第七話 豚王妃 メイドマシマシ、ブタマシマシ、パワーマシマシ、ヤバめ
松ぼっくりの部屋を浄化した一行、次の部屋の扉をラビは普通に開けた。
普通に扉を開けて中の様子を伺うラビ。
今までは蹴飛ばしたり引きちぎったりと壊しながら進んできたので逆に新鮮な光景に思えたリュースケ。多分フェイントだろうなと思いつつラビの表情が険しくなっている事に気付く。
ラビが言った。
「総員! 戦闘用意! 部屋の中心に人影ですわ!」
ラビの発言で緊張が走る一同、警戒しながら中に進み始めるが人影は動こうとしない。
徐々に近づくことで人影の様子が見えてくる。此方に背を向けて立っている女性だった。
更に近づいて詳細が分かった。
赤いドレスを見に纏い、長くさらさらな金髪、陶器のように白く美しい肌、スラリとした手足、後ろ姿からでも分かる位に豊満な乳、今まで出会ったことの無い位の高貴さと妖艶さが醸し出されていた。
思わぬ美女の登場にボブを除く男性陣は鼻息を荒くし、生唾をゴックンしてしまう。しかも同じタイミングにである。
彼らの様子に女性陣はあきれた顔をし、ボブが言う。
「ワシのスイートハニーの方が可愛いぞい……お主ら! そいつは霊に決まっておろうに! しっかりせい!」
ボブの喝で慌てて構える男性陣、女性陣は相変わらずの冷たい視線だった。
王妃らしき霊が振り返り始め、警戒する一同。怒られた男性陣は内心、表のビジュアルにも期待してしまっていた。
いよいよ詳細が分かってきて一同は絶句する。
顔は鋭い牙むき出しの豚の化け物、豊満な乳かと思ったそれは左右に生えた豚の頭だった。此方を睨みながら爪を長く鋭く伸ばし始める。
後ろ姿とのギャップに思わず涙目になる男性陣、リョースケはまたも漏らしてしまう。リョースケの尻を蹴飛ばしながら”ドライ”と”クリーン”を掛けるラビ。
男性陣も切り替えが済んだのかすぐにでも戦えるように構える。
王妃が口を開けた。
「キシャァァァアアアアアアアアアアアアッ!」
人が出せるものとは思えない叫びをする王妃、異変が起こる。
王妃を囲むかのように大量のメイドの霊が突然現れ、メイド達はリュースケ達目掛け飛び始めた。
迎撃態勢に入る一同。
先頭に出たライガーが盾で受け止めつつカウンターを仕掛けようとする。
「なっ!」
メイドは直ぐさま離脱してしまいカウンターを外すライガー、そして更に事態は動く。
「キシャアアアアッ!」
メイドを目くらましに王妃がライガーに急接近していた。爪を振りかざし攻撃しようとする。
「ライガーさん!」
ラビが手元にあったポーションの空き瓶を王妃目掛け投擲する。
バッタのような跳躍力を見せながら回避する王妃、それに合わせてメイド達が四方八方から飛び込んできた。
戦いが始まった。
「ぐっ!」
「ぬおっ!」
「ちぃっ!」
「くっ!」
一行は防戦一方となる。
胸像の霊達以上の軌道と連携をしてくるメイド達。飛び込んできたメイドに気を取られると死角から別のメイドが飛び込んできて行動を妨害したり、わざとラビ達の攻撃に当たることで注意をそらしたり、あるいは目くらましをしたりとしている。メイド達はひたすらに妨害や牽制に徹し、攻撃は王妃に任せていた。
「キシャァァァッ!」
「ユミル! そっちにいったよ!」
「くっ!」
王妃の攻撃をかすりながらもどうにか避けたユミル、グレイに礼を言いながら戦いを続ける。
そして王妃は素早く動きつつ爪や噛みつきで攻撃を仕掛けてくる。こちらからの攻撃もメイドの妨害で中々思うように出来ず、突破してもメイドを盾にして回避していた。
徐々に傷ついていくメンバー達、霊達に攻撃をしながらラビは考えていた。
「(どうすれば良い? 何が出来る?)」
ひたすらにラビは考え続けた。
その時、ラビはある光景を目にする。
「うおあっ! 来るなぁっ!」
飛んでくるメイドから逃げるリュースケ、大号泣しながら走り回っている。一体のメイドがタックルをして思いっきり転ばされるリュースケ。直接触れると消えるからかメイド達はモップを手にリュースケをシバき始めた。
「おやめなさい!」
直ぐさま助けに入るラビ、メイド達は離脱した。
「助かりましたッ!!」
負傷は無さそうと安堵したラビは急に先程の光景を思い出してひらめいた。
そしてラビは気持ちが昂ぶりながらリュースケに言う。
「アタシにいい考えがある」
それは本当に大丈夫なのか、と心配になるリュースケ。決心したような顔をしたラビはリュースケに言う。
「リュースケェ! 縮こまるように座れぇっ!」
突然の指示に困惑するリュースケ、そして叫ぶ。
「何いきなり言ってるんですか! そんな事より皆さんに合流しないと!」
今もメイドの牽制と王妃の攻撃に苦戦しているメンバー達、そんなことしてる場合じゃないと言うリュースケ。
ラビが答える。
「うるせぇ! アタシのカンがな! こうしろって言ってんだよ!」
ラビの気迫に押され体育座りをするように縮こまるリュースケ、直ぐさまラビは荷物から兜を取り出してリュースケの頭にしっかりとかぶせる。そして唱えた。
「”フィックス”!」
訳も分からず、何をしたのか聞こうとするリュースケ。だが異変に気付く。
「なにをっ?! あれ?! 体が動かせない?! 違うッ! 服がカチカチだ?!」
リュースケの足を掴みラビは言う。
「装備品を固定する魔法だァッ! 多少の攻撃も防げるからな! ちょっとくすぐってぇぞ! シャァッ!」
そのまま駆け出すラビ、メンバー達と合流したかと思えば王妃に向かいだした。
突然のラビの行動に面食らうメンバー達。
王妃はラビの奇行をあざ笑いながら攻撃しようと駆け出し、メイド達も大挙してラビを目指し始める。メンバー達もラビを守ろうとするがメイドの妨害で中々思うように出来ない。
ラビが行動を始めた。
「シャァッッ!!!」
突如、ラビがリュースケを自分のすぐ前に放り出す。そして少し後ろに下がった。
「ウォラァッッッ!」
王妃目掛けてボールのようにリュースケをまっすぐに蹴飛ばした。
「イヤァァァァァァッッッ!」
思わぬ速さと衝撃で悲鳴を上げながら突き進むリュースケボール。
人1人分の質量にオーガパワー全開の蹴りが合わさり、幽霊で無くても喰らえばダメージを負いそうな攻撃となっていた。
突然の行動に面食らい止まってしまう王妃、それを守るようにメイド達がリュースケボールを止めようとするが、触れたメイド達は次々と消滅してしまう。タックルや肉壁をして止めようとするが、物ともせずそれらをひき殺しながら突き進む。
すぐそこまで迫るリュースケボールを慌てて回避しようとする王妃。
「ギャァァァァッッ!」
かすりながら辛うじて回避に成功する王妃。
しっかりとリュースケが触れて無かったから完全消滅はしていなかったが、かすった部分である左腕が消滅する。
直ぐにラビを探す王妃。
しかしもうすでに遅かった。
「くたばれやぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」
リュースケボールを隠れ蓑にして王妃のすぐ側まで接近していたラビ。メリケンサックを握りしめ王妃の腹をブチ抜いた。驚愕の表情をして消滅し始める王妃、吐き捨てるようにラビが言う。
「最初のてめぇの動きを真似をさせて貰った……」
怒りの表情で消え去る王妃。
王妃がいなくなり動揺が走るメイド達、メンバー達はその隙を逃さず反撃に出る。相変わらずの牽制と妨害で苦労はしたが攻撃役はいないので対処はしやすくなった。
リュースケの服に掛けられた魔法が解除される頃には全ての討伐が完了していた。
直ぐさまラビに詰め寄るリュースケ。
「いきなり何するんですか?!」
まだ戦いの高ぶりが残っていたのかドスの効いた顔と声でラビが言う。
「ああするしか無かっただろうがよぉ、えぇ?! 文句でもあっか?!」
「せめて前もって言ってください!」
「敵の目の前で作戦会議するヤツがどこにいんだァッ!」
「そりゃぁ……そうですけど!」
意外と怒っているリュースケに少し冷静になれたラビ。
「まぁ、確かに急だったな……悪かった……怖い思いさせちまったな……そうだよな、守るって言ってたよなアタシら……」
頭を下げるラビ、リュースケも落ち着き言う。
「ああするしか無かったのは分かりますよ……俺もキレてすみません……」
謝罪合戦を始めるラビとリュースケ、ラビも似非お嬢様口調に戻っていた。
ライガーが間に入るように言った。
「二人ともそこまで。お互い謝られましたし本丸も目の前、ここまでとしましょう」
そうだなと切り替える二人、負傷者や装備品の確認に入る一行。リュースケは安全の為に先程かぶせられた兜を装着したままにすることにした。
一息つきながら次の謁見の間の最終確認を始める一行。
ラビが言う。
「リュースケさん、謁見の間についての情報は?」
「いかにもという感じの場所でした。玉座に王様が腰掛けていて、部屋の所々に騎士達がいました。王様の玉座のすぐ側に取り巻きの貴族もたくさんいましたね」
「いよいよですわね……王は今までに多くの人々の命と恐怖を吸収しているはずですから、強大な力を持ってますわ……心してかかりますわよ!」
ラビの声と共に気合いを入れる一行。
一行は立ち上がり、ラビが謁見の間に繋がる扉に手を掛けた。
実は本場の二郎に行ったことがありません……
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