第二形態
三人の目の前には内側から青い光を漏らした鎧。
胸の辺りは脆く崩れ落ち、青い石が光り輝いている。
透は鎧に盾を向けながら話す。
<どうする?逃げる?>
慧は少し悩んだ後に言う。
<いや、変化だけでも確認したい>
<じゃあ、私が前に出ても良いか?>
慧は前に出たがるグレアに短く言う。
<任せる>
慧の返答を聞いてすぐ、グレアは鎧に飛び掛かる。
一太刀目は純粋な縦の一振り。
速い。
先ほどまでとは段違いだ。
グレアは必死に半歩左に避けた。
刃は空を切る。
避けた。
そう見えた瞬間、グレアの体は右に弾き飛ばされた。
鎧が、剣を振り下ろした勢いのまま右足を横へ払っていた。
蹴りだ。
透は二人に念話を飛ばす。
<撤退!俺が気を引く!慧はグレアを回収して階段まで走って!>
<わかった。援護する>
そう言うと慧はグレアに向かって走りだす。
透は自分が出来る最大の身体強化でメイスを鎧に叩きつけた。
ダメージが通っているかはわからない。
それでも鎧は透の方を向いた。
鎧と透が向き合った一瞬の後、鎧の剣先がブレた。
速い。
後ろから見ていた時よりも圧倒的に。
透は後ろに飛んでなんとか直撃を避けた。
それでも足に薄く血が滲んでいる。
透は目の前の圧倒的な力に、強く、死を意識する。
余計なことを考える余裕はない。
生き残ることだけで、頭がいっぱいだった。
視線を鎧に向ける。
鎧の奥で階段のほど近いところに慧とグレアが見える。
鎧の剣先が見えた瞬間、透は、どう動けば良いか、妙にはっきりした。
予測とはちょっと違う。
ただ、そこに体を動かせば良い、ということだけ。
透は考える前に、体を動かす。
右に逃れた瞬間、さっきまでいた位置を剣が通る。
透はそのまま、鎧の左脇へ回り込むように動いた。
鎧は透の左側から横薙ぎに剣を振るう。
鎧が踏み込んだ足元には慧の生み出した水溜りがある。
遠くからの正確な援護。
透は見えた通りに、自分の左側に盾を構えて横に跳んだ。
透は階段の方向に飛ばされていく。
踏み込んだ足を滑らせた鎧は即座に追いかけることができない。
そのまま、透は命からがら階段までたどり着いた。
階段を少し上がったところで三人は足を止めた。
透が回復を自分にかけたあと、グレアを回復させていく。
グレアは回復を受けながら、不服そうな顔をした。
<…蹴りは、想定外だった。>
その言葉に慧が返す。
<単純な強化だけじゃなかった。撤退は正解だ>
<第一形態は剣だけ、第二形態は速度が上がって体術も混ざる。って感じだね。まだ遠い…けどなんかわかった気がするよ>
<そうだな>
慧は少し考え込んだ様子でそう返した。




