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箱庭の進化 〜世界にダンジョンが現れた日〜  作者: 観測者
4章

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十四層、謎の少女

二人は慎重に階段を下っていく。

階層をまたぐ階段は大した長さではない。

その段が今は異様に長く感じる。


十四層の入り口が見えてきたころ。

音が聞こえた。

小さな金属音。

硬いもの同士がぶつかったような、鈍い音。


透は足を止めて振り返る。


「誰かが戦ってる。ここまで来てるパーティ、あったっけ」


「自衛隊か、民間の企業探索者か」

慧が答える。

「先を進んでいても、おかしくない」


学生の二人は週末にしか探索ができない。

その点では、自衛隊や本職で潜っている探索者には適わない。


「そっか、ちょっとだけ覗かせてもらおう」


運がよかった。

鎧が動いて戦っているところが見れる。

少しでも分かれば、対策が立てやすくなる。


二人は先ほどよりも慎重に、音を殺して階段を下りる。


十四層の広間が見える。

前に見たときと同じ。だだっ広い石造りの部屋。

壁際には倒れた柱があり、遮蔽はほとんどない。

いかにも、ボスと戦うためだけに作られた部屋。


その中央寄り。


いた。


見とれてしまうほどきれいな動きで剣を振る細身の鎧。

前に見たときと見た目は変わっていない。


そこまでは良かった。


問題は対峙している相手だった。


ダンジョンだというのに武器を持っていない。


燃えるように真っ赤な髪の少女。


動くたびに遅れて揺れる長い髪。

背丈は澪と変わらないだろう。


少女が一歩踏み込むと、鎧は剣を縦に下ろす。


少女は半身だけひねって剣を躱し、鎧の懐に潜り込む。


殴った。


鈍い音。金属同士がぶつかるような音が響く。


慧が驚いて話しかける。


「拳、だよな」


透は言葉が出なかった。


一撃を入れた後、少女は後ろに飛びのく。

強い。

たしかに強い。

それでも押されている。


鎧にはダメージが入ってるようには見えない。


数回の攻撃の応酬の後、息を切らした少女に鎧の横薙ぎが迫る。


「まずい」


少女は避けきれず、腕を盾にして吹き飛ばされた。

飛ばされた少女は動けないようだった。


「助けなきゃ、俺がひきつける、慧があの子を担いで階段まで下がって」


透はそういって駆け出した。


「待て、まだ―――」


後ろから聞こえる声。

どうしてもここであの子を助けなきゃいけない気がする。

透は止まらずに走って鎧の前に立つ。


鎧から溢れる威圧感に足が震える。

今日はちょっと引き付けて逃げるだけだ。

そう思うだけで少し心が軽くなる。


左上から剣が迫る。

透は思いっきり後ろにとんだ。

体力の消耗を考える必要はない。

反撃よりも、食らわないことの方が、今は大事。


鎧は追いかけるように大きく足を踏み込んで剣を横に薙ぐ。

避けきれない。

姿勢を低くして頭の上で盾を斜めに構える。


透の腕に強い衝撃が走って、息が漏れる。


「ぐっ」


透は左腕に違和感を抱えながら、何とか鎧の間合いから出る。

透は階段の方に目をやった。

慧は少女を担いだまま、階段にほど近い場所まで来ている。


これ以上引き付ける必要はない。

透は階段に向かって走り出す。

鎧はそのまま逃がしてくれない。


鎧の重さを感じさせない速度で後ろをついてくる。


透は何とか階段にたどり着いた。

透が階段に足を踏み入れると、鎧はそれより先には追ってこなかった。


少し上に慧と少女が見える。

透は自分の腕に回復をかけながら、二人に近づく。

少女の額のあたりから短くねじれた角が二本生えているのが見える。


「人間、じゃない?」


慧は答える。


「分からん。とりあえず助けたんだ。回復、かけてやれ」


透は慧に言われるがまま、少女に回復をかけた。

はじめは少し拒まれた感覚があったが、魔力が少女に溶けていくのがわかる。


透は困惑した顔で慧に言った。


「あれ?思ったほど怪我してないよ」


すべてが不思議だ。

真っ赤な髪。額から生えた角。鉄のように固い拳。

あの時、鎧の薙いだ剣は確実に少女の腕に当たっていた。


普通なら切り落とされていてもおかしくない。

それなのに、少女の腕には痣とちょっとした切り傷だけ。


「あの時、確実に切られてた、よね」


慧も答える。


「俺にもそう見えた。この少女が人間じゃないからなのか、そういうスキルがあるのか」


そんな会話をしながら回復をかけていると、少女の目が開く。


「〇▽◇×※」


聞いたことのない言語。少なくとも日本語や英語ではない。


「なんて言ってるかわかる?」


「わからん」


「◇〇※#」


透は頭に電流が走ったかのような違和感に襲われる。

三回、頭に何かが走った時。頭の中に声が響いた。


<聞こえてるか?>


「頭に声が響いてる。これ、この子が?」


「俺もだ、分からん。おい、俺たちの言ってることは理解できてるのか?」


<すまない、何を言ってるのかわからない、もしかして念話のやり方を知らないのか?>

<相手の頭の中に、魔力で線をつなげて、イメージを送る。簡単だろう?>


「簡単って、魔力で線…こう、かな?」


透は人に回復魔法をかけるときの容量で、細く、線を作る。

隣で慧も試行錯誤しているのがわかる。


<二人とも、筋はいい。ただ、なんで念話を知らないのか、念話をつないだ時、魔力での抵抗も感じなかった。魔力での体内の防御という基礎はできないのに、回復魔法は使えてた。二人はどうしてそんなにちぐはぐなんだ?>


頭の中に少女の声がうるさく響く。

自分たちはちぐはぐらしい。基礎がないのに魔法が使える。

考えてると全然集中ができない。頭を振って、魔力の操作に集中する。


十分ほど経った頃。

頭の中に声が響くと同時に、魔力がつながった感覚があった。


<どうだ?これで聞こえているか?>

<二人とも、どう?これで聞こえる?>


慧も同時に何かをつかんだようだ。


少女の声が響く。

<やっと会話ができるな。私の名前はグレア・ルーヴェン・アルディア、グレアと呼んでくれ。助けていただいたこと、感謝する>


<俺は黒瀬慧>


<俺の名前は観月透。グレア、君は、何者なんだ?なんで十四層に?>


<何者、といわれても、私はグラウディ帝国の騎士爵、ルーヴェン家のグレアでしかない。十四層、というのが何かわからないが、気が付いたらあの部屋にいた、としか言えないな>


念話、グラウディ帝国、額の角。

分からないことばかりだった。


この少女が何者で、どこから来たのか。


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