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箱庭の進化 〜世界にダンジョンが現れた日〜  作者: 観測者
2章

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ゴブリン軍団、側近

右へ。


透はそう決めた。

言葉にしなくても、二人の足は同じ方向を向いていた。


王は立っている。

玉座の段差の上。

目線だけで、空気を縫い付けてくる。


大剣側近は王の左。

動かない。門のまま。

ローブは王の右。杖を床につけたまま。


あいつらだけが、最初から最後まで“同じ形”を保っている。


慧が言った。


「行くぞ」


透は頷く。


「うん。今度は倒す」


慧が前に出る。

バールが鳴る。

押す。ずらす。道を作る。


透はその背中に合わせて、右へ滑った。


矢が鳴る。石礫が飛ぶ。

当たらない。けど邪魔だ。

一歩を潰される。


近接が寄ってくる。

短い刃。欠けた刃。

透の鉈が受け止めた瞬間、刃先が引っかかった。


「……くそ」


刃が欠ける。


透は受けない。

体をずらす。足を切る。浅く。

霧。ひとつ。


すぐ次が来る。

慧が押し返す。

透が抜ける。


右のローブが近い。


透が踏み込んだ、その瞬間——熱が来た。


ローブが初めて動いた。


杖が床から離れる。

両手が前に出る。


赤い光が、掌の前で丸く膨らんだ。


火の玉。


透の呼吸が止まる。


「……っ」


飛んでくる。


弓でも石でもない。

熱が先に届く。皮膚が痛い。目が乾く。


慧が叫んだ。


「透、右!」


透は反射で、右に跳んだ。


火の玉が岩に当たった。


ぼん、と低い音。

爆ぜるというより、焼き付く。

壁が黒く焦げ、熱い風が広間を撫でる。


透の袖が焦げた。

腕が熱い。火傷だ。浅い。けど痛い。


透は歯を食いしばる。


ローブの攻撃は、止まった。


「今だ、行け!」


透は踏み込んだ。


ローブはもう一度火を作ろうとする。

光が膨らむ前に——透が鉈を当てた。


杖。


木じゃないみたいに硬い。

刃が滑る。引っかかる。

でも切れる。


透は力任せに引いた。


ぎ、と嫌な音。

杖が割れる。


同時に、ローブの肩口に刃が入る。


当てて、引く。

布が裂け、硬い感触が一瞬だけ伝わる。


ローブが揺れた。


そして——。


今度は、はっきり割れた。


乾いた破砕音。

見えないガラスを叩き割ったみたいな音。


空気がひび割れて、剥がれた。


透は一瞬、目眩がした。

圧が抜ける。耳の奥が軽くなる。


次の瞬間、広間が乱れた。


揃っていた足音が、バラける。

弓のタイミングがズレる。

石礫が狙いから外れる。

近接が互いにぶつかって、よろける。


透は息を呑んだ。


「……崩れた」


慧が低く言う。


「あいつが繋いでたんだ」


ローブが霧になった。

その場に何かが落ちた気がした。

光る。転がる。

でも拾う暇なんてない。


王が鳴いた。


「ぐぎゃ……!」


怒りだ。

今までの号令と違う。喉の奥が裂ける声。


でも、部隊は揃わない。


王の左で——大剣側近が動いた。


門が外れる。


王の横を離れないまま、前に出る。

ローブが消えた場所を埋めるように。


剣が持ち上がる。


透は背中が冷たくなる。

さっきより速い。

支援がなくても、あいつは強い。


慧が言った。


「今、二対一だ。落とすぞ」


透は頷いた。


雑魚は乱れている。

弓も石もタイミングがずれている。


今は、剣だけを見る。


側近が踏み込む。

剣が横に走る。


慧がバールを当てた。


受けない。押す。

剣の軌道が僅かにずれる。


透が足へ入る。


鉈を当てて引く。

刃が引っかかる。欠けた刃が肉を噛む。

それでも切れる。


側近の踏み込みが鈍る。


剣がまた来る。


透は避ける。

避けた瞬間、慧が押す。

側近の体勢が崩れる。


「もう一回!」


透が入る。


今度は足首の近く。

浅くじゃない。確実に止める。


鉈を当てて、引き切った。


側近の膝が落ちた。


剣が床を叩く。

火花が散る。


慧がバールを振った。


殴るんじゃない。押し倒す。

重い体が横に崩れる。


透が一歩踏み込んだ。


鉈を振り下ろす。

刃はもうガタガタだ。

でも、ここで止められない。


深く入れる。


次の瞬間、側近が霧になった。


床に何かが落ちた。

光る。転がる。

金属の音。


王が、動いた。


玉座の段差から、一歩降りた。


それだけで空気が重くなる。


透の腕が痺れた。

鉈の刃がもう使い物にならないのが分かる。

握りが滑る。重い。


慧のバールも、先が歪んでいた。

それでも殴れる。まだ使える。

けど、長くは持たない。


王がこちらを見た。


目が小さい。濡れている。

でも視線が刺さる。


喉が鳴る。


慧が低く言った。


「来るぞ」


透は鉈を握り直した。

欠けた刃を、指で確かめる暇もない。


王が、低く鳴いた。


「ぐぎゃ……」


今度は、近い。


戦いは、終盤に入った。


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