い少帝(皇帝)様と、その弟君である陳留王(劉協)様をお連れし、宮中から脱出・逃亡いたしました!」


「トップ二人(社長と次期社長)が人質に取られて連れ去られた!? 本社、完全に崩壊してんじゃねぇか!!」


俺は頭を抱えた。

本社役員の権力争いがこじれにこじれた挙句、会社の重要資産(皇帝)を敵に持ち逃げされるという、前代未聞の超ド級トラブルである。


「どうなさいますか董公! 洛陽は現在、火の海で乱戦状態です!」


「迷う必要がどこにある! 皇帝の手配(捜索)と身柄確保が最優先だ!!」


俺は怒鳴った。


現代のビジネスでも同じだ。役員が全滅しようが社屋が燃えようが、会社の「根本的な権利・資産」を確保したやつが次の主導権を握る。ここで皇帝を救出すれば、俺の立場は一気に爆上がりする!


「李儒! 全騎兵部隊を集めろ! 荷物を捨てて最速で追撃だ! 導線ルートは黄河沿い、小平津しょうへいつ方面へ絞るぞ!」


「ハッ! 直ちに出撃します!」



俺が率いる西涼の精鋭騎兵隊は、日頃の鍛錬と最適化された馬匹管理のおかげで、圧倒的な機動力を誇っていた。


黄河のほとり――小平津。

激しい息切れとともに逃げ延びていた段珪ら宦官の一味を、俺たちはあっという間に包囲した。


「ひ、ヒィィッ……! 西涼の鬼神、董卓……!?」


逃げ場を失い、俺たちの放つ圧倒的な威圧感(と重武装の兵たち)に絶望した段珪は、もはやこれまでと覚悟を決めたのか、そのまま黄河の濁流へと身を投げ、あっけなく自殺した。


「よし、敵の残党を掃討! ……で、皇帝陛下と陳留王様は!?」


馬から飛び降りた俺は、川沿いの草むらを捜索させた。

すると、夜露に濡れ、徒歩でトボトボとさまよっていた二人の幼い少年を見つけた。


兄の少帝(劉弁)は、恐怖でガタガタと震え、泣きじゃくって言葉も出ない状態だ。

しかし、その傍らで兄の服の裾をぎゅっと握りしめていた弟――後の献帝となる陳留王(劉協)は、俺の厳めしい大柄な姿を見ても、毅然とした態度で俺を睨み返してきた。


(……ほう。兄貴の方はすっかり参ってるが、この弟(陳留王)の度胸、ただ者じゃないな)


「……そこの巨漢。そなたは何者だ。名を名乗れ」


幼いながらも、威厳に満ちたハッキリとした声。


「――無礼をいたしました。某は破虜将軍、董卓と申します。陛下と陳留王様をお救いするために駆けつけ参りました。……もう安心でございます」


俺は膝をつき、恭しく頭を下げた。



こうして、俺は少帝と陳留王のお二人を無事に保護し、自軍の厳重な警護のもと、煙の上がる首都・洛陽へと堂々の帰還を果たした。


洛陽の門をくぐる俺たちを迎えたのは、逃げ惑う群臣たちと、呆然と立ち尽くす袁紹らの姿だった。


「な……董卓が……皇帝陛下を救出して戻ってきただと……!?」


混乱する本社(朝廷)の幹部たちを横目に、俺はニヤリと口元を緩めた。


(本社の奴らが自爆して勝手に自滅してくれたおかげで、最大の重要資産(皇帝)を無傷でゲットできたぞ……!)


現場の機動力(爆速移動)とトラブル対応力が見事に噛み合った瞬間だった。


こうして、本社の火消しに来たはずの叩き上げサラリーマン(董卓)は、誰もがひれ伏さざるを得ない「最高のカード」を手に、本格的な政権掌握へと足を踏み入れることになるのだった。


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