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箱庭の進化 〜世界にダンジョンが現れた日〜  作者: 観測者
3章

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50/80

解散、現状把握

三層の草原から戻って、そのまま地上へ出た。


日差しがまぶしい。

時計を見ると、十五時を少し回っていた。


協会の臨時支部の前で、貸与されてた武器と装備の返却を済ませる。


剣。メイス。前腕と脛のプレート。ヘッドセット。

受付の机に置くと、係の人が確認して引き取った。


少し離れたところで、自衛隊の四人が装備を点検している。


二階堂が端末を閉じて、紙を二枚出した。


「これが今日の協力金です」

「一人あたり十万円。協会経由で振り込みます」

「明細はこれです」


慧が受け取り、透も受け取る。

一日の稼ぎとしては良い額だ。


一ノ瀬が言った。


「今日はありがとう」

「三層の件も含めて、記録は続ける」

「次については、また連絡が行きます」


四宮が横から言う。


「次、行けそうっすよね」

「六層、慣れたらもっと楽になると思うんすよ」


三条が笑う。


「士長、油断は禁物だぞ」


一ノ瀬は笑わない。

「気をつけて帰れ」とだけ言って、四人は協会の方へ戻った。


透と慧は、その場に残る。


慧が明細を折りながら言った。


「一人十万か」

「……結構稼いでるよな」


透が頷く。


「想像以上にね」

「今回だけが異常だった可能性はあるけど」


慧が言う。


「武器は買えそうだな」


慧が少し間を置いて言った。


「……今日、これからお前ん家寄っていいか?」

「分かってること、整理したい」


透が言う。


「もちろん」


慧は頷いた。


「じゃ、コンビニ寄ってく」


――――


透の部屋。


「まず確認」

慧が言う。


透が頷く。


慧が指で数えるみたいに言った。


「一層から六層は草原」

「一層から四層までネズミ、ウサギ、犬、トカゲ」

「五層は棍棒を持ったゴブリン、六層はゴブリンの部隊。剣、弓、杖」


透が言う。


「魔法は石つぶてだけ」

「光って、飛んでくる」


慧が頷く。


「で、七層が、ボス、ゴブリンの王」

「八層がゴブリンの部隊に素手の豚、便宜上オークって呼ぶことにする」

「九層は棍棒を持ったオーク、十層で刃物を持ったオークだな」


慧が続ける。



「今日の探索、三層の罠跡地」

「痕跡なし」

「機械も反応なし」

「——でも、お前は何か見た」


透は頷いた。

隠さない。慧は知っている。


慧が言う。


「観測で、何が見えた」


透は一拍置いてから言った。


「一瞬だけ」

「草の上に、霜みたいに浮いた」


慧に促され透は答える。


「並び、数式みたいなもの、多分」

「数字と英字が見えた」


慧が反応する。

「……どういうことだ」

「数字と英字?」


透は首を振る。


「分からない」

「そう見えるだけかもしれない」

「でも、あれは“残ってた”」


慧が言う。


「罠は消えてるのに?」

「跡だけ?」


透が頷く。


「発動はしない」

「でも、それが浮いて見えた」


慧が息を吐く。


「……ダンジョンってさ」

「人を潜らせようとしてないか」


透は答えなかった。

慧が勝手に続ける。


「ゴブリンとか、オークとか」

「階層とか、ドロップとか」

「俺らが想像する“ファンタジー”に似すぎてる」

「誰かがそれっぽく置いてる感じがする」


透は言う。


「俺らが見たのは、十層まで」

「七層は広間みたいだった」

「八から十は洞窟だった」

「……でも、今のところ、日本でそこまで行けたのは俺らだけだろ」


慧が頷く。


「だから余計に」

「用意されてる感覚」


少し黙って、慧が現実に戻る。


「で、武器、どうする」


透が机の端に置いた鉈の柄を触る。

刃はがたがたでもう使えない。


透が金属塊のケースを見る。


慧が言った。


「これ、加工できねえかな」

「大剣の側近のドロップだし」


透が言う。


「協会は不明ってだけだった」

「危険物じゃないって」


慧が少し笑う。


「危険物じゃないだけ、誰も分かってない」

「……だから面白い」


慧が言う。

「国、検査、機械……もしかして」

「回復、当ててみろ」


透は一瞬だけ迷った。

生き物にしか効かない。そう思っていた。


でも、これは“普通の物”じゃない。


透はケースを開けた。

金属塊が出る。鈍い色。重い。


掌を当てる。


息を整える。

熱を作る。

流す。


最初は何もない。


次の瞬間、金属の表面が、ほんの少しだけ揺れた。

色が、薄く明るくなっていく。

触れているところだけ、温度が一段落ちる。

透の熱が、吸われる感触がした。


慧が言った。


「……やっぱり、そうか」


透は手を離さずに言う。


「……反応、してる?」


慧の口角があがる。


「これ——魔力に反応する素材、だな」


透はもう一度だけ流してみる。

同じ反応。薄い揺れ。吸われる感じ。


慧が言う。


「だから政府の検査じゃ分かんねえんだ」

「機械は魔力持ってない」

「魔法が使える奴なんてほとんどいないはず」


透は答えない。

頭の中で線がつながっていく。


「武器屋、探そう」

「オーダーは高いだろうけど、話だけでも聞ける」

「……金、稼がないとな」


慧が言う。


「とりあえず、量産のでいい、どうせ加工はまだできないはずだ」

「ちゃんとした店で」

「ライセンス見せて買えるところ、最近できたらしいからな」


透は頷く。



武器。

金属塊。

加工。

金。

また潜る理由。


慧が言った。


透は金属塊を見たまま頷いた。


次にやることが、また増えた。


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