成長、ゴブリンキング
一回目の七層、透と慧は転移罠を踏んだ日、ギリギリで勝利した。
二回目の七層、二人でも余裕を持って倒すことができた。
双方向転移陣を発見して以降、ゴブリンキングと戦うことは無くなった。
今日はいつもとは違う、グレアという新しい仲間に、身体強化という新しい力。
それと、階段前で絡まれたことに対する苛立ち。
透は全部を目の前のボスにぶつけるつもりだった。
グレアが言う。
<あの椅子に座ってる偉そうなの、私がもらってもいいか?>
透がすぐに返す。
<いいよ。俺大剣持ちもらっていい?>
慧は小さく息を吐く。
<仕方ない、俺が雑魚とメイジか>
三人は各々、自分の担当に向かって走り出す。
このレベルの敵にはもう、連携はいらない。
グレアは雑魚ゴブリンたちの隙間を縫って、ゴブリンキングの元に辿り着く。
細かく振られるカトラスを器用に避けたり弾いたりしながら、細かくダメージを与えている。
透はグレアから目を離せない。
身体強化の入口に立った今だから分かる。
グレアの身体強化は自分たちとはレベルが違う。
追いつくのにどれだけの時間がかかるのだろうか。
身体強化だけじゃない。
戦い方もだ。
透はダンジョンができるまで、武術なんかには全く興味がなかった。
初めて優れた武術、という物を目にした事による危機感。
透も大剣持ちゴブリンの攻撃を余裕を持って捌いている。
それでもグレアのような美しさはない。
戦いは数分で終わった。
最後のゴブリンを霧にした慧が言う。
<流石に余裕だな>
<うん、それにしても、グレアは強いね>
そんな透の言葉にグレアが反応する。
<二人も筋はいいぞ。ただ、基礎を学んだことがないのがよく分かる>
<そうだね、格闘技とか興味なかったからね>
<俺もだ。とりあえずドロップ拾って八層、行くぞ>
慧の言葉を皮切りに、部屋に散らばったドロップを三人で拾う。
全て拾い終わって八層への階段を降りながら、グレアが発する。
<それにしても不思議だ。倒した敵が煙になって消えてアイテムだけ残る、か>
<本当にね、最近は慣れすぎて当然みたいに思ってたけど…>
グレアは言葉を続けた。
<それだけじゃない、深く潜るほど敵が強くなり、アイテムも良いものになる>
慧が仮説を話す。
<人間を強くしたい何者かの意志を感じる。だろ>
<そうだ>
三人は話しながら下へ進んでいく。まだまだ時間はある。
今日の目的は十三層で連携の確認をすること。
可能そうであれば、明日は十四層に挑みたい。
道中、透はグレアに気になっていたことを聞く。
<そういえばグレア、レベルはいくつなの?>
一般的にレベルやスキルの情報を相手に聞くべきではない。
ステータスもスキルも個人情報であり、飯の種だ。
相手のステータスを盗み見るというスキルもあるらしいが、そういう人間は国に保護されるはずだ。
透と慧はたまにお互いのステータスを共有している。
二人とも魔法を覚えてからMPと魔力の増え幅が増えていた。
こういった法則性を探すのに、一人より二人の方が便利だった。
グレアの返答は透が予想していたものではなかった。
<レベル、とは、なんだ?>
<え?レベル、ないの?>
ダンジョンができて半年程、魔物を倒すとレベルが上がる、と言うのはこの世界では常識になっていた。
慧がグレアにステータスの説明をする。
<俺たちは魔物を倒すと強くなる。レベルが上がると力が強くなり、早く動けるようになる。俺たちのレベルは意識すると視界の端に浮いて、数字として出てくるんだ>
<ああ、それなら私たちの世界にもあるぞ。レベルや数字といった指標はないが、魔物をたおすと強くなるという点では同じだな>
慧は考えながら呟く。
<レベルはこの世界の人間特有の現象、か>
会話をしながら、透たちは十三層の階段を降りていく。
この世界は、ダンジョンとはなんなのか。
グレアの存在は、大きな問いに対する鍵になる。
そんな予感がする。




