第六話 戦慄怪奇現象 ヤバすぎ!
胸像の間に突入した一行の前に、飛び交う胸像達が待ち構えていた。
早速、一体が一同目掛け飛び込んできた。慌てて避ける一同。
「ぐふぇぇっ!」
「チャールズさん?!」
回避が間に合わなかったチャールズの腹にしっかり直撃する。当たった像は何事も無かったかのように飛び去り上側で飛び回る。
直ぐにチャールズの元に駆け寄り治癒魔法をかけ始めるラビ。二人を守るように立つメンバー達、リュースケはどうすれば良いか分からずラビの傍に行った。
ライガーが叫ぶ。
「各自! 戦闘開始! 一体も通すな! 少年! できる範囲内で自分を守るんだ! 行くぞ!」
それぞれが駆け出す。
ライガー目掛け飛び込んでくる像。
それに対して盾でいなし、軌道変更と減速させるライガー。減速した像にボブが得物のハンマーを叩き込みぶち壊す。悲鳴を上げながら砕け散る像。
ライガーが言う。
「像その物に憑依している! 像ごと壊すんだ!」
手持ちのロープを飛び込んできた像に結びつけ動きを止めるグレイ。
「ユミル!! お願い!」
直ぐさまユミルがボブから借りたハンマーでそれを叩き壊す。背後から複数の像がユミンとグレイ目掛け突っ込んでくる。
「”ストーム”!」
突然、像たちの真下から竜巻が吹き荒れ、真上に方向変換させられる像達。
それに対してグレイは網で纏めて像たちを捕まえ、ユミルがハンマーで叩き壊し始める。その間も像たちが襲い掛かってくるが先程の竜巻やライガーたちに邪魔され近寄れない。
叩き壊しながらユミルは叫んだ。
「リョウコ! 助かったわ!」
杖を構え魔法を発動させたリョウコ、どや顔である。メンバー達は連携して像たちに対処し始めた。
ただ飛び交っていただけの像たちがフェイントや連携をしたり死角から攻めたりと動き方を変えてきた。中には特攻する像まで現れ始める。胸像の質量で飛び回られるだけで面倒なのに動きまで複雑になる胸像。
メンバー達も数を減らすのに苦戦し始めていた。
その頃、戦いを見守っていたリュースケ。自分の身はもちろん、手当てをしていて無防備なラビとチャールズも可能な限り守ろうと息巻いていた。
あれだけ複雑な動きをしながらお互いぶつかることが無くすごいなと感心するリュースケ。とはいえあの速さで飛び込まれたらと思わずビビりもしてしまう。
まるでファ○ネルみたいだなと感じてしまう。
リュースケはもしかしてと天井を見上げた。
飛び交う像たちで気付かなかったが天井にピタリと一体だけが張り付いていた。像たちの動きが良くなったのは恐らくこの像が指示を出したからかもと判断するリュースケ。
手当てが終わり、チャールズを守るように立つラビに直ぐさま伝える。
「ラビさん! 天井に張り付いているヤツがいます! もしかしてあいつが像たちに指示を?!」
「分かりましたわ!」
リョウコの元に駆け出すラビ。何かを頼んだかと思うと像目掛けて勢いよくジャンプした。
高い所にいるけれど大丈夫かと心配になるリュースケ、案の上届かないかに思われた。しかしラビの足下に竜巻が発生、それに乗り更に上に飛ぶラビ。
「喰らえやぁっ!」
拳を突き上げ、竜巻でドリルのように回転しながら像を突き破った。
動揺して動きが止まった近くの像を足場にして踏み砕きながら地面に着地するラビ。
指示役がいなくなったからか像たちの動きが単純になりメンバー達は攻勢に転じ始めた。最初の時よりも対処しやすくなり着々と処理されていく像たち。
あっという間に片付いてしまった。
これ以上の攻撃はないと判断して一息つく一同。
「リュースケさん! 助かりましたわ!」
「い、いえ……これぐらいしか出来ませんよ……」
リュースケにお礼を言うラビ。メンバー達からも同じ事を言われて彼は顔を赤くしながら照れてしまう。
目を覚ましたチャールズは仲間たちに心配されたが相変わらずの素っ気ない対応だった。チャールズは撤退しない決断をしたことを根に持ってかリュースケの事を睨みながら進軍の準備を始める。
ふとリュースケは尋ねた。
「こうして準備したり休んだりしてる間に襲われることは無いんですか?」
ラビが答える。
「たまにそういうことはありますわ、だから交代で見張りながらしてますのよ? それに本気でワタクシ達を殺す気なら全ての霊を投入して一気に終わらせますわ。でも奴らはそうしない、なぜだと思います?」
「理由があるんですか?」
「ええ。霊達は生者の命はもちろん、その絶望を力として吸収しますの。一気に終わらると命は取れてもそれ以外はあまり取れませんわ、だから霊達は少しずつ攻めてきますの。少しずつ少しずつ追い詰め、取れるだけの絶望を取ったら最後に命を奪うのが奴らのやり方ですわね」
「そうなんですね……」
ラビ達が戦いの後、やけにのんびり準備していたのはそういう訳かと納得するリュースケ。
そして一行は次の部屋を目指す事となった。
ラビが尋ねてきた。
「リュースケさん、次の部屋の特徴は?」
「天井にびっしりと松ぼっくりの飾り物が着いている真っ暗な部屋ですね、雨のようにそれが降り始めてきてすぐに出ましたよ」
「松ぼっくりですの?」
ユミルが言う。
「そういえば昔の王族たちの城にはそんな飾りを付けるのが流行っていたらしいわよ、あっ! ワタシが生まれる前だからね?!」
慌てて訂正するユミル、種族に関係なく年齢の話題は避けようと思うリュースケ。
扉に近づきラビが言う。
「それでは皆様……行きますわよ!」
扉を蹴破るラビ、中に扉がすっ飛ぶ所までは今までと同じだった。しかし蹴破った扉が振り続ける松ぼっくりに撃たれ、穴だらけになる。
中の様子を伺う一行、そしてラビは言った。
「無理ですわね」
ラビはそう言い、リュースケは尋ねた。
「さっき石像を防いだ時みたいに魔法でどうにか出来ないんですか?」
リョウコが答えた。
「あれだけの高威力があの面積で降り続けられるとキビシイ……せめて点で来てたら多重に防御魔法を張ってどうにか出来たんだけどな……となると……」
ラビを見るリョウコ、それに気付いたラビが言った。
「この松ぼっくりの部屋だけ消滅結界を構築するしかありませんわね」
「なんですかそれ?」
「その名の通りですわ。指定した範囲内の霊を纏めて消滅させる結界を作りますの。聖女だけが使える魔法の一つですわ! あっ?! 城に入る前に、城ごとそれを掛ければ良かったんじゃって顔してますわよ! そうも都合良くいきませんの!」
リョウコが引き継ぐように言った。
「いくつか理由があってそうしない……一つ目は構築中の聖女は無防備になること。構築中は霊達は全戦力を投入してでも必死で邪魔をする……そうなるとさすがに守り切れない可能性の方がかなり高くなるから……二つ目はこの城の規模かつ幽霊が満タンの状態での発動は、誰だろうと魔力が足りなくてそもそも出来ないんだ……この部屋の大きさでギリギリかな?」
リョウコの説明の間にラビはリュックから荷物を出して結界構築の準備をしていた。
リュースケは更に尋ねた。
「そんな消耗が激しい魔法を使って大丈夫なんですか?」
ラビが頬を両手で叩き、気合いを入れながら言った。
「ギリギリですわね! ポーションがぶ飲みでどうにかなりますわ! 構築中の守りを皆様頼みますわよ!」
リョウコがぼそっと言った。
「ラビは魔法が苦手だからね……よく教官に怒られてベソをかいてたよ……」
扉の前に座り込んだラビが、顔を赤くしながら吠えた。
「うっ! うっせぇッ?! ほら! 配置について下さいまし!」
ライガーが各自に指示を出ぅ。
「ラビ様を囲むように陣を取る。リョウコはラビ様の正面を、防御魔法でひたすら正面からの攻撃を守れるか?」
「がんばる……この扉の大きさでの面攻撃ならどうにか……」
「分かった。真後ろは俺が立つ! ボブとグレイは右に、ユミルとチャールズは左! 少年はラビ様の側にいてくれ。少年、くれぐれも無理はするな。自分の身を守る事が第一だ」
各自が配置につく、ラビが言った。
「これから構築に入ります! おおよそ十分ですわね! 頼みますわ!」
目を閉じて結界構築に入ったラビ。騎士達とリュースケに緊張が走る。
二分経過……今の所は霊達からの攻撃は無い……。
更に二分経過……霊達からの攻撃は無し。額に汗を流しながら構築作業を続けるラビ、手元にあるポーションを一気飲みする……。
更に一分経過……変化が起こる。
松ぼっくりの部屋からいくつかがラビ目掛け飛んできた。しかし見えない壁のような物に阻まれる。防御魔法を展開中のリョウコが言う。
「始まった……」
天井からも床からも液体が垂れるような様子で霊達が湧き出て来た。使用人達の霊だからかその手にはそれぞれの仕事場での愛用品らしき物が握られている。
霊達の姿をまじまじと観察して思わず少し漏らしてしまうリュースケ。
なぜなら彼らの顔には何も無く、のっぺらぼうだったから。
此方を見ているかのように佇む霊達……未だに上下から霊達が垂れてくる。
一番先頭にいた霊が少しブレた瞬間だった。
悪寒がしたライガーは盾を正面に構えた瞬間、盾で何かを受け止めた。見ると先程の霊がしがみ付いていた。それを皮切りに霊達が攻めてくる。
すさまじい速さで移動する霊達、走る動作などなく地面を滑るように同じ姿勢で迫る。
瞬間移動に近い速さに面食らう一同は背後にいるラビとリュースケに来させないように攻撃を受け止めながら霊達に対処する。
防御魔法を展開し続けるリョウコも苦悶の表情を浮かべている。
ラビも先程よりも激しい量の汗をかきながら二本目のポーションに手を掛けようとしていた。
自分だけが何も出来ずもどかしさを感じながらも、とにかく自分とラビを守る事に専念するリュースケ。
更に三分経過……どうにか一同は対処出来ている。とはいえ数だけは多く、全員の集中力も限界が近づいていた。
「チャールズ!」
ユミルが叫ぶ。
「しまっ!」
チャールズの横から霊が一体抜けてきた。
ラビ目掛け迫る霊、間近で見るのっぺらぼうの気持ち悪さと移動の速さに盛大に漏らすリュースケ。やけくそ気味に霊の顔面目掛け拳を突き出し、それが霊の顔面を貫通する。そして霊は消滅し安堵するリュースケ。警戒を続けた。
それから数分後、ラビが叫んだ。
「皆様! 終わりましたわ!」
ラビの声と共に松ぼっくりの部屋から悲鳴が聞こえ、降りも止まった。
これで守りに気を遣わなくて良いとメンバー達は攻めに転じ始める。
ラビも息を整え戦闘に加わる。
それからはあっという間に霊の駆除は終わった。
元々使用人の霊だったからか戦いに向いておらず、訓練を積んだラビチームの相手ではなかった。
退治が終わり息を整える一同、少し休みながらラビはリュースケに尋ねた。
「松ぼっくりの部屋の先はどうなってますの?」
リュースケが答える。
「確か……縦長の何も無い部屋でしたね。その次が謁見の間です。」
「分かりましたわ!」
休憩が終わり進み始める一行。縦長の部屋に通じる扉に手を掛けてラビが言った。
「皆様、行きますわよ!」
普通に扉を開けてその先を見た。
好きな動物はウサギです。
もふもふな毛、”Y”な口元、感情豊か、ペットの理想全てが詰まった最高の生き物だと思います(異論は認める)
最後までお読みいただきありがとうございました。
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