第八話 スゴいね幽霊♡
とうとう謁見の間の前まで到達した一行、その扉に手を掛ける。
扉に手を掛けたラビ。
赤い礼拝堂の時のように扉を引きちぎり玉座目掛けぶん投げる。すさまじい速度で進む扉、しかし玉座の前に大きな人影が立ち塞がり弾かれてしまう。不意打ちが効かなかったことに舌打ちしながらラビが中に突入、他の面々もそれに続いた。
部屋の中に入り、扉を防いだ人影の詳細が分かってきた。
丸太のように太く逞しい手足、分厚く巨大な胴体、ゴツい顔、額から伸びる大きな角、自身の体格以上に大きなメイス、全身鎧に身を包んだオーガの騎士の霊がそこにいた。
睨み合うラビとオーガの霊、その背後の玉座から声が発せられた。
「騎士団長、退け。『御意』貴様ら……よくも我が城を荒らしてくれたな……」
玉座に腰掛ける王が一行を睨みながら続けて言う。
「平民風情が我が城に土足で踏み入るだけで腹立たしいというのに……あまつさえ荒らしてくれるとはな……生まれて来た事を後悔する苦痛を与えその後に殺してやる! 全ての霊よ! 集え!」
王の号令と共に大量の霊が現れ始める。まだ城にこんなに隠れていたのかと驚愕するリュースケ、部屋を埋め尽くすほどに増え続ける。警戒を強めるラビ達はいつ襲い掛かられてもいいように身構えた。
全ての霊が集まったことを確認した王が立ち上がり叫ぶ。
「こやつらを潰す!」
王以外の霊達が全方位から一斉に飛びかかる。
それに対してラビ達も攻撃しようとした瞬間だった。
飛びかかろうとしていた霊の胸から鋭く細長い物が突き出た。貫かれた霊達は驚愕の表情を浮かべ消滅する。そしてそれは次々と他の霊達に襲い掛かり貫いていった。逃げ惑う霊達に対してそれは追い続ける。
慌ててラビ達はそれの正体を目で追うとそれは長く伸び続けている王の指だと分かった。その間にも残りの霊達は逃げ続けるが一体残らず貫かれ消滅してしまった。
同士討ちに混乱したラビが王に聞く。
「あなた……何してますの?!」
王は答える。
「貴様らも不快だが、貴様らを止められなかった部下共も不愉快だ。存在価値など連中には無い……だから奴らの存在そのものを我の糧とした……奴らも光栄に思うだろうよ……」
さも当然のように言い放つ王、続けて言う。
「貴様ら平民風情も腹立たしい! 我ら高貴な存在に仕えることが貴様らの存在理由だというのに! クーデターなんぞで我らを殺しおって! 尽くすのは当然だというのにあいつらは!」
創作物でしか見たことが無いようなクズさ度合いに感心しつつもイライラするリュースケ、もちろんライガー達も怒りの表情を浮かべていた。なおチャールズは見えないようにうなずいていたが誰にも気付かれなかった。
王の答えに対するラビの様子を恐る恐る見るリュースケ。
「…………」
ラビはうつむいて無言だった。
ラビならこんな発言をしようものなら拳か暴言が飛び出すのに静かで不気味に思う一同。
その様子に何を勘違いしたのか王は言った。
「生きておった時からそうだが大抵の平民はこれを言うと怒り、不敬にも睨んでくるからそれで処刑して楽しめたのだがな……オーガの聖女よ、お主は睨みも文句もしないとは見所があるな。貴様は最後に殺してやろうか?」
絞り出すようにラビが答える。
「なんだァ?てめェ……」
ラビ、キレた!!と一同が思った。
怒り心頭なラビに王も怒りながら言う。
「貴様から殺す! 騎士団長! 貴様は見逃してやったのだ! こやつらを殺せ!」
先程のオーガの騎士団長が現れる。
「オラァッッッ!!!!!」
すさまじい速さで騎士団長に飛び込み、先制攻撃を叩き込むラビ。
思わぬ不意打ちに騎士団長は目を見開くがメイスで受け止めていた。直ぐさま騎士団長がメイスを振るうが後ろに飛んで回避するラビ。
騎士団長が口を開く。
「貴様のようなオーガなド認めぬゾ。そんな貧相な体デよくオーガだと名乗れたものダ……オーガの恥さらしメ! 貴様モ! その仲間モ! 纏めて殺してヤル!」
ラビが言う。
「でけぇだけのオーガの時代は終わったんだよっ!」
更に事態は動く。
「グオォォォォォォッッッッ!!!!!!!」
突如として王が叫び、眩しく輝き始める。強烈な光に思わず全員が顔を反らされる。
そして光が止んであらわになった王の姿に一行は驚かされた。
シルエットだけで見れば巨大なタコではある。
しかし詳細は巨大な脂ぎった王の頭に首の下からはウネウネとタコの足だけが蠢いているおぞましい姿だった。よく見ると吸盤は先程吸収した霊達の顔で、吸盤の顔からは悲鳴や叫びが聞こえており、おぞましさが増している。
あっけにとられる一同、その隙に騎士団長は駆け出しメイスを振るう。
慌ててリョウコが氷塊を射出し牽制するがメイスを横に振るい叩き壊す騎士団長。
ライガーが指示を出す。
「ラビ様、ボブ、リョウコ、俺は王を! 残りの者は騎士団長を! 少年はユミル達といろ! とにかく自分の身を守るんだ! 行くぞ!」
ラビ、ライガー、ボブ、リョウコは王の元へ向かい出す。
ラビが振り返り叫んだ。
「皆様! ご無事で!」
そして駆け出すラビ。
騎士団長はラビを追いかけようとするが騎士団長の前に炎の壁が現れた。思わず立ち止まる団長、振り返るとチャールズが手のひらから炎を放ち操っていた。
ユミルが叫ぶ。
「チャールズはスキルで牽制! グレイはワタシの近接援護を! リュースケは後ろにいなさい!」
各自が動き出した。
ユミルの指示で後ろに逃げ込むリュースケ、そしてそれぞれで何が起こっているのか見た。
ラビ達の方では、王は此方にも届きそうな巨大なタコ足を縦横無尽に振り回し、ラビ達に叩き付けようとしていた。どうにかそれを躱して攻撃しようとしているが、絶え間なく足が迫り中々攻撃出来ていないようだった。
一方、ユミル達はというと、ユミルは得物の大剣を、グレイはダガーを手に団長へ駆け出す。チャールズは炎を操作して団長の目くらましを行い続けている。妨害に対して怒りの表情を浮かべて団長はこちらに迫ってきた。
「貴様ラぁっ!」
怒号を上げながらユミル達目掛けメイスを振り下ろす。
轟音を立てて地面に叩き付けられたメイス、ユミルとグレイは左右に別れてそれを避けていた。そして振り下ろしの隙に得物を突き出すユミル、しかし団長は直ぐに片手でメイスを振り上げて攻撃を防いだ。
その攻防の隙に死角に回ったグレイが鎧の隙間をダガーで突き刺そうする。
「ぐっ?!」
団長は動じること無く直ぐに裏拳をグレイの腹に叩き込んで後ろに飛ばす。
「エルフと獣人風情ガっ!」
裏拳をした拳をギチギチと握りしめ、ユミルに叩き込もうとする団長。
すぐにチャールズが炎の塊を顔目掛け発射する。
「効かぬワっ!」
意にも介さずユミルを狙う。
ユミルは回避行動を取ろうとするがそれより先に拳が放たれようとしていた。
「くたバレ! エルフ!」
オーガのパワーに霊としての力も上乗せされた一撃はまともに食らえばひとたまりも無い。
ユミルに迫ろうとする拳、彼女は大ダメージを覚悟する。
「クゥッ?!……んッ?!」
しかし一向に攻撃が来ない、なぜか拳がそれ以上進んでいなかった。困惑しつつすぐに離脱するユミルはチャールズと合流して何が起こったのか知る。
団長の拳には縄が結びつけられていた。
その先にはグレイが踏ん張りながら縄を引っ張っている姿があった。ユミルはグレイが裏拳を食らった時にそれを結び付けていたことを把握、更にリュースケもグレイの体を掴みながら踏ん張っており、二人がかりで団長の片手と動きを封じていることにも気が付く。
「今ァッ!!!!」
直ぐさまユミルが駆け出し、チャールズも少し遅れて続く。
団長の顔面目掛けて炎を射出し、目くらましをするチャールズ。団長は先程と同じだと放置してグレイ達に向かい出す、しかし着弾しても炎が消えず顔全体が炎の膜で覆われていた。団長は炎で何も見えず闇雲にメイスを振るい、誰も近寄らせないようにした。
大きく横払いした隙にユミルは身を低めて駆け、大剣を鎧の隙間に叩き込む。
「グアぁぁぁぁぁぁっっっ!」
痛みにもだえる団長。
すぐに離れたユミルは消滅するか様子を伺うが団長の分厚い肉体に阻まれ消滅には至らなかった。そして炎が縄に引火して脆くなり容易く引きちぎられてしまう。
メイスを両手で掴んだ団長は視界は遮られたままで目茶苦茶にメイスを振り回して暴れ始める。どうにかメイスの攻撃避けながらグレイとリュースケはユミル達の元へ向かう。リュースケは素早く走るグレイの後を必死に追い、ようやくユミル達と合流できた。
声で探知されないように小声でユミルが言った。
「グレイ! リュースケ! 大丈夫?!」
「うん……なんとかね……でも裏拳は効いたな……」
「俺も大丈夫です……ユミルさん達は?」
「ワタシたちは大丈夫、助かったわ。でもこんな無茶しないで、あんたは民間人よ?『すみません……』よろしい……さて、アイツをどう倒すか……」
団長への対処を相談し始めるユミル達だったが、焦りやストレスが重なったチャールズが吠えてしまう。
「どうしろってんだ! もうこんなとこにいられるか!」
チャールズが叫んだ瞬間だった。
「ヌォォォォッ!」
団長はチャールズ目掛けメイスを全力投擲する。更に駆け出しながらハイジャンプして一同の所に飛び降りようとする。
直ぐにその場を離れるリュースケ達、先程までいたところに団長が着地し立ち上がるがその顔にはチャールズの炎の膜が無くなっていた。
回避に気を取られたチャールズが思わずスキル解除してしまったかと苦々しい顔をするユミル。
入ってきた扉の方を背にする団長の前にはユミル、グレイ、リュースケ。そしてその背後にチャールズだけがおり分断されてしまった。チャールズを人質に出来る配置に三人は険しい表情を浮かべる。
団長はニヤニヤしながら壁に突き刺さったメイスを抜き取り、地面に叩き付ける。
「よくモやってくれタナ……まずは霊を消せル坊主から殺してヤルヨ……」
気迫と殺害予告を受けて漏らすリュースケ、彼を守ろうとユミルとグレイが身構える。
その時だった。
ちゃんと保存したのになんで執筆データが飛ぶんだァアアッッッ?!! お”ぉ”ん”?!
目茶苦茶焦りました……
最後までお読みいただきありがとうございました。
今後の執筆の励みになりますので是非とも”☆”や評価をよろしくお願いします。




