二十二話 フォールボーイ
レックを倒す為の作戦をリュースケ達は開始した。
試作7号機改の上で村長の首元にダガーを押し当てたリュースケが緊張した顔でレックに向かって叫ぶ。
「俺が動くんだからレックは動くな! なぜ常識を知らない?! 知りたくないのか?! 知る度胸が無いのか?!」
突然の復讐相手の危機にレックは動きを止めざるを得なかった。
事前にラビから聞いていたとはいえ訳の分からない発言に困惑するラビチームの面々、指示を出したラビでさえ発言の意味が分からず困惑していた。
そんなリュースケの背後にはティーレが竜の姿で魔素供給のケーブルを握って控えおり、運転席にはラビがいる。
リュースケが続けて叫んだ。
「レックの弱点見つけたり! 復讐相手の危機だからね。そんなんじゃ現代社会でやっていけないよ? 本音と建前使い分けないと。ホントに最強なの?」
足ガクガクでリュースケはレックを貶し、レックは鋭く睨む。それを確認したリュースケは半べそをかきつつラビとティーレに目配せして続けた。
「何のために蘇ってなにをして喜ぶ! 帰れ!! 散々苦労させやがって!」
レックを挑発して冷静さを失わせようとするリュースケ。必死にある有名な語録で挑発していた。訳が分からないが罵倒されていることだけは分かったレックは殺気を募らせるが迂闊に動けない。
そしてリュースケは止まらない。
「うお……急にすげぇ殺気……! 赤ちゃんかな?」
「おら、頭を下げろ。止めて欲しいなら止めて欲しいなりの格好をしろ!」
「くそ……なんだその殺気は!? かわいいね♡」
「見下してる種族にけなされる気分はどうだ? 感想を述べよ!」
「頑張れ頑張れ!! 敵に応援されてどうすんだ!! クズッボケッバカッ!」
鼻息荒くし、必死に飛びかかりたい衝動を抑えるレック。
その様子に青ざめながらリュースケは続ける。
「がっつくな! 急がば回れという言葉を知らないのかよ」
「だらしねぇ野郎だシャキッとせい!」
「頑張れ♡ 頑張れ♡ ほらファイトだよ我慢しろ!」
「かわいいね♡ レックちゃん♡ 反省した? いや? その顔は反省してないな!」
「本当は俺よりビビり何じゃ無いの? 正体見たり!って感じだな!」
「オラッ我慢しろってボケドラゴンがよ。ね? 貶すよ? いいよね? いいよね? くそっ、この木偶の坊が!」
「ほう……これを我慢するか。花に例えると……うんまぁちょっと思いつかないんだけど」
「ガァァッッ!!」
我慢の限界が来たレックはなりふり構わず駆け出す。それを確認すると村長を投げ捨ててラビとティーレに合図する。
「今です!!」
「分かった!」
ティーレが魔素供給を行い、ラビはアクセル全開にする。
「ウオォォッ!」
全力で魔導車をレック目掛け蹴飛ばすティーレ。
「ひいいぃぃいっっ!」
必死にしがみ付くリュースケ。
そこからは一瞬の出来事だった。
元々の異常な速さにティーレの蹴りも合わさり、性能以上の速さとなる試作7号機改。
そのままレック目掛け突っ込み大爆発を起こす。普段のレックなら回避出来たであろう攻撃は罵倒によって冷静さが失われ、更に目の負傷による視力の低下、それらが重なったことで成功する。ラビが事前に干渉魔法を付与していたため、直撃したレックは足に重傷を負い倒れ込む。
思わぬ大ダメージに悶絶するレック、ふと見上げると頭上に二人の人影が見えた。直撃の瞬間に車の天井をぶち抜き、爆発を利用して上に脱出したラビとリュースケだった。
ラビが叫ぶ。
「シャアアァッッ! オラァァッ!!」
リュースケを全力でぶん投げるラビ。重力とオーガの全力が合わさり、凄まじい速さで落下する。
「ひいいぃぃっ!」
悲鳴を上げて漏らしつつもレックから目を離さないリュースケ、大の字になりながら落ち続ける。
レックはどうにかリュースケを迎え撃とうとするが、ラビチームの面々やティラに抑えられてそうできない。
そしてリュースケはレックの顔面に張り付いた。
「ギャアアアァァッ!!」
悲鳴を上げ苦しみながら消滅するレック、ティラがつぶやく。
「さよなら……父ちゃん……」
レックが消滅したことを確認し周囲を警戒するラビチーム。
「ちゅかれた~」
眠り始めるユミル。骸骨達の追撃は無く、ユミルはティラに任せて残りのメンバーでリュースケとラビの救助を始めた。
リュースケはレックの顔面がクッションとなり打撲程度の負傷だった。仲間達の手を借りて立ち上がったリュースケは動悸が止まらない中で仲間達と共にラビの元に向かう。
「ラビさん! 無事ですか?!」
リュースケ達の方を向いたラビが答える。
「両足をやっちゃいましたがそれ以外は大丈夫ですわ~~!」
ラビは着地の際に両足を骨折していた。幸いそれだけですでに回復ポーションと回復魔法で自分の治療を行っていた。
「皆ー! 無事だったー? こっちは全部ぶちのめしたネー!」
そこにいつもの陽気さでラビチームと合流してくるボス。ボスの手で骸骨達は全て消されていた。
夜が明け、朝日を浴びつつ状況確認を済ませ、村人達に合流することにするラビチームとボス。
ユミルはそのままティラに背負われる。まだ骨が繋がってないラビはその様子を見てリュースケに言う。
「リュースケさん! ワタクシもおんぶして下さいまし!」
「えぇ……」
「ほら! 速く行きませんと!」
「わ、分かりました……」
困惑しながらラビを背負うリュースケ、満面の笑みのラビ。相変わらず見た目よりもガッシリとした体つきだなと思いつつ移動を始めるリュースケ。
合流した後に事件の解決が宣言され沸き立つ村人達。その様子を満足げに眺めるラビチームとボス。コワかったけど頑張って良かったとしみじみと感じるリュースケ。
そして被害の確認に入った。建物は軒並み倒壊し怪我人も多数いたが幸い死者はいなかった。竜族が竜型に変身した際にうっかり建物を壊すことはよくあるらしく、わざと壊れやすくしかし再建設は容易な設計にしている為、復興は簡単だと説明される。
幽霊退治という任務は完了したがこのままさようならというのは忍びなく、ラビの足も完全回復していない事もあってボスとラビチームで復興を手伝うこととなった。
まずは村長一味を全員拘束する一同、そして村人達に療養所の真実を話す。
今までの自分達は間違っていなかったと開き直り始める村長一味、それに軽蔑のまなざしを向けるボスが言う。
「確かにネ……でも貴方達は本心からじゃなくて自己保身の為でショ? 今回の事件は軍が悪かっタ……でも余所の村で強盗や暴力行為をしていい理由にはならないヨ? 後、軍閥の偉い奴らはワタシが連絡しておいたから捕まって取り調べを受けてるヨ? 証拠もたっぷり付けておいたから厳罰確定ネ! 救援に向かう時に連絡しておいたから数日で収容馬車が村に到着するネ、貴方達のしてきたことへの罰は司法が決めるヨ」
うなだれる村長一味、彼らの前にその家族らが立つ。別れの言葉と共に全員が離縁状を叩き付けられる。以前から家族に対して暴力的で今回の件が無くてもいつかは離縁するつもりだったと話す。さらに前村長が再度村長を務め直す事となり彼の判断で村長一味は村からの永久追放とる。泣きわめく村長一味を纏めて半壊した納屋に放り込み、一同は復旧作業に入り始めた。
村の女性達と協力して怪我人の手当てを行うラビとユミル、ラビは動けない歯がゆさを感じつつ自分にできる仕事を、ユミルはラビの補佐をしながら戦闘の際の醜態を思い出しては顔を真っ赤にして悶絶していた。
一方、村の男達と協力して復旧作業を残りのチームメンバーとボスで始めた。
ティーレも祖父である新村長の傍で村長としての振る舞いや仕事を懸命に学ぼうとしていた。新村長も息子達のようにはさせまいとティーレに村長としての必要なことを教えていく。
再建設より瓦礫の片付けの方が面倒だったがコツコツと作業を続ける一同。そんな中、思い詰めた表情でいるティラが気がかりなラビ、話を聞こうにも中々仕事が忙しくそうできない。
そして数日掛けて少しずつ元の村の姿に戻り始める。
怪我から回復した村人達が増えて復旧が早く進んでいく。そして収容馬車が到着して村長一味は涙ながらに叫ぶも誰も答えず収容所に連行された。もう少し復旧作業に加わることにしたラビチームとボス、その間もティラは悩んだ顔で家族達と相談している姿は見かけるもラビは聞けず仕舞いだった。
レックとの決着から一週間後、大部分が復旧する。
ラビの足も動き回る分には問題無しとなり、帰還することにしたラビチームとボスは村人達に別れを告げる。大勢の村人達に手伝って貰いつつ出発の準備を始める一行。
最後までしっかりティラと話せなかった事が気がかりだったラビはようやくティラを見つける。大きな荷物を背負った彼女もラビに近寄ってくる。
そしてラビの目の前に来たティラは言った。
「皆さん、村を助けてくれてありがとうございます……お陰で事件が解決した……それなのにこんなお願いをするのは申し訳ないんだけど……オラをラビちゃん達の組織に入れて下さい!」
「ティラさん?!」
ボスがティラの前まで来て尋ねる。
「なぜ?」
「オラ、ずっと考え続けてた。一番悪いのは父ちゃん達と軍の人達だってのは分かってる、けどそれでもオラの父ちゃんだから……娘のオラが代わりにけじめを、父ちゃん達が傷つけてきた数以上に誰かを助ける事で禊にしようって……幽霊事件が色んな所で起こってるんだろ? 今度はオラが誰かをそれから助けたいんだ……」
「命がけですよ? もう家族と会えなくなるかもしれませんよ? 本当に良いんですか?」
真面目モードに入ったボスが尋ねる。
それにティラが答えた。
「……分かってます。叔母さんやティーレにじいちゃんにも相談して決めました。オラを組織に入れて下さい!」
「……ご家族の皆様、よろしいですか?『構わんよ』『決めたら聞かない子だからねぇ……』『村は俺とじいちゃんに任せろ』分かりました……まずは養成所で訓練を積んで貰いますが構いませんか?『はいっ!』よろしい……新たな組織の一員を歓迎しましょう、よろしくお願いしますティラさん」
ボスは手を差し出し、握り返すティラ。一行はティラと共に本部に向かい、手続き後にティラは養成所に向かう事となった。
それから車に乗り込もうとした時、ティラの祖父から何かを手渡されるラビ。
「あら? こちらは?」
「これは竜衣装の生地を使った手袋です。使って下さい『悪いですわよ……こんな立派なもの……』お嬢さんの戦い方はどうも危なっかしく見えましてな……多少の拳の保護にはなりますよ」
「ここはありがたく頂くヨ? 竜衣装を使った装備なんてめったに出会えないからネ? それにラビの戦い方的にはあった方がイイと思うネ!」
「では、お言葉に甘えまして……手にしっかりなじみますわ! ありがとうごさいます!」
「ええんですよ……役立てて下さいませ。リュースケさん『はい?』」
貰った黒い手袋を付けてシャドーボクシングをし続けるラビ、続けてティラの祖父がリュースケに言う。
「私は占いをしておりまして……貴方は今後、とてつもない目に遭うと出ました『えっ?』とにかく気を付けて下され」
怯えるリュースケにティラが言う。
「気にするなリュースケ! じいちゃんの占いはたまにしか当たらないから!」
「……はははは……」
ラビはシャドーボクシングを続けリュースケは膝ブルが止まらない。痺れを切らしたボスが二人纏めて車に放り込むと他のメンバー達も乗り込み始めた。
村や村人達と家族を目に焼き付けつつ最後に車の荷台に乗り込むティラ。それを確認したボブが車内の面々に言う。
「それじゃあ出発しても構わんか?」
ティラが運転席に言う。
「よろしく頼む!」
アクセルを踏むボブ、車が進み出した。涙を流しつつも決意を決めた顔をするティラ。
本部へと車は進んでいった。
第二章完! 第二章完! 第二章完!!
次回は三日後同時刻の予定です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今後の執筆の励みになりますので是非とも評価をよろしくお願いします。




