↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代の工場勤務だった俺、董卓に転生したので酒池肉林を楽しむつもりが、気づけば天下を統一していました  作者: 水原伊織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/27

第16話 長安への後退と、不自然すぎる美女

結局、俺たちは大混雑の中で長安へと逃げ延びてきた。


煙を上げる洛陽を背に、献帝(新社長)をはじめとする朝廷の面々を総出で護送しながらの大移動だ。

道中、路頭に迷った民たちが「董卓様の軍の後ろをついていけば飯にありつけるかも」と勝手についてきて膨大な大移動になったが、俺はシフト管理と予備の兵糧をうまく分配し、なんとか壊滅することなく長安への移動を完了させた。


長安に入り、ようやく陣営の整備と組織の建て直し(業務改善)が一段落した、その頃。


ついに「あの男」が、恭しい笑みを浮かべて俺の目の前に現れた。


司徒・王允おういんである。


(……来た……。歴史書で俺をハメて暗殺する、一番やばいキーマンだ……!)


俺の心臓は跳ね上がった。

だが、元サラリーマンとしての冷静な目が、彼の優秀さも同時に捉えていた。

王允は朝廷の文官たちの中でも抜群の実務能力を持ち、混乱する長安の行政処理をテキパキとこなしていく。会社で言えば、死ぬほど優秀だが何を考えているか分からない「敏腕常務」だ。


(ここで下手に排除して行政がパンクしても困る。有能な奴には適材適所の仕事をさせよう)


俺は王允の確かな事務手腕を高く買い、朝政の実務を彼に一任した。

そして同時に、我が軍の最高戦力である呂布を、王允の身辺警護として配置してやった。


「奉先、王允殿は朝廷の要だ。万が一のことがないよう、しっかり警護してやれよ」


「へいへい、任せてくださいよ董卓さん!」


自分の人事配置に「よし、これで行政もセキュリティも完璧だ」と満足していた俺。

王允が裏でどんな笑みを浮かべ、呂布にどんな言葉を吹き込もうとしているのか、その本当の狙い(連環の計)も知らずに……。



それから数日後。

王允が「董相国への日頃の感謝と、長安での労いに」と、一人の美女を俺の屋敷へ遣わしてきた。


広間に通されたその女を見た瞬間、俺の脳内に強烈なアラートが鳴り響いた。


(……これか……!!)


息をのむような絶世の美女。物語にいう「貂蝉ちょうせん」と思われる女性だった。


……だが。


(いやいやいや! 雰囲気があからさまに『訓練された間者』のそれなんだよ!!)


一見すると儚げで美しい少女なのだが、目線の配り方、立ち振る舞い、俺の懐に滑り込もうとする所作の端々から、工場に入り込んできた「競合他社の産業スパイ」みたいな不自然な緊張感がバシバシ漂っているのだ。


「相国様……お酒をお注ぎいたしますわ……」


しなやかに寄り添ってこようとする貂蝉。


「あ、いや! 大丈夫! 酒は自分で注ぐタイプだから! 本当にいいから!!」


俺は咄嗟に距離を取った。


歴史の知識(貂蝉が俺と呂布の間を切り裂くトラップだということ)があるのはもちろんだが、何より47歳アラフォーの勘が「この女に手を出したら社会的に死ぬ(物理的にも死ぬ)」と警鐘を鳴らしまくっていた。


「……相国様? お気に召しませんでしたでしょうか……?」


ウルウルとした瞳で上目遣いに見つめてくる貂蝉。

普通ならコロッといってしまうところだが、俺は冷や汗をダラダラ流しながら必死に平静を装った。


「いやぁ、君は素晴らしい美女だけどね! ちょっと最近、長安の寒さで胃腸の調子が悪くてさ! 女どころじゃないんだよ!」


必死の言い訳で彼女を遠ざけ、俺は絶対に近づかないように固く心に誓ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。