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現代の工場勤務だった俺、董卓に転生したので酒池肉林を楽しむつもりが、気づけば天下を統一していました  作者: 水原伊織


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第26話 後漢グループ・ホールディングス構想

「ほ、ほーるでぃんぐす……とは、一体どのような制度(仕組み)なのでございますか……?」


完全に未知の言葉を耳にして目を白黒させる曹操と劉備。俺はテキパキと机の上に大きな地図を広げ、筆を走らせながら講義を開始した。


「簡単に言えば『分社化(フランチャイズ化)』だ。いいか? 洛陽の本社(朝廷)一つに全権限と実務を集約しようとするから、書類の山とたらい回しが発生してパンクするんだよ」


俺は地図上の「都(洛陽)」を中心に、大きくバツ印を描いた。


「これからは、現場(地方)のことは現場の優秀なトップに経営権を丸投げする! 本社(朝廷)は権威の象徴として『後漢ホールディングス』という持株会社になり、全体の大まかな予算と法規コンプライアンスだけを統括するんだ」


ポカンとする二人に、俺は指を突きつけて具体的な役職ポジションを言い渡した。


「曹操。君は実務処理能力とスピード感がズバ抜けている。『株式会社・魏(仮)』のCEOとして、中原(関東エリア)の経営をすべて任せる!」


「私……私が、エリア最高責任者に……!?」


「そうだ。現場の採用も決裁も、君の判断で即断即決しろ。前例主義の老害官僚(王允など)の意見なんて一切聞かなくていい!」


「素晴らしい……!『前例がない』と突っぱねられるあのストレスから解放されるというのですか……!?」


曹操の目が、まるで救われたかのようにキラキラと輝き出した。俺は間髪入れずに、隣の劉備へ視線を発射する。


「そして劉備。君の『アットホームな社風』と『人徳』はベンチャーに最適だ。蜀(益州エリア)へ出向し、『株式会社・蜀(仮)』を立ち上げろ。創業資金と兵糧は、我が涼州から『エンジェル投資』として無利子で貸してやる!」


「ええっ!? 資本金を出していただけるのですか!? しかも無利子で!?」


感極まって涙ぐむ劉備。後ろに控える関羽と張飛も「董卓専務、マジ神投資家ッス……!」「これで毎日肉が食えるぞ兄者!」と大喜びで抱き合っている。


「ついでに『江東エリア』は孫堅に『株式会社・呉(仮)』として任せればいい。そして肝心の俺はというと――」


俺はドカンと胸をたたいた。


「この豊かな涼州から、グループ全体の『最高顧問(会長)』として高みの見物を決め込む! 困った時の経営コンサルと、全体のコンプラ監査だけしてやるよ!」



静まり返るテラス。

曹操と劉備は、俺が提示した前代未聞の「ホールディングス構想」のあまりの合理的さに、全身にトリハダを立てて震えていた。


(す……すごすぎる……! 各々が独立した子会社として競い合い、現場の意思決定を爆速化させつつ、董卓専務が最高顧問として全体のバランスを取る……! 誰も損をしない、完璧な組織図ガバナンスだ……!!)


「専務……いえ、董卓会長!!」


曹操と劉備は同時に床にひざまずき、深く頭を下げた。


「この曹操(劉備)、生涯をかけて『後漢グループ』の発展に尽力いたします!!」


「よし、決まりだ! 契約成立(アライアンス締結)だな!」


俺は二人と力強い握手を交わした。


「これより我が後漢グループは――『完全ノー残業・地方分権型ホールディングス』へと生まれ変わる!」


「「「おーっ!!」」」



こうして、世界は劇的な変貌を遂げた。


都で威張っていた老害役員・王允たちは、「実権のない名誉監査役」に追いやられて無力化。

曹操は「魏支社」、劉備は「蜀支社」、孫堅は「呉支社」の頼もしいCEOとして各地の経営に腕を振るい、共通の敵も内ゲバの必要もなくなり、中華全土に空前の「ホワイト経営ブーム」が巻き起こった。


三国志の英雄たちが、それぞれの支社で切磋琢磨し、業績を競い合う平和な時代。


――そして、涼州。


「会長~、今日のお肉と冷えたお酒が入りましたわ~」


「おお、ご苦労! ガハハ!」


夕暮れ時。広大なオアシスを眺めながら、俺は定時で仕事を終え、涼州美女たちに囲まれて最高の酒池肉林セカンドライフを満喫していた。


隣には、今日も「会長! パトロール異常なしッス! 赤兎馬の洗車も終わりました!」と笑顔で報告してくるホワイト社畜・呂布。


(勝った……! 1周目の手探り状態から、KPT分析とカイゼンを重ね、俺は今度こそ完璧な『セカンドライフ(本当の酒池肉林)』を手に入れたんだ……!)


暗殺の恐怖も、泥沼の社内政治も、サービス残業もない。

涼州の心地よい風を感じながら、叩き上げサラリーマン(董卓)の周回プレイは、誰も死なない最高のハッピーエンドを迎えたのだった。


(完)

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