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箱庭の進化 〜世界にダンジョンが現れた日〜  作者: 観測者
3章

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家族、説得

透は封筒を持って、居間に入った。


母がテーブルを拭いている。

澪はソファでスマホを見ていた。

父は椅子に座って、テレビの音だけを流している。


透が封筒を机に置く。

紙が二枚。封筒が一枚。

ケースも脇に置いた。取っ手が小さく鳴る。


母が顔を上げる。


「……なに」


透は言う。


「話、あるんだけど」


澪が目だけで封筒を見る。


「これ、なに?協会?」


透は頷く。


父がテレビの音を下げた。

部屋の空気が変わる。


透が紙を広げる。


母の視線が、数字で止まる。

読んで、止まる。


澪が身を乗り出す。


「……え」

「これ、いくら?」


透が言う。


「一人、百二十万ちょい」

「前回の分」


母は息を吐いた。短く。


「……どうして」

「そんなに」


透は肩をすくめた。


「奥に入ったからだと思う」

「次も同じ額だとは思ってない」


父が紙を取って、黙って見た。

返してから、透を見る。


「鷲尾?」


透は頷く。


「政府側の担当の人」

「自衛隊が六層で止まってて、前に進めてないらしい」


母の目が少しだけ動く。


透は続けた。


「戦えって話じゃなくて」

「助言と、情報整理を手伝ってほしいって」

「……あと、卒業したらお抱えの話も出た」


澪が声を上げる。


「お抱え?」


透が言う。


「協会お抱えの探索者」

「今は断った」

「縛られるとできないことが多くなる」


父が短く言った。


「断ったのは正しいと思う」


母が透を見る。


「……また行くの」


透は少しだけ間を置いてから言う。


「行く」

「ただ、前みたいにはならない」


母が言う。


「前みたい、って」

「ぼろぼろで帰ってくるやつ?」


透は頷く。

それ以上は言わない。


澪が言った。


「浅いとこだけ行く、とか?」


透は首を振る。


「浅層だけだと意味がない」


母が眉を寄せる。


「意味って何」


透は言いかけて、止めた。

でも、母が拾う。


「……足のこと?」


透は頷いた。


「可能性がある」

「回復か、ポーションか」

「確実じゃないけど」


父は反応しない。

ただコップを持ち上げて、置く。


澪が小さく言う。


「回復、って」

「ほんとに?」


透は言う。


「……できる、はず」

「でも、まだ分かってないことが多い」

「物には効かない。生き物だけっぽい」

「俺の手を小さく切って、塞がるのは確認できた」

「仕組みは分かってない」


母が言う。


「そんなこと、してたの」


透は頷く。


「……必要だったから」


澪が、怖がるように笑う。


「魔法じゃん」


透は頷きかけて、やめた。


「そうだね、魔法だ」


父が言った。


「無茶するなよ」


透は「しない」と言わない。

代わりに言う。


「ルールを作る」

「これだけは守る」


父が視線を上げる。


「わかった」


透は順番に置いた。


「単独にならない」

「慧と潜る」

「協会の指示があればそれが優先」

「入る前と、出た後に連絡する」

「時間を決める。越えたら引く」

「撤退基準を決める。怪我が出たらじゃなくて、動きが鈍ったら引く」

「……深追いしない」


母が言う。


「深追いしないって言って、するでしょ」


透は返せない。


澪が言う。


「自衛隊と一緒なら?」

「その方が安全なんじゃない?」


母が澪を見る。

澪は目を逸らさない。


父が言う。


「自衛隊と一緒なら、迷惑はかけるなよ」

「前に出るな」

「勝手に助けに行くな」


透は頷いた。


「分かった」


母が長く息を吐く。


「……じゃあ」

「連絡、ちゃんと」

「出たらすぐ」


透は頷く。


父が言う。


「俺が時間を決めるぞ」


透は頷いた。


「守るよ」


澪が言った。


「ほんとに」


透が言う。


「うん」


その瞬間、透のスマホが震えた。


画面に出る名前。


——鷲尾 修司。


透は一度だけ息を吸って、出た。


「はい」


「観月さん。鷲尾です」


声は変わらない。


「先ほどの件、具体のお願いです」

「来週の土曜日」

「自衛隊の隊員とともに、潜っていただけませんか」


透は言葉を出さずに、家族の方を見た。


母が見ている。

澪も。

父も。


透は言った。


「……分かりました」

「確認して、折り返します」


「お願いします」


通話が切れた。


透はスマホを下ろした。

画面が暗くなる。


「来週の土曜日、行ってくるよ、慧に確認してからだけど」


母は何も言わない。

ただ、指先でテーブルの端を押さえている。


澪が小さく言う。


「……土曜か」


透は答えなかった。

答えの代わりに、封筒を指で押さえ直した。


申し訳ありません。明日から一日一話投稿になります。最近推敲の時間が明らかに減っていて話の質が落ちてきたことが原因です。何とか一日一話投稿は守るので、応援よろしくお願いいたします。



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