第一八話 レック/ザ・クソドラゴン
ティラの祖父達と合流した一行は、何やら村が騒がしくなっていることに気付く。
中に入ると広場にたくさんの料理が並べられ、周囲も飾り付けられていた。
村長夫人がアレコレと指示を出し、女性陣と子供達は食事を作り続け、村長と仲間の男達を除く男性陣もそれを手伝っている。奥の方では村長達が不機嫌そうな顔をしながら酒を飲んでいた。
子供達に手を引かれ中央に向かうリュースケ達、彼らに気付いた村長夫人が言った。
「お帰りなさい! 簡単な物で悪いけど歓迎の宴会を用意させて貰ったよ! しっかり食べて飲んで力を蓄えておくれ!」
「まあ! よろしいんですの?! ではお言葉に甘えていただきますわ! でもすみません……お酒だけはワタクシ達は控えさせて貰いますわ……その分、たくさん喰らわせて貰いますわぁっ!」
「えっ? そうよね……酒はだめよね……」
酒キャンセルをくらいションボリするユミル、当然でしょ?とグレイとリョウコに突っ込まれつつテーブルの前に向かう。飲み物を渡されて今か今かと待ちわびる村人達を前に、ラビが療養所での出来事を村人達に知らせる。
緊張した顔をする村人達に万が一に備えて警戒するように注意をした後、ラビは乾杯と大声で言った。
宴会が始まり、村人達は陽気に歌ったり踊ったりとリュースケ達以上に楽しんでいる様子だった。ユミルは必死に酒の誘惑に耐えつつ宴会を楽しみ、ラビも口をリスのように膨らませながら食事を食べる。ライガーは村の男達となぜか猥談で盛り上がり、チャールズは寡黙に食事を続ける。ボブは村の竜衣装職人達と何やら話し込み、リョウコとグレイは子供達にアレコレと質問をされながら食事をしていた。
リュースケも目の前に山のように積まれた肉料理に夢中で食らいついていた。村長夫人の秘伝のミックススパイスをよく揉み込み、竜族の火炎魔法で一気に鍋ごと焼くことで出せる味だった。噛めば噛むほどジューシーな肉汁が溢れ、それがスパイスと混ざり合うことで凄まじい旨さとなっている。
肉料理を頬張り続けるリュースケ。そんな中ティラが話し掛けてくる。
「どうだ? 喰ってるか?『はい! 美味しいです! この肉料理は最高です!』だろ? 叔母さんの肉料理は最高だろ『何の肉なんですか?』ん? トライホーンラビットだぞ?『それって珍しいやつじゃ?』それは二本角の方、こいつは三本角のやつだからそこら中に巣があるぞ」
そのうち四本角のウサギまで現れそうな予感がするリュースケ、そしてウサギ肉を食べていたことに驚きはしたが美味しいので気にしないことにした。そしてティラに尋ねた。
「それにしても村の皆さん、すごいテンションが上がってますねぇ」
「そうだな……こんな宴会開くのも久々だからなぁ……叔父さんが村長になってからやけに外部との関わりを制限しててな? 行商の人達もすぐに帰しちまうからなぁ……それに幽霊騒ぎで皆どんよりしてるから良い気晴らしになってんだと思うぞ?」
村全体で宴会を楽しんだ後はリュースケ達も片付けを手伝い解散となった。
村の中に移動させておいた車に戻るリュースケ達。寝る準備を済ませた後、チーム全体で今回の事件の整理と考察をする。
療養所が関係していることは骸骨兵の襲撃から分かっているが詳細が分からない。そもそも骸骨兵達は何者の霊なのか、狙いは何なのか、不明な点が多かった。あれこれ考える一行だが答えが見つからない。
埒が空かないこともあり次の日に備えて各自が寝袋にて休息に入る。
夜が更け、深夜を過ぎたくらいにそれが起こった。
「「「ああああああああぁぁぁぁああああぁっっ!!!!!」」」
村中から悲鳴が響き渡った。
直ぐさまリュースケ達は起き上がり村の中央に向かう。そこには悲鳴を聞きつけた村人も集まっていた。すぐに事情を聞くラビ。いくつかの家から男達の悲鳴が聞こえてきたらしい。ラビ達と村人達は手分けしてその家々に向かう。
ラビとリュースケ、チャールズが向かった先には腹部から血を流した男が妻に必死に介抱されていた。直ぐさまラビは治癒魔法を掛けて容態を安定させる。他の面々も同様の状況だったらしく、直ぐさま応急処置と治癒魔法を掛けて怪我人は村の広場に集められた。
集められた怪我人にリュースケ達は必要な治療を施していく。全員が重傷だが幸い命に別状は無かった。突然の事に村人達はかなり動揺していた。そんな中リュースケ達は怪我人全員が村長と連んでる男達の一部であることに気付く。
しゃべれそうな一人に話を聞くラビ。その男が答えた。
「夜中……寝てたら急に寒気がしたんだ……それでふと瞼を開けたんだ。そしたらっ! 軍服を着た骸骨が武器を振りかざしてきたんだ! 慌てて避けようとしたんだが間に合わなくて……なあ、村長! この人らに全部話そう! このままじゃ本当に命に関わる!」
険しい顔をして様子を見守っていた村長、その口を開いた。
「何を言ってるんだ? お前は怪我をして混乱しているんだ。とにかく休め『でもっ!』休めと言ってるだろうっ!」
村長の異様な雰囲気に静まりかえる周囲の面々、明らかに村長達は何かを知っている様子だった。
ラビがすっと立ち上がり村長に近づく。ちらりと見えたラビの表情にこの後の行動の予測が付くリュースケ、いいのか?と仲間達の方を見ると全員が小声でそのままと言う。
村長が近づいてくるラビに言った。
「お前達が来てからこんな騒ぎが起こったんだ。日が昇ったらでていっグッ!」
村長の首を掴み地面に押し倒すラビ、そのまま吠えた。
「知ってるコト全部話せコラァッ!『お前っいきなり何をっ!』うるせェッ! 大けがした奴らが大勢居るんだッ! ホントのこと喋れオラァッ!」
空いた手で地面を殴り付けて大きな穴を作るラビ、負けじと村長も言い返す。
「お前のような雑魚など竜族の敵では無い!」
「上等だよッ! てめぇの顔を潰すのが先か! アタシが殺されるのが先か! 実験だよッ! 実験ッ!」
躊躇なく顔面の、しかも人中に拳を叩き込むラビ。それを何発も打ち込んでいく。
ラビの豹変にドン引く村人達、ああやっぱりなと思うリュースケ達、そして最強の竜族といえど反応速度には限界があるんだなと思いつつ様子を見守った。
辛うじて顔の原型が残っている当たりで心が折れた村長は口を開いた。
「昔の話だ……戦争中、兄のレックは俺を含む村の同世代の男達の大半を率いて荒れ狂っていた……俺たち竜族こそが世界を支配するべきだと考えていた……でも実際はそうじゃない……だから此処の竜だとはばれない場所にある村や町を襲う事を繰り替えしてそのモヤモヤを発散していたんだ……」
思わぬ犯罪行為に驚きの顔を浮かべる一同、村長は続ける。
「俺たちは暴力をぶつけることが楽しみになっていった……そして村の近くに療養所が建てられた。その時から親父達が俺たちの動きを怪しがってな……しばらく思うように動けなくなった、そんな時にティラが療養所に遊びに行っていることを知ったレックは……ティラが療養所の連中に誘拐されたことにすれば問題なく暴れられると考えた。俺たちはその案に賛成して計画を細かく詰めていった。そして計画当日、ティラは予定通り療養所に向かった。後はレックがティラが居ないと騒いで俺たちで探すふりをしながら療養所に合流して暴れる算段だった……」
「そんな……オラのせいで……」
へたり込むティラ、村長の話は続く。
「でもっ! レックの野郎! 我慢が出来なくて一人で療養所に攻め込んだんだ! 俺たちが療養所に着いたときにはもう爆発していて療養所の奴らに追い詰められていた……俺たちはその光景に動けなかった……レックは最後の力を振り絞ってやっと相打ちに持ち込んだ……」
「そんでどうした……」
ラビの問いに答える。
「俺たちは村で一番強いレックが殺されたことに動揺した……外には俺たちを追い詰める存在がいる事を初めて実感した……同時に俺たちが荒らし回ったことが知られれば何をされるか分からなくて怖くなった……だから外との関わり極力避けてこの事を他に知られないように隠し続けた……」
「あんた……」
「見損なったよ父さん……」
「こんのぉっ! 馬鹿息子共がぁっ!」
村人達は軽蔑のまなざしを村長一味に向ける。ラビが村長に尋ねる。
「なるほどな……療養所の連中の復讐だとお前らは思ってる訳か……少なくとも殺された連中が悪人でも無い限りは復讐しにこねえよ、他に何かあるか?」
「そ、それは……」
村長が言い淀んだ時だった。
「ガアアアアアアアァァァァァッ!」
雄叫びがラビ達の背後から響き渡る。
直ぐさま振り返る一同、その先では一体の地竜がこちらを目指して走ってきていた。村長が言う。
「レッ、レック?!」
「父ちゃん?!」
周囲の建物など一切気にせず破壊しながら突き進むレック、ティラとティラの祖父が声を上げる。
「よせ! レック!」「父ちゃん! やめて!」
二人の声など気にせず止まらない。異変に気付いたリョウコが叫ぶ。
「チャールズ! 上!」
「クっ……」
チャールズの頭上から大量の槍が降ってきた。慌てて避けるチャールズ。リョウコは魔法を発動させて槍を吹き飛ばす。それを皮切りに大量の骸骨兵達が村の周囲に出現してくる。
リュースケ達に突進していたレックは突如として方向変換して近くの骸骨兵に襲い掛かった。兵達は別れて片方はレックに、もう片方はリュースケ達目掛け襲い掛かってきた。
「アタシらが押さえている間に避難を!」
「分かった! 皆の者! こっちじゃ!」
前村長の指示で避難を始める村人達、その間ラビ達は兵を進ませないように足止めを始めた。
「ぬおっ?! ふんっ! なんでコッチにばかり?!」
昼間の時よりも攻撃の精度が上がり、リュースケに集中して兵達は迫ってきていた。
グレイはその状況に昼間の戦闘での違和感と合わせてつぶやいた。
「やっぱり……昼間の動きは僕等の威力偵察だったか……でもっ!」
ラビチームは連携をしつつ後ろに行かせまいと兵達の邪魔を続ける。リュースケも反撃は諦めて回避に専念して敵の注意を引き続ける行動に切り替えた。
一方、レックに襲い掛かった骸骨兵達はレックと互角の戦いを繰り広げていた。骸骨兵は数と連携で、レックはその大きな体とパワーを駆使して戦いを続ける。
「避難が終わったぞッ!!」
ティラが後方で叫ぶ。それを聞いたラビ達は攻めに転じようとする。
しかし突如として骸骨兵達はいなくなり、レックも兵達を追うように消えてしまった。
困惑するリュースケ達、警戒を続けるが追撃は無くひとまずは大丈夫だと判断する。それからすぐに村人達と合流して被害確認を行うが幸い怪我人は無しとの事だった。
戦闘で荒れてしまった村の光景を見て村人達は今後を話し合う。
リュースケや他のメンバー達も霊への対策をどうするか考えていた矢先、ラビは再度村長に近づいた。
美味いチャーハンが食べたい……
次回は三日後同時刻に投稿予定です。
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