閑話、報告
六層で奴らを見つけた時、自分たちの運の良さに歓喜した。
高校生らしきガキが二人に端正な顔立ちの女。
ガキ二人は、ただのガキにしてはまともそうな装備をしている。
それに比べて女の方はフードがついたパーカーだ。
妙な異質さがあった。
女はフードをかぶっていてよく見えなかったが、売り飛ばせば良い金になるのは明らかだった。
売り飛ばす前に、自分たちも楽しめるかもしれない。
そんな邪心もあった。
七層行きの階段の前では問題を起こせない。
他の探索者の目もある。
パーティの一人が抑えきれずに声をかけた。
女は少しだけ反応してこっちを向いたが、男二人は完全に無視。
舐められていることに腹が立つ。
奴らはすぐに七層に降りて行った。
ダンジョンでバレないように殺してしまうのは簡単だ。
ダンジョンは広い。
その上、潜って帰って来ないものも少なくない。
しかし、誘拐は難しい。
ダンジョンから出るためには必ずゲートを通る。
ゲートの前には協会の人間がいる。
俺たちは、今日は早めに探索を中止し、協会で奴らが出てくるのを張っておくことにした。
今日の成果はポーション2本。
協会の買取には出さない。
今月のノルマにはまだ足りていない。
街中で幅を効かせるためには後ろ盾がいる。
大人は面倒臭い。
しばらく経った頃、ゲートから出てきたのは高校生の二人組だった。
女はどこに行った?ダンジョンに置いてきたのか?
どれもこれも、あいつらに口を開かせれば良いだけのこと。
協会から出た二人組の後ろを、距離を保ってついていく。
都合のいいことに、人通りの少ない道を通るようだ。
路地に入り、完全に人けが消えたところで、俺は奴らに声をかける。
これまでもこう言うことはあった。
探索者相手の人攫い。
ただ、今回は少し違った。
ただのガキじゃない。
俺たちの中で一番のアホが瞬殺された。
あいつはアホだが、それでも七層は超えている。
それでもこっちには後四人いる。
俺たちは気を引き締め、高校生二人を囲うように陣取った。
一斉に飛びかかった次の瞬間。
俺は持っていたナイフを落とされ、次の瞬間には地面に伏していた。
奴らは強かった。
もしかしたら梶さんと張り合うかもしれない。
ビルの一室。
「おい、お前ら!何があった」
ボロボロの服を着た俺たちのことを梶さんが見る。
「い、いえ、高く売れそうな女が居たんですが…」
俺たちは今日あったことを全て話す。
「そいつらがダンジョンから出てきた時、女はいなかったんだな?」
「は、はい」
梶さんの威圧感に他の四人は声が出なくなる。
梶さんは俺たちの高校の先輩。
高一の頃には高三を締めて、頭を張っていたらしい。
卒業後、この辺で急に幅を利かせ始めた新しい組、黒蛇會に入った。
組自体は薬、人身売買など、手広く行っている。
ダンジョン災害が起きた時は稼ぎ時だった。
店員のいない銀行を襲い、人を攫う。
災害の被害自体が多く、大きな問題になることもなかった。
この組にも後ろ盾として大きな組織があるらしいが、下っ端の俺たちが知ってることはない。
ダンジョンができてから、梶さんは一人で、組の誰よりも早く七層を攻略した。
以降、梶さんは探索に回る連中を束ねている。
俺たちは後輩として可愛がられ、おかげで七層を周れるぐらい強くしてもらった。
「七層周れるガキが三人。連れの女はダンジョンの中で消える。思ってる以上にでかい山になるかもしれねぇぞ」
そう言った梶さんは、少し考えてからスマホを取り出す。
俺たちに向ける顔とは違う。
真剣で少し緊張している顔。
「まだ上にあげるノルマが終わってねぇ、お前らはそれに集中しろ。その三人の見張りには、別のやつを動かす」
「で、でも、俺たちにもおこぼれ、ありますよね」
パーティでも頭が足りてないやつが梶さんに意見する。
「見つけたのはお前らだ、少しはやる」
梶さんはこういった機微をわかってくれる。
俺たちが梶さんの下につけたのは運が良かった。
これで、あのガキどもも終わりだ。




