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箱庭の進化 〜世界にダンジョンが現れた日〜  作者: 観測者
3章

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59/80

ガスバーナー、対策

一層の草の上にある、薄い輪郭、転移陣。


透の鞄の中にはいつもと違うものが入っている。

ガス缶とガスバーナーの本体。十一層の蜘蛛の糸を燃やせるか、試す。


慧がそれを見る。


「それ、マジで持ってくのかよ」


透が頷く。


「火魔法ないからね、試してみるだけだよ」


慧が笑った。


「まあ、何もないよりはいいか」


透は真剣な顔をして答える。

「これで少しでも楽になるなら、ね」


二人で円の中心に立つ。


空気が一枚めくれる。


八層の小部屋。冷たい湿り気。

壁の向こうへ出て、十層まで止まらずに進んだ。


今日は、十一層が目的だ。


十一層への階段を降りる。


空気が重い。ライトの光が届きづらい。

そして、白い線。


糸。


慧が小さく言う。


「いるな、今日も」


透がバーナーを出した。


ガス缶のキャップを外す。

カチ、と短い音。

火が出る。青い炎。


慧が言う。


「落とすなよ、爆発なんて冗談じゃないからな」


「分かってる」

透が言った。


透は糸に火を近づけた。


すぐには切れない。

糸は粘る。でも、縮んでいく。


白い線が黒くなる。

細くなって、切れる。

切れた端が、くるっと丸まって落ちた。


慧が息を吐く。


「……いける、けど時間はかかるか」


透は火を消す。

必要なときだけ使う。


糸を焼いて道を作る。

焼きすぎないように。煙を出しすぎない。燃料を無駄遣いしない。


進む。


前回落ちていた血の場所は、もう、ほとんどわからない。

乾いた跡が薄く残っているだけだ。


透が言う。


「調査、入ったかな」


慧が言う。

「分からない、けど、ここまで調査に来れないだろうな」


糸が揺れた。


天井。

脚。


来る。


透は動かない。

足を取られる前に、トーチの火をつける。


糸が飛ぶ。

透の前で線が走る。


透はそれを焼いた。

切れる。落ちる。


蜘蛛が一瞬だけ止まる。

動きが鈍る。


慧が踏み込む。


鈍器が脚に落ちる。

黒い靄がにじむ。


蜘蛛が体勢を変える。

次の糸。


透が火を当てる。

切れる。縮む。落ちる。


糸は残らない。

それだけで、戦いが別物みたいに楽になる。


慧が胴に一発。

二発。

蜘蛛が崩れる。


黒い靄がほどけて消える。


糸も、力を失って薄くなる。

前回より早い。

見慣れてきた。


ドロップが落ちる。


濃い青の魔石。

それだけ。


慧が言う。


「いい感じかもな」


透が言う。

「安定してきたな」


一体で終わらせない。


少し進むと、また糸。

また脚。

また来る。


同じ手順で処理する。


焼いて、切って、止めて、潰す。


三回目で、透は自分の息に気づいた。

余裕が出てきた


慧が言った。


「……もう、いけるな、十一層」


透が頷く。


「対策があると、全然違う」


四体目。


蜘蛛が糸を吐く前に、慧が近づいて止めた。

透は火を使わない。

もう必要ない気がした。


倒れる。消える。


拾う。鞄に入れる。


それを繰り返す。


いつの間にか、十一層の“怖さ”が薄くなっていた。

怖さが薄くなるのは、良いことじゃない。

でも、進むには必要だった。


ふと、慧が言う。


「……上がったな」


透も分かった。

身体が軽い。

視界が少しだけクリアだ。


「俺も」

透が言う。


レベルが一つ上がっていた。


【観月 透】


【Lv】15→16

【MP】175→192

【筋力】52→55

【敏捷】55→59

【魔力】45→48


慧が笑う。


「よし、だいぶ楽になるぞ」


透は青い魔石を一つ転がした。

重い。冷たい。


「十二、見に行くか?」

慧が言う。


透は首を縦に振った。


「……入口は見てみたいね」


二人は糸を焼いて、もう少しだけ奥へ進んだ。


空気が変わる。

湿り気が減る。

岩の匂いが強くなる。


階段が見えた。


十二層。


降りる前に、透は一度だけ止まった。


「今日は確認だけだ」

慧が言う。


透は頷いた。


「うん」


トーチの火を消して、ケースに戻した。

青い炎が消えると、洞窟はまた暗くなる。


でも、もう道は見えていた。


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