第九話 クズがタコで殺ってくる
チャールズと分断させられてしまうリュースケ達。そして団長はまずリュースケに狙いを定める。
それはリュースケ達の背後から来た。
「伏せてっ!」
ラビの叫びが聞こえて慌てて伏せる三人、その瞬間だった。
王の巨大なタコ足が横払いされ、団長もろとも壁に叩き付けられた。
ゆらりとタコ足が上がってくるが団長の姿は見当たらず、近くでチャールズが倒れ伏していた。
慌てて駆け寄る三人、見回すが団長はおらず攻撃の気配もない。警戒しながら急いでチャールズの具合を見るユミルとグレイ、チャールズは辛うじて直撃を避けられていたが重傷だった。
ユミルは慣れない様子で回復魔法を掛けようとする。
「ぐっっ!」
「痛むかもだけど我慢して!」
チャールズは苦しみながら言った。
「ヤメロ……ヤツヲ……ッ……」
「……っ、分かったわ……」
ユミルは立ち上がり言った。
「グレイ、魔力は温存して魔法無しの手当を……そしたらラビ達に合流するわよ。リュースケはチャールズをお願い!」
「はい……」
「分かったよ」
一時処置をし、ラビ達の元に駆け出すユミルとグレイ。
ラビ達に二人は合流し戦闘に加わる。
しかし威力も大きさも速さもすさまじく、しかも複数あるタコ足にラビ達は苦戦していた。どうにか攻撃は当てられている時もあるがわずかな切り傷程度だった。
リュースケは歯がゆさを感じつつチャールズを守るように立つ。そしてチャールズが絞り出すように言う。
「オマエ……イケ……」
「でも!」
そう言った瞬間、王の足が横から迫ってきた。
慌てて伏せて避けるが不安定な姿勢だったからか余波で遠くに転がされてしまう。
どうにか起き上がり、慌ててチャールズの様子を見ると無事だった。
しかしチャールズの近くへ戻ろうとするがタコ足が迫り、思うように進めず回避に精一杯となるリュースケ。
今度は足が上から迫ってきた。
意を決したリュースケは恐怖で漏らしながらもその場に留まる。
そしてギリギリのタイミングで避けて直ぐさま足にしがみ付いた。
リュースケは叫ぶ。
「よし! しっかり触った! これで!」
「ギャァァァァァァァッッッッ!!」
苦しそうな声を上げる王、リュースケが触った部分とそこから先が崩れ落ちる。
「アアアアアアアアアァァァッッッッ!!!!」
しかし王は痛みで叫ぶが消滅していなかった。
「キサマァッ!」
呆然としているリュースケ目掛け足を素早く振るってくる王。ラビが駆ける。
「リュースケさんっ!」
直ぐさまリュースケを担ぎ、駆け出すラビ。いくつもの足が二人を追う。
「リョウコ、ボブ、グレイはヤツの注意を! ユミルは俺に続け!」
ライガーが指示を飛ばし、ユミルと共にラビ達を追う。
メンバー達もそれぞれに動き出す。
リョウコは魔法を放ち、王の顔を狙う。
ボブはリョウコを狙う足にハンマーを叩き付けて守る。
グレイは誰よりも早く駆けながら迫るいくつもの足を切りつけ注意を引く。
チクチクする攻撃にイライラが募る王、先にボブ達を潰すために全ての足を彼らに集中させる。
担がれたままのリュースケは言った。
「どうして?! しっかり触ったのに?!」
ラビが走りながら答える。
「たくさんの命と恐怖、仲間の霊達を喰らったからでしょうね! 普通の霊を超えた存在ですわ! 体の末端程度ではだめなのでしょう! ですが貴方が触った所が崩れ落ちて回復していませんわ! ワタクシ達でさえ切り傷位がやっとでしたのよ?! きっと貴方の力があれば手はあるはずですわ!」
「ラビ様!」
ライガー達が追いつく。
息を整えつつリュースケを下ろし、何か策はないかと考え続けるラビ。
「ラビ様! ボブ達と合流を!」
「分かりましたわ! リュ-スケさん! 走りますわよ!」
駆け出す三人、慌てて追いかけるリュースケ。その間もボブ達は牽制し続ける。
「どわっ!」
「ぐっ!」
ボブの守りを強引に崩し、リョウコを足で掴む王。ギリギリと握り閉めながら苦しむ姿をニヤニヤと眺める。
「リョウコ!」
ボブとグレイが慌てて助けようとするが高く足を持ち上げていて近寄れない。
更に握る力を強めたその時、何か大きな塊が叫びながらリョウコの方に向かって発射された。
「ひいいいいぃぃぃっっっっっっ!」
それはリョウコを掴んでいる部分の根元を貫く。貫かれた部位とその先が崩れ落ち始め、思わぬ一撃に王は苦しむ。
「ボブ!」
ライガーが叫び、ボブが駆け出してリョウコを受け止める。
「ゲホッゲホッカハッ! 何が?」
咳き込みながらリョウコは尋ねる。
「ラビがリュースケボールをやったのよ」
ユミルがそう答える。そして見渡すとラビも落ちてくるリュースケを受け止めていた。
「ぬああああああああああっ!」
ラビ達を忘れ、怒りで周囲を手当たり次第に叩き付け始める王。
その隙にラビを中心に一同が集まる。
ラビが言った。
「リョウコさん! ご無事で?!」
「うん、痛いけど多分大丈夫……取り合えず回復魔法掛けといたから……」
安堵するラビ、そして言った。
「皆様、ワタクシに考えがありますの。聞いて下さる?」
先程ひらめいたというラビの策を聞く一同。
「確かにそれが一番可能性がありますな……」
とライガー。
「リュースケはいいの?」
尋ねるユミル。
「は、はい……怖いけど気合い入れます……」
体がガクブルになりつつも意気込むリュースケ。
「ごめんなさい……結局、貴方に頼ることになりましたわ……」
謝るラビ。
「いいんです、こうしなきゃ誰も生き残れませんから……」
どうにか気合いを入れようとするリュースケ。
「それでは皆様……よろしく頼みますわ!」
一同がラビの作戦のために動き出す。
グレイが素早くリュースケの胴に縄を結び付け、反対側をラビの腕に巻き付けた。
気合い十分なラビが吠える。
「リュースケェ! 縮こまれェッ!」
「はいッ!」
「よし! ”フィックス”!」
リュースケボールの中に手を突っ込みグローブのようにするラビ、そしてメンバーに言った。
「行くぞッ! てめぇら!」
ライガーとユミルを先頭に両脇にボブとグレイ、そしてその中央にリョウコとラビという配置で駆け出した。
王は闇雲に巨大な足を振るい、予測が付かない軌道を取り続ける。
早速、一本が一行に迫る。
「ぬぉおおおおおっ!」
ライガーがそれを躱しながら渾身の力で斬り付ける。そこにラビが背後から飛び出してリュースケグローブで殴り付けた。
その部位は崩れながら消え、痛みでわずかに止まった隙に顔目掛け駆け出す一行。
近づいている事に気付いた王が足を迫らせる。
各自が躱しながら渾身の力で攻撃を押さえ、ラビがその隙にリュースケグローブで殴り付けたり、モーニングスターのように振り回しながらリュースケボールを叩き付ける。殴られた部位が次々と崩れていき、焦った王は更に苛烈に足を向かわせるが一行は止まらない。
顔の真下あたりまで近付けた一行はラビとリョウコを囲むように陣形を取る。
ラビが言った。
「リョウコォ! 頼んだぞ!」
「うん」
リュースケボールを掴んだままラビは駆け出して高くジャンプした。
「”ストーム”!」
竜巻をラビの足下に発生させるリョウコ。それに乗り上に飛ぶラビ、そしてある程度進んでから彼女は動いた。
「シャアアッ!!」
リュースケから手を離し、彼を王の鼻の穴目掛け蹴り上げた。
「ぬぉぉぉぉぉっ!」
突き進むリュースケボール、見事に鼻の穴に入り込む。止まらずに進み続けてとうとう鼻の穴の奥に激突する。
「あああああああぁぁぁぁぁっっ!」
悲鳴を上げる王、崩れ始める鼻。ラビも竜巻に乗りながら鼻の中に突入する。
一方、迫る足を押さえつつラビ達を待ち続けるライガー達。
鼻にリュースケが入り込み、王が大きく口を開けた瞬間、リョウコは口周りに魔法を発動する。
「”フリーズ”!」
口周りが凍り付く王、ライガーが叫ぶ。
「突入!」
リョウコの近くに集まる一行、リョウコは大きめの竜巻を発生させて全員がそれに乗り、口の中に入り込んだ。
同じ頃、ラビとリュースケは鼻の奥で合流した。
直ぐさま”フィックス”を解除したラビは言う。
「気を付けぇ!」
「はいっ!」
気をつけの姿勢を取るリュースケ、再度”フィックス”を掛けて固定するラビ。
リュースケの足をつかみながらバットのように振り回し叫ぶ。
「舌噛むなよッ!」
そして鼻の奥をリュースケバットで目茶苦茶に叩きながら先に進み始める。同じくライガーたちも口の中で攻撃を始めた。自身の体の中で暴れ回られ痛み悶える王、足を伸ばしても口内で反撃を喰らい中々彼らを取り除けない。
穴の中を突き進むラビ達、鼻と口のつなぎ目あたりに到達したラビは下にいるリョウコに叫ぶ。
「リョウコォッ! 風ッ!」
「”ハイストーム”!!」
先程よりも強力な竜巻を発生させてラビ達に飛ばすリョウコ。
崩れ落ちていく鼻周辺、そこから竜巻に着地してリュースケを上に構えるラビ。竜巻に身を任せてドリルのように回転しながら口内の上側を突き進み始めた。
どんどん上に進むラビ達に対して王は無理矢理足を突っ込んで取り除こうとするもライガー達が押さえこむ。
勢いは止まらず更に進む。
そして脳の下側あたりまで到達した。
王は叫ぶ。
「きさまらァッ!!!」
ラビが叫ぶ。
「くたばりちらせェッ!!」
止まらないラビ達、回転と上昇は止まらずとうとう頭を突き抜けて飛び出した。
「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっ!」
悲鳴を上げながら王は崩れ始める。
ラビの読み通りだった。
末端でだめなら中心を狙うしか無いですわ、そもそもどんな生き物でも頭を殺ればイチコロですわ、とのことだったが強力な霊となった王でもひとたまりも無かったようだ。
脱力して頭の上で倒れ込むラビ、まだバット状態のリュースケが叫ぶ。
「ラビさん?! 早くしないと崩れますよ!」
「だめだぁ……力入んねぇ……」
とうとう全てが崩れ散る、地面に向かって落ち始めるラビ達。しかし……
「「「「「どっせい!!」」」」」
ライガー達が網を張り受け止めた。
「皆さん! 助かりました!」
リュースケが礼を言う。
カチカチな気をつけの姿勢という、シュールな状態で礼を言われて一同は笑い出す。
どうにか起き上がったラビが言う。
「とうとうやりましたのね……」
周囲には荒れた謁見の間の光景しかない。
一同は勝利したことを噛み締めた。
それから一同はチャールズの元に向かい彼の治療と各自の手当てを行い始めた。
チャールズは戦いの間に自分で治癒魔法を掛けていてある程度は回復させたと自己申告する。それでも顔色は悪いので無理しないように厳命して各自が手当てをしながら帰還の準備を始めた。
準備と休息が終わり立ち上がる一同、朝日を背に受けながら激しい戦いのあった謁見の間を後にした。
えい! えい! むん!
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