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第一話 放課後の影

 影見町。


 どこにでも、ある町だ。


 北側に、山。町の端を、川が、静かに、流れている。駅があって、商店街があって、学校がある。コンビニがあって、古い神社があって、バスが、一時間に、二本。春には、桜並木。夏には、うるさいくらいの、蝉の声。秋には、山が、赤く、染まる。


 あなたの、町に、似ているかもしれない。


 昼の、影見町は。


 ただ、ひとつ。


 この町には、妙な、言い伝えがある。


 「影を見る町」だ、という説。


 「影に、見られる町」だ、という説。


 どちらが、正しいのかは、誰も、知らない。


 ただ、夕方になると。


 その、意味が、少しだけ、わかる。



 その日、颯太は、掃除当番だった。


 影見町立第二中学校、二年三組。


 同じ班の、田嶋は、剣道部の、練習が、あると言って、早々に、帰った。ほかの、班員も、塾だ、部活だ、と、いなくなった。


 結局、教室には、颯太、一人が、残った。


 颯太は、それを、嫌だとは、思わなかった。


 むしろ、好きだった。


 放課後の、誰も、いない、教室。生徒の、ざわめきが、消えて。建物そのものの、静けさが、満ちる。窓の外、グラウンドから、運動部の、かけ声が、遠く、聞こえる。それくらいが、ちょうど、いい。


 静かに、していると。


 学校という、建物が。少しずつ、音を、立てるのが、わかった。


 誰も、いない、隣の、教室で。窓が、風に、かたり、と、鳴る。廊下の、どこかで、配管が、こつ、と、軋む。蛍光灯が、じ、と、低く、唸る。古い、校舎が、息を、しているような。


 昼は、生徒の声に、かき消されている、その音が。放課後には、聞こえてくる。


 颯太は、その音を、聞きながら、掃除をするのが。好きだった。


 自分が、この、大きな建物に。一人だけ、残されている。その感じが。寂しいのでは、なく。守られているような。落ち着く、感じが、した。


 颯太は、ほうきで、床を、掃いた。


 机を、寄せて、雑巾がけを、した。


 最後に、黒板を、消した。



 窓から、夕日が、差し込んでいた。


 西日だった。


 オレンジ色の、光が、教室を、斜めに、横切って。机を、床を、黒板を、染めていた。


 空気の中に、細かい、ほこりが、舞っていた。


 光の、筋の中で。きらきらと。


 颯太は、黒板消しを、二つ、手に、取って。


 窓際に、立って。


 ぱん、ぱん、と、叩き合わせた。


 白い、チョークの粉が。夕日の光の中に、舞い上がった。


 ぱん。ぱん。


 粉が、光の中で、踊った。


 颯太は、それを、見るのが、好きだった。


 粉が、落ち着くのを、待って。


 黒板消しを、トレーに、戻そうと、して。


 ふと。


 黒板を、見た。



 黒板に。


 影が、あった。


 颯太の、影だった。


 窓を、背にして、立っている、颯太の。頭があって、肩があって、腕があって。黒板の、緑の、面に、くっきりと、映っていた。


 夕日が、後ろから、差している。だから、前の、黒板に、影が、映る。当たり前のことだった。


 でも。


 颯太は。


 その、影を、見て。


 動きを、止めた。


 黒板の、影は。


 一つ、では、なかった。



 二つ、あった。


 颯太の、影が。


 黒板に、二つ、並んで、映っていた。


 一つは、今、颯太が、立っている、位置に。動くと、一緒に、動く、影。


 もう一つは。


 その、すぐ、隣に。


 動かずに、立っている、影。


 颯太は、自分の、腕を、上げてみた。


 右の、影の、腕が、上がった。


 左の、影は。


 腕を、下げたまま。


 まっすぐ、立って。


 動かなかった。



 颯太は、ためしに、一歩、横へ、ずれた。


 右の、影が、一緒に、ずれた。


 左の、影は。


 その場に、残った。


 颯太から、離れて。黒板の、同じ場所に。一人で、立っていた。


 颯太は、もう一歩、ずれた。さらに、離れた。


 それでも、左の影は。動かなかった。颯太と、何の、関係も、ない、ように。


 そして。


 颯太が、見ていると。


 左の影の、頭が。


 ゆっくりと。


 傾いた。


 颯太の方へ。


 颯太は、首を、動かして、いなかった。なのに、影の、頭だけが。こちらを、見ようと、する、ように。かしいだ。


 黒板に、貼りついた、平らな、影が。


 颯太を、見て、いた。



 颯太は、後ろを、振り返った。


 誰も、いなかった。


 西日の、差す、窓。並んだ、机。誰も、いない、教室。


 颯太の、後ろに、立っている、人間は、いなかった。


 もう一つの、影を、作る、ものは。


 どこにも、なかった。


 なのに。


 黒板には。


 二つの、影が、あった。


 颯太は、もう一度、黒板を、見た。


 動かない方の、影は。


 颯太より、ほんの少し。


 濃かった。



 颯太の、背筋が、冷たく、なった。


 でも。


 その、冷たさの、底に。


 もう一つ、嫌な、感覚が、あった。


 既視感だった。


 この、影を。


 前にも、見た。


 颯太は、思い出そうと、した。


 掃除当番。一人で、残った、放課後。夕日の、黒板。


 先週も。


 その、前の週も。


 颯太は、掃除当番のたびに、最後に、一人で、残って。黒板を、消して。夕日の中で、黒板消しを、叩いて。


 そのたびに。


 黒板に、自分の、影を。


 見ていた。



 颯太は。


 ゆっくりと。


 黒板に、近づいた。


 動かない方の、影を、よく、見るために。


 近づくと。


 わかった。


 影は、二つ、では、なかった。


 動かない方の、影の、後ろに。


 さらに、薄い、影が、重なっていた。


 その、後ろにも。もっと、薄い、影が。


 幾重にも。


 颯太の、形を、した、影が。少しずつ、ずれて、重なって。黒板に、何枚も、貼りついて、いた。


 濃い、ものから。薄い、ものへ。


 いちばん、奥の、影は。もう、輪郭が、溶けかけて、いた。


 ただ。


 幾重にも、重なった、影の、中に。


 一つだけ。


 颯太の、形では、ない、影が、混じっていた。


 颯太より、背の、高い。肩の、いかった。男子の、影。


 颯太の、知らない、誰かの、影が。颯太の、影に、紛れて。同じ黒板に、貼りついて、いた。


 この黒板に、影を、置いていったのは。


 颯太、一人では、なかった。


 ずっと、昔から。誰かが。一人で、放課後の、教室に、残って。夕日の中で。影を、置いて、いったのだ。何人も。何十人も。



 颯太は。


 自分の、重なった、影を。もう一度、よく、見た。


 気づくと。


 一枚、一枚の、影が。少しずつ、違う、かっこうを、して、いた。


 いちばん、手前の、動く影は。今の、颯太。


 その、次の、影は。黒板消しを、持った、かっこう。先週、叩いていた、ときの、姿。


 その、次は。ほうきを、持った、かっこう。


 その、次は。机に、向かって、何かを、書いている、かっこう。


 幾重にも、重なった、影は。


 颯太が、この、教室で。これまで、過ごしてきた、放課後の。一つ一つの、姿だった。


 固まって。動かずに。黒板に、貼りついて、いた。


 まるで。颯太の、過ごした、時間が。そのまま、影に、なって。ここに、残されて、いるように。


 颯太は。その、いちばん、奥の。溶けかけた、影が。


 ほんの少し。


 手を、振った、気が、した。


 こっちへ、おいで、と、いうように。


 颯太は、数えようと、して。


 やめた。


 数えては、いけない、気が、した。


 でも、思った。


 掃除当番の、回数と。


 同じ、数だけ、ある。



 そのとき。


 颯太は、自分の、足元を、見た。


 夕日が、後ろから、差している。


 本当なら、颯太の、影は。前の、黒板に、向かって、長く、伸びている、はずだった。


 でも。


 颯太の、足元から、黒板に、向かう、影は。


 ひどく、薄かった。


 いちばん、手前の、動く影でさえ。輪郭が、ぼんやりして。床の、木目が、透けて、見えた。


 颯太の、影は。


 薄く、なっていた。


 黒板に、貼りついた、影たちの方が。


 ずっと、濃かった。


 まるで。


 颯太の、影が。一回、また一回と。黒板に、置き去りに、されて。


 その分だけ。


 颯太、本体の、影が。薄く、なっていく、ように。



 颯太は。


 最近の、ことを。


 思い出した。


 朝の、ホームルームで。先生が、出席を、取る。颯太の、名前を、飛ばすことが、あった。「あれ、今、呼んだっけ」と。颯太が、「呼ばれてません」と、言うと。先生は、不思議そうな、顔を、した。


 友達の、村上に、話しかけても。最初の、一回は、気づかれない、ことが、増えた。二回、呼んで。ようやく、「あ、いたの」と、振り返る。


 写真。この前の、遠足の、集合写真。颯太は、確かに、写っていた。でも、自分でも、すぐには、見つけられなかった。薄く、なっていたから。


 颯太は。


 少しずつ。


 薄く、なっていた。


 学校の、誰の、記憶からも。少しずつ。


 その分が。


 全部。


 この、黒板に。


 影として、貼りついて、いた。



 いちばん、濃い、動かない影が。


 ふいに。


 動いた。


 まっすぐ、立っていた、その影が。


 ゆっくりと。


 黒板の、面から。


 こちらへ。


 一歩、踏み出そうと、する、ように。


 平らな、影が。


 立体に、なろうと、する、ように。


 黒板の、緑から。颯太の、形を、した、黒い、ものが。


 手前へ。にじり、出てきた。


 颯太は。


 とっさに。


 手に、持っていた、黒板消しを。


 黒板に、叩きつけた。



 ごし、と。


 颯太は、黒板を、こすった。


 影の、上から。


 黒板消しで。


 力いっぱい。


 動かない影を。重なった、薄い影を。一枚ずつ。


 ごし、ごし、と。


 最初の、一枚は。すぐに、消えた。


 でも。


 奥の、影ほど。


 頑固だった。


 こすっても、こすっても。黒板に、しがみつくように。残ろうと、した。


 黒板消しを、動かす、腕が。だんだん、重く、なった。


 まるで、影の方が。颯太の、腕を、内側から、つかんで。やめさせようと、しているように。


 消すな。


 消すな。


 そんな、声が。聞こえた、気が、した。たくさんの、声。これまで、ここに、影を、置いていった。何人もの、声が。重なって。


 でも、颯太は。


 歯を、食いしばって。腕に、力を、込めた。


 ごし。ごし。ごし。


 一枚、また一枚。


 消していった。


 白い、粉が、舞った。夕日の中で。


 影が。


 黒板から。


 拭い取られて、いった。


 濃い、ものから。薄い、ものへ。一枚、また一枚。


 颯太は、無我夢中で、黒板を、こすった。


 最後の、いちばん奥の、溶けかけた影まで。


 全部。


 消した。



 黒板は。


 元の、緑に、戻った。


 影は。


 颯太の、動く影が、一つ、だけに、なった。


 颯太は、息を、切らして。


 自分の、足元を、見た。


 影が。


 濃く、なっていた。


 さっきまで、床の木目が透けるほど、薄かった、颯太の影が。


 今は、はっきりと。


 黒い、影に、戻っていた。


 黒板から、こすり取った、影が。


 颯太に、戻ったのだ。


 颯太は、黒板消しを、トレーに、置いた。


 窓を、閉めた。鞄を、持った。


 もう一度、黒板を、振り返った。


 何も、なかった。


 ただの、消されたばかりの、黒板だった。


 颯太は、教室を、出た。


 もう、二度と、掃除当番の日に、一人で、最後まで、残るのは、やめよう、と、思いながら。



 この記録を作成したのは、柴田静流である。


 颯太から、直接、話を、聞いた。颯太とは、同じ学年で、わたしは、隣の、組だった。


 颯太は、その日から、しばらく。


 黒板を、見るのが、怖かった、と、言った。


 今でも、時々。


 放課後の、教室で。黒板を、じっと、見つめて、しまう、ことが、ある。何を、見ているのか、自分でも、わからない、と、言う。


 わたしは、一つだけ、確かめた。


 「黒板を、こすって、影を、消したら。自分の影が、濃く、戻った」


 「うん」と、颯太は、言った。「消したら、足元の影が、濃くなって。次の日、ちゃんと、出席を、取られた。村上も、すぐ、気づいてくれた」


 「黒板に、置いてきた分が。戻ってきた」


 「たぶん」


 わたしは、ノートに、書いた。


 「放課後の影。一人で残った教室で、夕日が黒板に映す影が、日ごとに重なり、置き去りにされる。その分、本人の影が薄れ、存在が薄れる。黒板から消せば、戻る」



 わたしは、この町の、名前のことを、調べた。


 影見町。


 由来を、調べた人は、何人か、いた、らしい。けれど、どれも、決定的な、答えには、たどり着けなかった。


 「影を見る町」だ、という説。


 「影に、見られる町」だ、という説。


 わたしは、どちらも、正しいのだと、思う。


 昔から、日本では。


 影は、その人の、もう一つの、姿だと、された。


 影を、踏まれると、嫌な、気がする。影が、薄い人は、長くない、と、言う。影を、取られると、魂を、取られる、と、言う。


 影踏み、という、遊びが、ある。鬼が、人の、影を、踏む。踏まれた人が、次の、鬼に、なる。


 あれは、ただの、遊びでは、なかった、と、わたしは、思う。


 昔の人は、知っていた。影は、踏める。影は、つかめる。影は、その人から、引き剥がせる。だから、遊びの、形にして。子供に、教えた。自分の、影を、踏ませるな、と。夕暮れに、影が、長く、伸びたら。早く、家に、帰れ、と。


 影が、いちばん、長く、伸びるのは。夕方。


 影が、本体から、いちばん、遠くまで、届くのは。夕方。


 そして。その影が。何かに、貼りつきやすいのも。夕方。


 逢魔が時。


 影見町では、特に。


 影は。ただの、光の、欠けた場所、では、ない。


 その人の、存在の、一部だ。


 影見町では。


 その、影が。


 夕方になると。


 ほんの少し。


 本体から、離れたがる。



 わたしは、影見神社の、縁起を、調べた。


 北の端にある、古い、神社。


 その、縁起に、こんな、一節が、あった。


 「此の地には古より影宿り、夕べになれば世の境ゆらぐ」


 この土地には、昔から、影が、宿っている。夕方になると、この世と、あの世の、境目が、ゆらぐ。


 夕べ。


 逢魔が時。


 昼でも、夜でも、ない、その、わずかな、時間。


 影が、いちばん、長く、伸びる、時間。


 その時間に。


 一人で。動かずに。光を、背にして、立っていると。


 影が。本体から、離れて。どこかに、貼りついて、しまう。


 壁に。床に。


 黒板に。


 昔の、子供は。


 夕方、一人で、外に、いては、いけない、と、言われた。


 影が、伸びて。誰かに、踏まれる、から。取られる、から。


 颯太は、放課後、一人で、夕日の、教室に、いた。


 毎週。


 影が、伸びて。黒板に、貼りつくのに。


 ちょうど、いい、時間に。



 追記。


 わたしは、颯太の、ほかにも。


 放課後の、教室で、おかしなものを、見た、という、生徒が、いないか、調べた。


 一人、いた。


 数年前に、卒業した、先輩。


 その人も、よく、掃除当番のあと、一人で、教室に、残っていた、らしい。


 その人は。


 卒業の、少し前から。


 誰の、記憶にも、残らなく、なった、という。


 卒業アルバムに、写真は、ある。名前も、ある。


 でも。


 同級生に、聞いても。「そんな人、いたかな」と、言う。


 はっきりと、覚えている人が、誰も、いない。


 その先輩は。


 黒板を、こすって、影を、戻すことを。


 知らなかったのだ、と、思う。


 毎日、毎日、影を、黒板に、置いて。


 最後には。


 全部、置いて、しまった。


 わたしは、その先輩が、使っていた、教室を、調べた。


 今は、別の、クラスが、使っている。


 放課後、誰も、いない、その教室に、入って。黒板を、見た。


 夕日が、差していた。


 黒板の、緑の、面に。目を、凝らすと。


 うっすらと。


 人の、形をした、染みのような、ものが。幾重にも、重なって、残っている、気が、した。


 布で、こすっても、消えない。黒板の、奥に、染み込んだ、何か。


 わたしは、それ以上、こすらなかった。


 こすって、戻せる、影なら、いい。


 でも、もし、こすって、はがれた、影が。わたしの、ものでは、なく。先輩の、ものだったら。


 それは、わたしに、戻ってきて、しまう。


 わたしは、教室を、出た。


 今、その先輩の、影が。


 どこかの、黒板に。何十枚も、重なって、貼りついて、いるのかも、しれない。


 本体が、いなくなっても。


 影だけ。



 この第一話を書き終えた夜、わたしは、自分の、部屋の、壁を、見た。


 電気スタンドの、明かりが。


 壁に、わたしの、影を、映していた。


 一つ、だけ。


 わたしは、少し、安心して。


 でも、ふと、思った。


 昼間、学校で。わたしは、何度、夕日の、教室に、一人で、いただろう。


 黒板を、こすって、消す。


 わたしの、影も。


 知らないうちに。どこかの、黒板に。


 一枚くらい。


 置いて、きて、いるかも、しれない。


 わたしは、立ち上がって。


 壁の、自分の影が。


 ちゃんと、自分と、一緒に、動くのを。


 確かめた。


 影は。


 一緒に、動いた。


 今夜は。


 それで、よかった。



 この記録を読んでいる、あなたへ。


 もし、あなたが。


 誰も、いない、部屋に。一人で、いるとき。


 夕方の、光が。あなたの、影を。壁に、映していたら。


 その、影を。


 じっと、見つめないで、ほしい。


 長く、見ていると。


 影が、二つに、見えてくる、ことが、ある。


 一つは、あなたと、一緒に、動く、影。


 もう一つは。


 動かずに、立っている、影。


 それは、あなたが。前にも、その場所に、一人で、いた、ときの。


 置いて、いった、影だ。


 そして、もし。


 壁の、影が。あなたより、濃く、見えたら。


 あなたの、足元の、影が。床が透けるほど、薄く、なっていたら。


 その、影を。


 拭い取って、ほしい。手で。布で。何かで。


 壁から。床から。


 あなたの、影を、こすり取って。


 あなたに、戻して、ほしい。


 そして。


 夕方の、誰もいない部屋に。


 一人で、長く、いるのは。


 やめて、ほしい。


 逢魔が時に。


 影は、伸びて。


 あなたから、離れたがる。


 そして。もし、あなたが。最近、誰かに、名前を、呼び飛ばされたり。集合写真の中で、自分を、すぐに、見つけられなかったり、することが、増えたら。


 気を、つけて、ほしい。


 それは。あなたの、影が、もう。どこかに、何枚か、置き去りに、されている、しるしかも、しれない。


 夕方の、窓ガラスに、映る、自分の、影が。いつもより、薄く、見えたら。


 その日は、早く、家に、帰って。


 明るい、部屋で。自分の、影が、ちゃんと、濃いことを。確かめて、ほしい。


 ここは、影見町。


 影を、見る町。


 影に、見られる町。


──第一話 放課後の影 了──

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