二十七話 オギャりファーザー
第三章開始です☆
リュースケの歓迎会から一週間後、ユミルを筆頭にラビチームは本部のボスの部屋に急いで移動していた。
焦りから乗り込んだ昇降機のボタンを何度も連打してしまうユミル、それをたしなめ落ち着かせるラビ。そして目的の階に到着する。早歩きでボスの部屋に向かうとラビが代表して入室の許可を求めた。
許可が下りて入室した一同の前に机で険しい表情を浮かべるボスと装飾の施された鎧を身に纏う騎士達がいた。
ボスが口を開く。
「いきなり呼び出してゴメンネ~……『本当なんですかっ!?』ユミル……その通りネ……」
「そんな……」
うなだれるユミルに位の高そうな騎士が話し掛ける。
「もしや君が町長の?」
「はい……私がパーイン町の町長の娘ユミルです……本当なんですか!? 父が王女様への不敬罪で投獄されたっていう話は!」
「本当だ……今は我々王族騎士団によって連行してバナーヌの牢に入れている。我々の監視付きだが面会はできる、彼も君と話したがっていたから行くといい」
「そんな……父は一体何をしでかしたんですか……」
「……そのだな……」
急に言いよどみ始める騎士、他の騎士達も気まずそうな顔をしている。
彼は意を決して口を開いた。
「町で祭りが行われていた時の話だ。何事も無く進行して閉会宣言しようとした時になってそれは起こったんだ。
町に魔法留学されている我らの主、第二王女”メローヌ”様と君の父が共同で閉会宣言しようとした瞬間に……君の父は倒れ込み、駆け寄ったメローヌ様にいきなり抱きつくと赤ん坊の真似事をしてきたんだ。見ているコッチが恥ずかしくなる位の赤ん坊っぷりだったぞ……」
「……は?」
「いや……君の戸惑いも分かる……我々だけで無く参加していた者ら全員が困惑させられた……我々も彼とはそれなりに付き合いはある。とてもそんな事をする人物とは思え無かった……ともかく我々で直ぐに取り押さえたからメローヌ様に害は無かったのだがな……やったことがやったことだ、流石に……なぁ……?」
「仰る通りです……」
思わぬ父の痴態に顔を赤くするユミル、騎士が話を続けた。
「取り調べの段階では普段の町長に戻っていた。なんでもその時は意識が失っていて覚えていないと供述していた。それだけなら只の言い訳だと切り捨てられるんだがな……最近町で大の大人がいきなり赤ん坊返りする騒ぎが多発している、その赤ん坊返りした者達から情状酌量の嘆願が寄せられてな。最近騒ぎの幽霊事件とも関連が有るかもしれん、こちらと連携して調査をしたくて我々は今ここにいるんだ」
ボスが引き継ぐように話し出す。
「もちろんこちらとしては協力させてもらうヨ、ただ……」
言いにくそうなボスに代わり先程の騎士が話す。
「ユミル、君は現段階では騒ぎを起こした人物の娘だ。自分の父の罪を軽くするために隠蔽を行う可能性があると判断した。それは君の所属するチームにも同じ事が言える、だから君らには調査が終わるまで我々の監視下にいてもらう。君らのボスも了承済みだ」
「ボスっ!」
ボスに訴えかけるラビ。
「ごめんネ……騎士さん達の言うとおりだとワタシは思う。もし同じ立場ならワタシでもそう判断するネ……『ボスっ!』分かってラビ……」
悔しそうな顔を浮かべるラビチームの面々、ラビはそれでもとボスや騎士達に訴えかける。ユミルが絞り出すように言った。
「ラビ……もういいわよ……『ですがっ!』その気持ちはすごくうれしいわ、でもボスや騎士さん達の言い分は悔しいけどもっともよ……従いましょ?」
「ごめん、ユミル……」
ボスは小さく謝りながら今後の指示をラビチームに出し始める。
悔しそうに拳を握り閉めて指示を聞くラビ。
指示を聞いている途中で外が騒がしくなっていることに気付くリュースケ、その瞬間大きな音を立て勢いよく部屋の扉が開かれた。
「うおぁあああああぅっ!」「どうした?!」「なんだ?!」
「はい、落ち着きなさいまし。よっ……と」
大きな音に驚き、大声を上げながら地面を転がるリュースケ。リュースケの驚きっぷりに驚かされる騎士達、慣れたようにリュースケを受け止め起き上がらせるラビ。
扉を開けた人物はお供の騎士達を引き連れて部屋に入り込む。
その人物は豪華な装飾が入った白いローブを纏い、薄緑色の髪をポニーテール状に後ろに縛ったリュースケと近い年頃の少女だった。
その少女が言う。
「皆様、ごきげんよう。フルッツ国第二王女メローヌと申します。お見知りおきを……『メローヌ様! なぜこちらに?』なぜもありません、騎士団長。私を差し置いて動くなんて酷いですわよ?『しかしですなぁ』自分の身に起こったことは把握しておきたいものでしょう?」
思わぬ王族の登場に一瞬、身が固まってしまうラビチーム。直ぐ様身をかがめ、お辞儀する。訳も分からず固まるリュースケ、気付いたラビが頭を掴み下げさせた。
プンスコといった様子で騎士団長に文句を言う王女メローヌ、王女をなだめながら今までの経過を話す騎士団長、報告を聞いたメローヌはボスとラビ達に言った。
「事情は分かりました。ラビチームの皆さん、私達と共同でパーイン町の事件を調査してくださいませんこと?」
「メローヌ様?! 一体何を?!」
困惑する騎士団長、メローヌが説明を始める。
「騎士様達の困惑は分かります。しかし私達で厳重に監視してれば悪さをする隙は無いでしょう? それに家族の無実を晴らそうと精力的に調査に励んで頂いた方が早く事実が分かるかと私は考えますの、いかがかしら?」
「是非ともやらせて下さいまし!」
話を聞いていたボスが尋ねる。
「メローヌ様、よろしいので? 私個人としましてはありがたい申し出ですが……」
「構いません。騎士団長、主の私が許します。そのように調査を進めるように他の騎士達に連絡を」
「かしこまりました……」
少々不服そうに答えた騎士団長、直ぐに後ろに控えた部下達に指示を出してこの場にいない者らに周知させに走らせた。それから具体的に調査の打ち合わせを始める。
話が纏まった所でメローヌはリュースケの方に近づき話し掛けてくる。
「あなたが異世界から来たという方ですね? 突然の事態に大いに戸惑われていると思います。その中で世界の為に幽霊退治に加わって下さり王族として感謝申します。ありがとう」
そう言い手を差し出す王女。ラビのエセお嬢様口調とは違う本物のお嬢様口調に思わず背筋が伸び、その高貴さにまぶしさを感じながら握手に応じる。
細く弾力があり、すべすべした手に内心ドキドキしっぱなしのリュースケ。不機嫌そうな顔をしながらラビが注意する。
「リュースケさん? あんまり握りすぎるのは失礼ですわよ」
「あっすいません!」
「あらあら、いいですのに……」
どこか残念そうな顔をしながら答えるメローヌにトキめきを感じるリュースケ。メローヌは他のメンバーにも握手をしようとするも各自が恐れ多いと断った。メローヌは若干悲しそうな表情で優雅に別れの挨拶をし、監視役以外の騎士達を引き連れて出て行く。
彼女の表情に若干の罪悪感を感じるラビチームにボスは調査の為の準備を命じる。
後ろに監視役の騎士達が付きながら、昇降機に乗り込んだ所でライガーがユミルとラビとリュースケに言う。
「ユミル、それにラビ様とリュースケは自分の準備を済ませたら面会に行って下さい。他の準備は残りのメンバーでやります」
「いいの?」「私達もですの?」
「様子が気になって調査に集中出来ないなんてなったらまずいですからな、それに事前情報は大事です。あちらの事情を把握しておきたいですし、もしかしたらリュースケやラビ様のスキルで何か分かるかもしれませんからね。そういうわけで二人共お願いできますか?」
「ありがとう……ラビ、リュースケもいいかしら? それと騎士様達も構いませんでしょうか?」
「「もちろん!」」「我々も構いませんよ」
そうしてラビチームは準備に入った。監視されながら個人の準備を済ませたユミル、ラビ、リュースケはユミル父が収監されている場所に向かった。
頑丈そうな石造りのいかにもな建物に案内されるリュースケ達、外にも中にも見張りの兵が巡回しており物々しい雰囲気となっている。監視役の騎士の一人が面会の手続きをしている中、リュースケはふとラビに尋ねる。
「そういえばラビさん?『なんですの?』魔法やスキル次第では簡単に脱獄されませんか?」
「その心配は無い」「ワタクシが答えようと思いましたのに……」
監視役の騎士が答える。ラビは頬を膨らませて不満を表すも彼は気にせず続ける。
「魔素への干渉とスキルの発動を阻害する鉱石を使った拘束具を身につけさせているからな、その心配は不要だ」
「へぇ~そうなんですね。教えてくれてありがとうございます」
「気にするな」
手続きを終わらせた騎士が合流してユミル父が収監されている牢に進むリュースケ達。いくつかの牢を通り過ぎて目的の場所に到着する。
そこにはユミルと似たような髪色に整えられたあごひげをたくわえたダンディなエルフがベッドに腰掛けていた。
ユミルが恐る恐る声をかける。
「父さん……」
「ユミル? ユミルなのか?!」
格子を掴んだユミル父が弁明する。
「本当に覚えていないんだ! そんな恐ろしい真似などするものか! 信じてくれ!」
ユミルは後ろにいたリュースケに声をかける。
「リュースケ、悪いんだけど父の手を握ってくれないかしら? もし霊がらみなら何か反応があるはず、騎士様達も構いませんでしょうか?」
「我々は構わない。リュースケ、ほら」
騎士達に促されユミル父と握手をするリュースケ、しかし特に異変は起こらなかった。念のためラビの干渉魔法で様子を見るも同じだった。
残念そうな顔をしたユミルが父に言う。
「ひとまず父さんの事は信じているわ。これから赤ちゃん返り事件の調査にパーインに向かうの。全力で調査に臨むから……でも父さんが黒だったら……『……黒だったら?』モいでツブすからね☆」
競馬で大負けしたとき以上にどす黒い表情で何かを引きちぎる動作をするユミル。
「「「「「ひゅっ!」」」」」
その場にいた男性陣が思わず股間を押さえて怯える。
それからユミル父に聞けるだけの事を聞き、本部に帰還するリュースケ達。ライガー達と合流して準備を手伝いつつ情報共有を行った。
「それでどうじゃった?」
ボブが魔導車の整備道具を片付けながら尋ね、ユミルが答えた。
「基本はボスの部屋で聞いた事と同じよ……ただ、意識を無くす直前に右の手の平から力が抜けていく感覚があったらしいの、それが全身に一気に広がって意識が無くなったみたい……この情報以外は特に目新しいことは無かったわ……」
「そうか……」
シャドーボクシングをしていたラビが続けて言う。
「ワタクシの魔法やリュースケさんのスキルでユミルパパに触りましたが特に変化は有りませんでしたわ。少なくとも憑依状態ではありませんわね……」
「魔法的な干渉? いやここまで大きく精神に干渉する魔法は聞いた事無いしな……」
リョウコは準備をしながら考察を始める。
準備を済ませたリュースケがおそるおそる監視役の騎士に尋ねた。
「あの……王族への不敬罪ってどんな刑を受けるんですか?」
騎士が答える。
「裁判官や事情次第な所はあるが……良くて長い懲役刑、やや悪くて無期懲役、最悪死刑といったところだな……」
「そうですか……なんとしても本当の事をハッキリさせないと」
「その意気ですわよ、リュースケさん! 皆様! 気張って行きますわよ!」
「「「「「「了解!」」」」」」
こうしてラビチームは準備を終わらせ、その日は解散となった。
そして翌日、ラビチームはボスに挨拶してから騎士団と合流してユミルの故郷パーイン町に旅立った。
今更ながら映画「リゾー〇バイト」を見ました。
感想としては ”なんだこれは……たまげたなあ” な感じですね。
次回は三日後同時刻の予定です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今後の執筆の励みになりますので是非とも評価をよろしくお願いします。




