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箱庭の進化 〜世界にダンジョンが現れた日〜  作者: 観測者
3章

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武器屋、魔法

ダンジョンにもぐる前、盾を買いに武器屋に来た。


金属。油。革。

棚の間隔が広く、まっすぐな通路。

客の話す声が聞こえる。

透は盾の棚の前で足を止めた。


小さいものが多い。

丸いもの。四角いもの。

腕に通すタイプ。握るタイプ。


慧が言う。


「小さいのでいいよな、大きくても動きに支障が出る」


透が頷く。


「ある程度小さくて頑丈なやつがいいね、受け流せればいいかな」


店員が近づいてきた。

三十代ぐらいの落ち着いた声の男性。


「盾、お探しですか」


透が言う。


「片手で持てる小盾を、出来るだけ頑丈なやつで」


店員が棚から一つ外した。

丸く厚みがある。

表面が黒っぽく皮が貼られている。鈍く光を反射する。


「バックラー寄りの盾で、ここが持ち手です」

「受けず、角度で逃がす前提の作りになってます」

「四層でとれるトカゲの皮を使用した最新の物です。硬く、それでいてしなやかです」


透が腕を通して握る。

重過ぎず軽過ぎない。悪くない。


慧が言う。


「良さそうだな」


透はこれに決めた。12万円。


店員が言った。


「ライセンスの提示をお願いします」


透が探索者IDを出す。

端末にかざす。短い確認音。


「……はい」

店員が言う。

「登録しました。落としたら報告してください。譲渡の際も申請をお願いします」


透が頷く。


「分かりました」


盾を受け取って、店を出る。

空気が少し軽くなる。


慧が言った。


「じゃ、行くか。十一層、慣らしからだ」


透が頷いた。


一層。

転移陣。

八層。

十層まで止まらず。

十一層。


糸はもう、怖くない。


バーナーで焼いて、道を作る。

蜘蛛が来たら、止めて潰す。

青い魔石と糸を拾う。


三体目を落としたときだった。


黒い靄と一緒に、違う光が落ちた。


魔石じゃない。

もっと淡く、透明に近い。

薄い光が、表面で揺れている。


慧が足を止めた。


「……これ」


透も止まる。


球体。

石でもガラスでもない。

握ったら割れそうなのに、割れない気もする。


慧が言う。


「オーブ、だな」


透が頷いて拾う。


『水魔法 使用する  Y/N』

「水魔法だって、慧、使って。回復魔法のオーブは、俺が使ったから」


慧が一拍だけ透を見る。


「わかった、使うぞ」


透が言う。


「うん」


慧がオーブを握った。


手の中の光が、すっと消える。

同時に、慧の肩が僅かに落ちた。

息を吸って、吐く。


慧が掌を見た。


「……冷たい」

「なるほど、魔法ってこういう感覚なのか」


慧は掌を前に向ける。

息を整える。

何かを“集める”みたいな間。


掌の上に、水が浮いた。


コップ一杯にもならない。

手のひらを濡らす程度。

でも確かに水だ。光を反射する。


慧が眉を寄せる。


「……しょぼいな」


透が言う。


「最初はそんなもんじゃない?」


慧が水を落とす。

床に落ちても消えない。普通に濡れている。

「まあ、飲み水ぐらいには出来そうだな」


慧がもう一度、掌を向ける。


今度は“球”だった。


小さい。ビー玉くらい。

それが、前に飛ぶ。


石壁に当たって、弾けた。

濡れただけだ。音も弱い。


慧が「うーん」と言う。


「衝撃もあるけど…この層だと意味ないな」


透が言う。


「蜘蛛に当てても止まらないだろうね」


慧が頷いて、もう一度構える。


球が少し大きくなる。

ゴルフボールくらい。

飛ぶ。弾けて、濡れる。


慧が言った。


「……サイズは変えられるな」


透が言う。


「形はどう?」


慧が少し考えて、掌を動かす。


球が歪む。

完全には変わらない。

でも、薄くなる。少し尖る。


慧が小さく笑った。


「……いじれる、多分、慣れたらもっといけるぞ」


透が言う。


「可能性は感じるね」


慧が頷く。


「だな、いろいろやってみないと」


慧は水を出して、また止める。

出せる量はまだ、さほど多くない。


慧が言う。


「十二層、行ってみるか、試してみよう、魔法と盾」


透は盾を見た。

新しいものを買うと、使ってみたくなる。


「もちろん」

透が言った。


十二層。


空気が乾いていて、岩の匂いと硬い音。


通路の先に、岩の塊が立っている。

人の形。少し大きい。

動かない。


慧が言う。


「……いるな」


透が盾を斜めに上げて構える


近づいた瞬間、ゴーレムが動いた。


腕が上がって、落ちてくる。


透は盾を構える。


正面からは受けない。角度をつけて、受け流す。


衝撃が滑る。

完全に逃げるわけじゃない。少し腕が痺れる。

でも、前より持っていかれる感覚が無い。


透が言う。


「……だいぶ違うね」


慧が横へ回る。鈍器を落とす。

岩粉。薄い黒い靄。

ゴーレムは、まだ止まらない。


慧が一瞬、掌を向けた。


「水、試す」


透が言う。


「いいよ」


慧の掌に水が集まる。

球。さっきより大きい。

テニスボールくらい。


飛ぶ。


ゴーレムの胸に当たって弾けた。


濡れた。濡れただけだ。


慧が顔をしかめる。


「……これじゃあ、濡らしただけだな、意味はなさそうだ」


透が言う。


「まだ、あんまりだね」


慧がもう一発。

形を少し尖らせる。

当たる。弾けて、濡れるだけ。


ゴーレムは止まらない。

振り下ろしが来る。


透は盾で流す。

少しだけ腕が痺れる。

でも立っていられる。


慧が言う。


「水、まだまだ使い物にならないな」

「まあ、当たり前か」


透が言う。


「まあ、これから、練習あるのみ」


慧が頷く。


「そうだな」


二人はもう少し十二層で戦ってみることにした。

盾は使える。

水魔法はまだ弱い。


でも、手札は着実に増えている。


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