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箱庭の進化 〜世界にダンジョンが現れた日〜  作者: 観測者
4章

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79/80

帰宅、チンピラ

三人は静かに階段を上がっていく。

途中で何度か戦闘を行いながら、上を目指す。

八層より下でも、他のパーティとすれ違うことが増えた。


他のパーティの気配を感じる度にグレアは気配遮断を使う。

特に問題も起こらず、一層のゲートまで来れた。


清算のカウンターではいつも通り二分割で精算を行う。


問題が起きたのは、探索者協会を出てしばらく歩いてからだった。


三人はいつもと違う、人通りの少ない道を歩く。


後ろをついてくる不快な気配。


<やっぱり、ついてきてるよね>

<ああ>

透の言葉に慧は短く同意する。


<協会を出たところから、だよね>

<多分な>


グレアは静かに考え込んでいる。


人けのない路地に入った時、奴らは距離を詰めてきた。


「おいおい、六層ではなめた真似してくれたよな」

「あの女、どこやったんだぁ?ダンジョンの中にでも置いてきたか?」


グレアは透と慧に隠れるように後ろにいる。

男たちは気配遮断を使うグレアを認識できないようだ。


「あの女、出せよ。痛い思い、したくないだろ?」

男はそう言いながらポケットからナイフを取り出した。


ダンジョン用の武器を外で使わない、という分別はあるらしい。


「そっちは二人、こっちは五人、わかるだろ?」


透は慧に判断を仰ぐ。

<どうする?>

<ここで逃げても、絡まれ続けたら厄介だ。こういう輩は何をするかわからない>


<私が出れば早い>

<駄目だ>

<グレアのことは隠しておきたいよね>

グレアは申し訳なさそうな顔をする。


<警察もダメだよね。相手に先に手を出させる、で良いかな?>

<ああ>


念話を終え、透は男たちに話しかける。

「やめときなよ、君たちも怪我したくないでしょ?」


「あぁん?」

男のうちの一人が怒って透に殴りかかった。


男の突き出された拳に合わせて、右手を出して受け流す。

相手も七層を突破している探索者。

透は少し手加減をして腹部を殴った。


一瞬の出来事だった。

男は膝から崩れ落ちる。

男のパーティメンバーは反応することもできない。


「だから言ったのに、もうやめない?」


男達の空気が変わる。

さっきまでの軽さが消えた。


透の言葉に男たちは逆上する。


「お前達、後悔させてやるからな」

ナイフを持った男がそういうと、男達は透と慧を囲むように位置取る。


二人に向かって一斉に飛びかかってくる。


透と慧は男たちの攻撃を捌いていく。


これまでの人生、人を相手に殴り合うことなんて、ほとんどなかった。

それでも、今の二人にとって、男たちは脅威になり得ない。


ナイフを持った男が透に小さく斬りかかる。

透は半歩ずれて手首を打った。

刃が落ちた音が路地に小さく響く。


横から来た男は慧が足元を払って転ばせる。


「加減が難しいね」


「ああ」

透の言葉に慧は同意する。


数秒後、路地に立ってるのは透と慧だけだった。


「これに懲りたら、こんなこと、やめましょうよ」

そう言った透は路地を出て行く。

当然横には慧が歩いている。


路地には倒れ伏す五人の男たち。

ナイフを持っていた男がくぐもった声で言う。

「…お前らなんか、梶さんの手にかかれば…」


静かに後ろに付いていたグレアが言った。

<奴らの目的は私なんじゃないのか?私が戦えば良かったのではないか?>


その言葉に慧が答える。

<今後もこういうことがあるかもしれない。人間と戦う経験は必要だ。>

<僕たちには経験が足りてないからね>


<…そうか>


三人はいつもの道に戻る。

もう後ろをついてくるものはいない。


道中で慧と別れた。

透とグレア、二人だけの帰り道。


<私は、迷惑ではないか?>

夕暮れの道を歩きながら、グレアは前を向いたまま言った。


<大事なパーティメンバーだよ。迷惑なわけないでしょ>


今日のことだけじゃない。

家にきた時から、グレアはずっと同じことを気にしている。

自分の存在が重荷になっているんじゃないか、と。


<私が邪魔になったら言ってくれ。きっと、私は大丈夫だ>

<一緒に潜るって決めたろ、そんなこと言うなよ>


グレアの言葉に透の語気は少し強くなる。


グレアはしばらく何も言わなかった。


男が最後に発した、言葉が頭に残っている。

男達は一見ただのチンピラの集団にしか見えなかった。


奴らが執拗にグレアを狙う理由。

ダンジョンの出現の影で、何かが動いている予感がした。


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