第一七話 ボーン・エンカウンターズ
ティラ達の案内でリュースケ達は療養所に向かい出した。
村を囲む森の中をティラとティーレの案内で進み続けるラビ達、本当に療養所にいた軍人達の仕業なのか分からず困惑が拭えない。リュースケは必死に霊が現れないように心の中で祈っていたが、周囲からはそれが丸わかりな程に動揺した様子だった。
リュースケのビビり具合を心配しつつ、ティラがラビに尋ねた。
「そんなに療養所が変に感じるのか? 覚えてる限りじゃいい人達だったぞ? なぁ、ティーレ?『まあ確かに……』だろ? もしかして療養所は関係ないかも?」
ラビが答えた。
「軍服の霊という目撃情報がありますからねぇ……事前情報が少なかった以上は現地で集めるしかないですから」
先程まで不機嫌そうな顔をしていたティーレが真剣な表情で尋ねてくる。
「……悪さをしない霊ってのもいたりするのか? もしいたらレックさんにティラはまた会えたりするのか?」
ラビは困った顔をしながら答える。
「まず悪さをしない霊はいません、この世に現れる幽霊は全て悪人ですわね……女神様の教えでありますでしょう?〈善人は天国で幸せに過ごし、悪人は地獄で罰を受けて過ごす〉と……それを無視してこの世に居る時点で悪人確定ですのよ……」
「……もしかして未練がある良い霊もいるかもしれないだろう?」
「偉い方が同じ事を女神様に聞いたらしいですの、そしたら〈善人は未練があってもずっと天から見守っている〉とのことですわ」
「もしかして地上に来て改心した霊だって……」
「以前に〈死者との共存〉なんて事を言い出した団体が居たらしいですの。実際改心したと思われる霊達と円満な共同生活をしているように見えましたわ。その団体はどうなったと思います?」
困惑するティーレ、ラビが続ける。
「ある日、その団体に所属していた全員が無残に殺されてましたわ『まさか……』そう、その共同生活していた霊達の仕業ですわ。その団体全員の命と感情を喰らって強力な霊に成長していました。先輩聖女のお姉様達はそれをかなり苦労して退治したと聞きます……」
「そうか……」
残念そうにするティーレ、ラビが更に言う。
「以前、協力的な霊と共同退治活動をしていたチームが幾つかいたらしいですわ。最初は良い霊もいるなんて騒ぎになったらしいですが……少ししてその大半が全滅させられたみたいですの……ご想像の通り協力的だった霊達の仕業でした。生き残りもまだリハビリに苦労しているみたいで……それらを踏まえて組織は良い霊はいないと結論づけていますわ」
残念そうにするティーレ、ティラが励ますように言う。
「気にするなティーレ! 父ちゃんはきっと天国で見守ってくれてるさ!」
元気づけるようにティラが言う、ティーレが困惑しながら言った。
「じゃあ俺らの村を襲っている霊は……療養所の軍人達であいつらは悪人だった?」
「それが分かれば対処しやすかったですわね。でもこちらで事前に調べても普通の療養所みたいで……療養所ではなく刑務所とかなら理屈は分かるんですが……」
色々と疑問を感じつつ一行は進み続け、森を抜けるとその直ぐ先に廃墟があった。村からやや離れた所まで来ており人の足なら少し時間が掛かる場所に位置している。
周囲を見渡しながらラビが尋ねた。
「ティラさん? もしかしてここが……」
「そうだ……療養所の跡地だ……」
「分かりましたわ、これから探索に入ります! 何が起こるか分かりませんから警戒して下さいまし!」
ラビは廃墟の探索の指示を出す。
「一カ所を全員で調べきってからまた別の場所を、という感じに安全第一でやりますわよ」
「いや、分散した方が効率的だろう? あんた方はそのプロなんだろ?」
ティーレがそう言うとラビは答えた。
「いますのよね、そう言うアホって……『あ、アホッ?!』霊は姿を消して不意打ちかますようなクソカス連中ですのよ? 一体の霊を見たら二十体以上は隠れてると言われてますわ『そんなにか?!』ええ、そんな奴らに単独行動なんて真似したら袋だたきされるに決まってます、なんでそんな真似しなきゃいけねぇんですのよ『それは……』効率より安全第一ですわ!」
「あ、ああ……」
しぶしぶ納得させられるティーレ、ラビチームは警戒陣形を組んで調査を始めた。
チームで固まりながらその場所場所を移動して調べ続ける一行、ティラも共に手がかりを探す。ティーレはラビ達の様子を見張っている。
どこを見回しても瓦礫の山となっていて分かる事が少なそうに感じるリュースケ、それでも何か手がかりは無いかと調べ続ける。チラリと他の面々の様子を見るがリュースケと同じく手がかりは無さそうな様子だった。
そんな中でボブが大声で全員を呼んだ。集まる一同にボブが言う。
「こいつを見てくれ、こいつをどう思う?」
指さした先には損傷が軽い病室跡があり、そこにある扉を持ち上げて一同に見せて言う
「おい、ティラとティーレ。確かに此処は療養所だよな?『うん!』『確かにそう言っただろ?』ならおかしい、なんで扉にこんな頑丈な錠前が着いておるんじゃ? それに……やはりか……『どうしましたの?』窓が小さすぎるし高い位置に設置されておるように見える、それがどの部屋でもそうなっておるな……普通の療養所ならこんなことする必要なかろう?」
ボブに言われてユミルも気付いた。
「確かに……それに見たところやけに頑丈な造りになってるわ……療養所にここまでする必要あるかしら?」
療養所がきな臭くなってきたことに一同は緊張が走る。
そしてグレイが聞いてきた。
「その……言いにくいんだけど……心が壊れてしまった人達の為の場所だったからこんな設計なんじゃ……」
ボブが答えた。
「ワシも一瞬それを考えたぞい。だったらハッキリと資料や周辺住民にそう説明しているもんじゃろ? でも資料もティラ達もそうじゃ無かった『オラ達は聞いた事無いな』じゃろ? そういう事情で扉に鍵を設置するのは分かる、でも全部の部屋の窓を小さくする必要も、それを高い位置に取り付ける必要もなかろうに。窓枠に鉄格子をつければ十分じゃ。そもそもそういう連中こそ外の新鮮な空気と十分な太陽の光が必要じゃろがい」
ユミルが思い出しながら続けて言った。
「ワタシ、前に医療部隊にいたんだけどね? 聞いた話だとそういう精神病棟は大きめな町から程良く離れている、けどいざとなったらすぐに人が駆けつけられるような位置に建てられるものよ……ここだとティラ達の村に近すぎるし一番近くの大きな町からは遠すぎるわ……」
ボブが扉を見つめて更に気付く。
「おい! この錠前……只の飾りじゃ……何なんじゃ一体……」
ボブの発見で療養所の謎が深まる、一行はボブの発見を頭に入れて調査を再開した。
その様子を村長の仲間の男が森の中から見つめていた。
更なる情報を求めて他の場所を懸命に探し続ける一行、手がかりが見つからず時間だけが過ぎていく。
そんな中、一行がいる場所とは違う所の物陰から物音がした。少しチビリつつ戦いに気持ちが切り替わるリュースケ、警戒する他のメンバー、そしてラビが声を掛けた。
「そこにどなたかおられますの?! おられましたら返事をして下さいまし!」
返事は無い。ラビは仲間達に目配せしてから足下にある瓦礫を掴み、干渉魔法を掛けてそこに全力投擲した。
ぶつかった瓦礫同士が砕け散ると軍服を纏った骸骨が現れて悲鳴を上げながら消滅した。
それを皮切りに一行を囲むように軍服を着た骸骨兵の集団が現れる。それぞれの手には骨から作られたと思われる武器が握られており、一行に強烈な殺意をぶつけてくる。
動悸が止まらない中でリュースケは拳を握りしめて戦闘態勢に入る。他の仲間達も同様に戦闘態勢に入っている。ラビチームはじりじりと動いてティラとティーレを守るように囲むとラビは二人に言った。
「お二人はワタクシ達の後ろに居て下さいまし! 行きますわよ!」
骸骨兵が飛びかかってくる。
武装に干渉魔法を掛けたラビチームは幽霊達との戦闘に突入した。
「何じゃあァッ! そんなもんかァッ!」
ハンマーを振り回して骸骨兵を迎え撃つボブ、攻撃自体は当てられているが受け身や回避が上手く消滅までは至らない。
「随分とッ! 温い攻撃だねッ! はッ!」
攻撃を躱しつつ反撃を加えるグレイ。回避や攻めるための動きは手強く感じるのに攻撃自体はやる気を感じられない動きを骸骨兵達はしてくる。グレイだけで無く他のメンバー達も同じ事を感じつつ対処し続けていた。
そんな中、リュースケは初実戦でそのことに気づけない。とにかく訓練で繰り返したことをこなそうと必死に動き続ける。
リュースケに迫る一体はショートソードを振り下ろす。
回避のギリギリまで剣の軌道を追うリュースケ、相変わらず心臓バクバクで盛大に漏らしていたがそれでも目を離さない。
タイミングが来た。
当たりそうな瀬戸際で斜め前に避けつつ兵に迫ると右手を握り閉めて眼前の兵に拳を伸ばした。相手の霊は素手で攻めてきたリュースケを侮り、回避しようとせず空いている手で殴り掛かってくる。
クロスカウンターのような状態になる両者、しかしリュースケの方が早く動けていた事が幸いして相手より先に拳が届いていた。すぐに消滅した兵、その様子を見た他の兵達に動揺の様子が見える。その隙をラビ達は逃さず攻勢に転じる。
攻守が逆転した時、骸骨兵達は突如として霧散してしまう。突然の変化に困惑を隠せないラビ達、息を整えつつ周囲を警戒し続けるが何も起こらない。
少ししてからラビ達は警戒を解いた。直ぐさまラビが全員に声を掛ける。
「ご無事ですか? もし負傷されましたら言って下さいまし! ティラさん、ティーレさん! 大丈夫でしたか?」
「オラは大丈夫だ……」「俺もだ……」
「良かったですわ……少し休んだら一旦村に戻りましょう! 暗くなるといけませんわ!」
幸い負傷者は無く、息を整えられた一同は村に戻り始めた。
帰り道にラビがティラ達に尋ねる。
「村で見た軍服の霊はアレでした?『ああ……』『確かにあんな軍服だったが骸骨だとは知らなかった』なるほど……ティラさん、当時はあんなにいっぱい軍服の方がいました?『いや、軍服を着た人なんてほとんど居なかった、大体は患者さん達で残りはお医者様達しか……』分からないことだらけですわ……」
困惑するラビ、チームメンバーやティラ達も交えアレコレと考察するも結論が出ない。そうこうしているうちに村が見えてきた。
「何者だッ?!」「おぉうっ?!」「じいちゃん!」
突然、その場で今まで見なかった地竜族の面々が姿を現した。
急な大声にリュースケは変声を出しながら飛び上がる。警戒しているその地竜族の面々に対してティラは事情を話した。事情を聞いた彼らは警戒を解いて挨拶してきた。
「これはこれは……遠路はるばるすみません、ティラとティーレの祖父です。村の為にありがとうございます」
村長達と違い手厚い歓迎をするティラの祖父や仲間の者達。
彼らと村へと帰還する事になり、話を聞くとティラの祖父達は村周辺の見回りをしていたと話す。
リュースケはティラの祖父でこうなのだから外部を警戒しているのは村長とその一味だけだと改めて思った。そしてなぜ村長達は警戒しているのだろうと疑問に感じる。他のメンバー達も同様の事を感じたのか少し考えているような表情をしていた。先程の霊達の正体も判明せず一行はモヤモヤしたまま足を進めた。
そして村の入り口が見えてきた。
入り口で村人達が手を振ってくる。ラビも元気いっぱいに手を振りつつ一行は村に帰還した。
身長をもう少しだけ伸ばしたいと思うこの頃です。
次回は三日後同時刻に投稿予定です。
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