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箱庭の進化 〜世界にダンジョンが現れた日〜  作者: 観測者
3章

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D Netowork、稼働

校門を出たところで、二人とも同じタイミングで足を止めた。


透のスマホが震えた。

慧のスマホも、ほとんど同時に震える。


画面に出る差出人。


――探索者協会(自動配信)


透は通知を開いた。慧も開いている。

同じ件名。


「D Network 稼働開始のお知らせ」


慧が言う。


「来たな、こういうの」


透は歩道の端に寄って、メールの本文を追った。

長い。けど要点はすぐ見えた。


政府公認。探索者IDに紐づくポータル。

ブラウザ、アプリも同時に配信。

ログインは探索者ID、顔認証、ワンタイム認証。

ランクによって見られる情報が違う。

掲示板も、書き込める範囲が違う。

今後、ランク制度は改訂予定。


慧が、同じところを見ながら言う。


「割とセキュリティはしっかりしてそうだな」


透が言った。


「今までバラバラだったのが、まとめられてるのかな」

「協会の情報も、政府の情報も」


慧が画面をスクロールして、眉を上げる。


「ランクで閲覧制限」

「掲示板もランクごと、ね」


透が言う。


「まあ、変なデマが増えても困るし」

「分けないと収拾つかないんだろうね」


慧がスマホを伏せて言った。


「今、見るか?」

「帰ってからでもいいと思うけど」


透は少し考えてから言う。


「うち寄る?」

「落ち着いて見たい」


慧がすぐ頷く。


「行こう、情報整理は早い方がいい」


二人は駅の方へ歩き出した。


透の部屋。


机の上はいつも通りだ。

紙のメモ。簡単な地図。ケース。


向き合う形で床に座ってスマホを並べる。


透が言う。


「アプリ、入れようか」


慧が言う。


「ああ」


検索して、ダウンロードする。

アイコンはシンプル。文字だけ。


起動すると、最初に探索者IDの入力欄が出る。

次に顔認証。

カメラに顔を合わせる。枠が出て、勝手に位置が合う。

無骨なUI、ポップさや柔らかさは全然感じられない。


透は何も言わずに次へ進む。


ワンタイム認証。

コード入力。

最後に本人確認の画面が出る。


慧が「うわ」と言った。


「これ、本人証明要るやつじゃん」


透は財布からカードを取り出し、入力した。

マイナンバー、持っていて助かった、と思ったのはそこだけだ。


認証が通る。


画面が切り替わって、トップが表示された。


D Network。


上に小さく、自分のランクが出ている。


「F」


慧が笑う。


「そりゃな」


透も笑う。

現状はほとんど全員F。ランクのあげ方もわからない。


メニューが並ぶ。


階層ガイド。

確認済みスキル。

ステータスとは。

魔法について。

注意喚起。

掲示板。


慧が言う。


「まず、公式のやつ」

「階層」


透が頷く。


階層ガイドを開く。


一層から六層。草原。

ネズミ型、ウサギ型、犬型、トカゲ。

五層から人型、ゴブリン。

六層で弓と杖が混じったゴブリン。

文章は硬いが、公式文書程の硬さはない。一般向けにわかりやすいように努力したんだろう。


七層。


“広間状の地形が確認されている”

“指揮個体が確認されている”

“報告数が少なく、継続調査中”


八層から十層。


“洞窟環境が確認されている”

人型魔物ゴブリンと、豚型の魔物オークの混成が報告されている”

“武器の所持が確認されている”

“詳細は報告数が少なく、継続調査中”


透は画面を見たまま言った。


「……情報薄いな、知ってることしかない」


慧が言う。


「まあな、でも、公式化されたってのがデカいな、多分、俺ら以外に七層を越えた人間がいるんだろう」


透がスクロールする。


注意喚起の項目に「転移の可能性がある未確認トラップ」とある。

草原エリアで確認。印なし。発動条件不明。深い階層に飛ばされることも確認。

“追加の情報が確認され次第追記予定”


透はそこで止まった。

画面はただの文章なのに、あの場所の空気が蘇ってくる。


慧が言う。


「魔法の項目、見よう」


透が頷いた。


魔法について。


項目は短い。


“現時点で確認例は少数”

“六層、杖持ちゴブリンの飛ばす石礫は魔法と推測”

“再現性の確認中”

“属性分類は暫定”

“海外で火・土に関する報告あり、検証中”

“国内での確認例は限定的”


慧が言う。


「王道で行くと、水、雷とかが来るんだろうな」

「……回復は、載ってないな」


透が言う。


「報告してないからね、ほかに持ってる人がいない可能性もある」


慧が「スキル一覧」も開く。


剣術。体術。投擲。索敵。夜目。耐毒。

地味なものが並んでいる。

説明は短い。レベルの概念だけが付いている。


慧が息を吐いた。


「こうやって並ぶと、ほんとにゲームだな」


透は言う。


「そうだね、きっと、これから分かることが増えていくんだろうね」


慧が次のメニューを押した。


掲示板。


読み込みに少し時間がかかる。

スレッド一覧が出た。


匿名。

ただ、投稿の横にランクだけが付く。


匿名[F]

匿名[F]

匿名[F]



慧が言う。


「Eはいないか、いても自衛隊とかなのか」


透がスレを開く。


話題はすぐ分かった。


五層。


人型のゴブリン。

人型に攻撃する。殺す。

そこで手が止まる、という話が多い。


『五層が無理』

『人型は無理』

『一回殴って逃げたわ、殺すのはさすがにな…』

『夢に出てくる』


そんな文が並ぶ。


慧が小さく言う。


「そういうやつも、いるよな」

「そう考えると、災害でゴブリンと戦えたのは幸運だったのかもしれないな」


次の話題は六層だった。


弓。石つぶて。

部隊での連携。

遠距離が混ざると、途端に事故が増える。


でも、それが訓練になる、と書いているやつもいる。


『六層で慣れろ』

『六層は教習所』

『盾が必要』

『遠距離持ちから落とせ』


七層の話題もある。


『ちょっとだけ除いて逃げた、あの数は無理だ』

『数が多い』

『追ってくるのは雑魚だけ』

『王っぽいのは動かない』

『逃げられるらしい』


そして、その次に続く。


『引っ張って減らすのは無理だった』

『戻って見に行ったら増えてた』

『リポップが早い』

『無限ってこと…?』


慧が言う。


「物好きがいるんだな」

透が言う。

「だね、でも新しい情報が手に入ったのはいいことだよ。ボス戦はだめそうなら逃げれる」


スレの別の部分に、世界の話が混ざる。


『七層クリア、世界で少数だが確認されてるぞ』

『日本にもいるらしい』

『でも誰かは分からない』

『個人情報だからな』


慧がその行で指を止めた。


「……Eの条件、もしかしたら」

「七層になりそうだな」


透は返さない。

画面を見ているふりをした。


慧が続ける。


「ランクシステムの改訂があるって、メールに書いてあった」

「七層は一個の線になるな」


透が言った。


「どうなるかは分からないけどね」

「でも、これからランクをあげる意味も出てくるかも」


慧が画面を戻す。


「で」

「載ってないな」


透も分かっていた。


双方向の転移。

八層の壁の向こう。

一層へ飛ぶ円。


どこにもない。

階層ガイドにも、注意喚起にも、掲示板にも。


慧が言う。


「非公開か」

「調査中か」


透が言う。


「再現できないのかも」

「そもそも見つけられてないか」


慧は「まあな」とだけ返した。


それ以上は言わない。


透はスマホを伏せた。


情報が整った。

けど、薄いところは薄いままだ。


慧が言った。


「とりあえず」

「できるだけ覗いて、情報は手に入れる」


透が頷く。


「そうだね」


慧が立ち上がる。


「帰る」

「明日、学校でな」


透が言う。


「うん」


慧がドアの方へ向かって、振り返った。


「……次、いつ潜る」


透は少しだけ間を置いて言った。


「週末かな、たぶん」


慧が短く頷いた。


「了解」


慧が帰っていく。


透は机に残ったスマホを見た。

画面にはまだ、D Networkのトップ。


世界が、制度が動いてる。そう感じる。


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