二十六話 ドワーフ飯で飲ろうぜ
ラビ達と別れて寮の部屋に戻ったリュースケ。チャールズは先に寝ていて、自身も寝支度を済ませベッドに入り就寝した。
翌朝、大きないびきをかきながら眠り続けるライガーを放置し、リュースケは食堂へ一人で向かった。チャールズは先に食べに行ったようで起きた時には部屋に居なかった。
顔なじみの者達に声を掛けながら食事を受け取り空いている席に着くリュースケ。そこにラビ達女性陣も合流し一緒に食べ始める。
リュースケが立て替えた酒代を返そうとするユミル、後ろでユミルの頭を掴み怖い笑顔を浮かべるグレイ。リュースケは奢りのミルク代を差し引いた額を受け取ることにする。それに大喜びするユミルにあきれつつ食事を続ける一行。
食事を終えたところでライガーがやってきた。ジト目を向ける女性陣、助けを求める視線をリュースケに向けるも昨日の二の舞は御免とリュースケは顔を反らす。女性陣にアレコレと注意されつつ、ライガーも朝食を食べた。
ライガーが食事を終えたことを確認したラビが言う。
「リュースケさん? 今日は夕方以降は空いてますかしら?」
「特に予定は無いですね……何かあるんですか?」
「良かった! リュースケさんの歓迎会をボブさんのお宅でやろうということになりましたの! 午後の鍛錬の後、ライガーさんと一緒にボブさんのお宅に来て下さいまし。私達女子チームはボブさんの奥様のお手伝いに午後から行きますわ! 午後の鍛錬はライガーさんの指示でやってくださいまし!」
「ありがとうございます! しっかり鍛錬して腹を空かしときますね!」
喜ぶリュースケは今日の鍛錬を頑張ろうと意気込む。
ラビ達と一旦別れ、準備をしてから鍛錬場に向かうリュースケ。ラビ達とも再合流し午前の鍛錬が始まった。
午前の鍛錬を終えた昼食後、ラビ達女性チームはボブの自宅に向かう。残された男性陣と飛び入り参加の者達で鍛錬を始める。
鍛錬中にふとライガーに尋ねるリュースケ。
「そういえばチャールズさんとは模擬戦したことが無いんですよね……」
「あ~~ヤツは自己練に励んでいるな……どうも自分が納得いく領域にまで実力を付けたいらしい……城の事件前まではサボるようなヤツだったんだがな……きっかけがあれば変わるモンなんだな……今日の歓迎会の参加は断られている。自分を追い込みすぎないか心配だよ……」
「そうなんですね……『さあ休憩は終わりだ!』はいっ!」
こうして午後の鍛錬に打ち込むリュースケ達男性チームであった。
鍛錬を終え、ボブに案内されるリュースケとライガー。
普段行かない方面に進むと住宅街が見えてくる。似たような見た目の家々が並んでいる中でボブはすいすいと進んで行く。そうしてある家の前で立ち止まった。
「ボブさん? もしかしてここが?」
「そう、我が城じゃ。お~~い! ハニー! 帰ったぞい!」
ドタバタとした音が玄関から聞こえてくる。そして玄関が開く。
「あんたぁ! お帰りなさい! 坊やがリュースケだね? アタシはバーバラだ、よろしくね! ダーリンから聞いてるよ、大変だったね~~いきなり違う世界に放り出されるなんて……今日は腹一杯喰っとくれ!」
出てきたのはボブと同じような体格のドワーフのおばさんだった。まさにザ・肝っ玉母ちゃんといった雰囲気と見た目でリュースケに自己紹介をした後、ボブとハグをしながらイチャつき出す。
夫婦仲が良いのは良いことだがそれでも目の前でイチャつかれるのは中々に精神的に来るモノがある。さっさと中に入りたいが家主のボブを差し置いてそうする訳にもいかず、心の何かがガリガリと削られるような光景を眺めさせられることとなるライガーとリュースケ。
もうこれ以上は、という所で玄関の方からラビ達が出てくる。
「リュースケさん、ライガーさん、ボブさん、お疲れ様でしたわ! 準備バッチリですわよ!」
「ほら! 早く中に入んなさい! 酒が待ってるのよ?!」
「私もお腹が空いた……」
「いつまでハグしてるんだい……?」
ラビ達は普段の格好にエプロンを装備した姿で現れ、中に入るように促す。
「おっと! 刺激が強すぎるな! さあ、入れ入れ!」
「お邪魔します」
「邪魔するぞ」
「コッチですわよ~~」
ラビ達に先導された先にはテーブルに所狭しと置かれた料理の数々があった。そしてその料理達にリュースケは驚かされる。全ての料理がリュースケの世界で言う所の中華料理であった。
恐る恐るリュースケはバーバラに尋ねる。
「あ、あの……この料理は?」
バーバラが答える。
「これかい? 私らドワーフに伝わる郷土料理だよ。あ、もしかしてこういうの苦手だったかい?」
「い、いえっ! 俺の世界の料理とそっくりで驚いたんです……まるっきり同じなんですよ……」
「そうなのかい? 不思議だねぇ……さあ、冷めちゃうから早く食べな!」
バーバラに促され席に着くリュースケ。リュースケの隣に座るラビを皮切りに他の面々も椅子に座り始める。
全員に飲み物が行き渡ったところでラビが立ち上がり言う。
「皆様! 歓迎会の準備を手伝っていただきありがとうございましたわ! そしてリュースケさん! 遅くなりましたが……この世界に、そして我がチームにようこそ! 今日はたくさん食らって飲んで下さいまし! それでは皆様……」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
食べ始める一同。
やはり味付けも中華料理その物だった。久々の自身の世界に近い食事にテンション爆上げのリュースケは夢中で食らいつき、ラビはリュースケ以上のペースと量を食べ続けていた。
ボブ秘蔵の酒も出され、大喜びのユミルは味わうように飲み進め、ライガーも酒を楽しみつつ食事を楽しむ。
グレイはユミルが羽目を外さないように見張りながら食事をし、リョウコも目を輝かせながら料理を食べている。
ボブとバーバラはユミルと酒の感想を語り合いながら食事をするが、時折お互いに惚気ながら食べさせあったりもしてユミルを少しげんなりさせる。
ふとバーバラが話し掛ける。
「坊や? 口に合ったかい? なんだか息子達を思い出させる食いっぷりだねぇ……」
「美味いですよ! 特にこのチャーハン!『チャーハン?』あっ俺の世界ではそう言うんですよ! これ絶品ですね! 他の料理も最高です!」
「良かったよ、ちなみにそれはこっちだと”チャハハーン”って言うね」
「へぇ~~……あれ……?」
「どうしましたの?」
食べ物で口を膨らませているが、もごもごさせずに器用に尋ねてくるラビ。
「その……なんで言葉が通じてるのかなって……違う世界同士言葉がまるっきり同じとかあり得なくないですか?」
飲み込んだラビが答える。
「それは女神様の力ですわね『女神様?』はい、ユミルさんの方が詳しいと思いますわよ? ユミルさ~~ん!『な~に~?』実は……」
事情を聞いたユミルが説明してくれた。
「私が生まれるよりもずっと大昔の話……ボスはエルフの中でもめったに現れないハイエルフっていう特殊なエルフでね? ワタシ達普通のエルフより遙かに長生きで結構年上なのよ。そのボスが生まれるよりずっと前の話。
その頃は各地で言語がバラバラだったの。そして人々はそれぞれ異なる言語で女神様に祈りを捧げて生活していたんだけど……ある日世界中の人々に啓示があったらしいのよ。〈祈りはうれしいけど言葉が違うと処理に苦労する、言葉を統一した方が物や人の流れも活発になり世界が良い方へと発展するから統一する〉ってね……
その後、女神様が目茶苦茶頑張ってこの世界の言葉は統一されたの。リュースケがこの世界に来た段階でスキルを得て言葉が通じた訳だし、この世界の法則が適用されたのでしょうね」
「そうなんですね……俺の世界だと神話ではあるんですがほぼ真逆の出来事があって……」
自身の世界の話を始めるリュースケ。バベルの塔の話から始まり、リュースケの世界の宗教の話、リュースケのバイト先のラーメン屋の話と様々な話で盛り上がる一同。楽しい時間が過ぎていく。
そして歓迎会は終わり、片付けに入った。それを終えると各自がバーバラからドリンクを手渡される。
「これは?」
「アタシは薬草栽培や薬を作るのを仕事にしていてね、これは飲み過ぎ食べ過ぎに効く特製ドリンクだよ。次の日に影響があっちゃいけないからね、ほら、飲んだ飲んだ!」
促されるままに飲むリュースケ達、青汁よりも飲みやすくあっという間に飲みきった。
「はあ……ワシのハニーはなんて気が利くんじゃろうなぁ……いい嫁さんを貰ったなぁ……」
「よせやい、ダーリン♡ 照れるだろ?」
お互いにうっとりしているボブ夫妻、またいちゃつき出しそうな気配を感じたリュースケ達は二人に感謝と別れを告げて足早にボブ宅を後にする。
「ラビさん、皆さん! ありがとうございました!」
「いえ、お気になさらずですわ! こちらこそ今後ともよろしくですわ!」
他の面々も同じような言葉を続ける。
仲間との絆が深まったことを感じながら帰宅するリュースケ達であった。
次回より第3章突入ですぞよ
次回は三日後同時刻の予定です。
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