第十二話 なあ……ハグしようや……
ボスと対面を果たすこととなったリュースケ、ボスの部屋の扉が開かれた。
先にラビとライガーがボスの部屋に入る。
「ただいま戻りましたわ!」
「任務は無事完了しましたボス」
二人はボスに挨拶をしつつ報告を始めようとしていた。
慌てて中に入るリュースケ、ボスの全貌が明らかになる。
「ハァ~イ! 坊やはどなたかしら? ラビ達の知り合い? 取りあえずハグしとく?」
太陽のような明るさと笑顔でリュースケに近づく美しいエルフの女性。
透き通るような長くきれいな白髪、真っ赤な瞳、無駄な脂肪が一切無く引き締まった身体、体中に走る多くの傷跡、ここまでは普通だった。
しかし格好が衝撃的で、ラビ達の言っていた意味を理解したリュースケ。
黒く輝くビキニアーマー、手足にはゴツい鎧を装備し、黒のロングコートを身に纏っていたからである。正直、パッと見は変態みたいな出で立ちだった。しゃべり方やら雰囲気やらが陽気な外国人のお姉さんそのもので余計に混乱させられる。
色々と情報過多で固まるリュースケ。
「あら? 坊やが固まっちゃったワ! どうしましょ?!」
「ただボスに驚いているだけだと思いますわよ」
「分かるぞ少年……」
「それでこの子は?」
「今回の件と併せて説明しますわ!」
ボスに今回の城の幽霊退治を報告するラビとライガー。
最初の笑顔はなりを潜め、真剣な面持ちで報告を聞くボス。リュースケの話に入ってくると驚愕の表情を浮かべていた。
最後まで聞いたボスが言う。
「分かったワ! 二人ともお疲れ様! 後で貴方達のチームには報告書を出して貰うからよろしくネ!」
「終わりましたわ~」
報告を終え脱力するラビ。
ボスが続けた。
「それでラビ達が貴方を連れてきたのネ! 事情は分かったワ!」
そしていきなり頭を下げるボス。
「まずは民間人である貴方を幽霊退治に巻き込んでしまい申し訳ありませんでした。そして退治に協力していただき誠にありがとうございます」
急に先程の陽気さは消え失せ、組織の長としてのしっかりとした謝罪と感謝を始めるボス。
リュースケは言う。
「そんな……俺もラビさん達がいなければ脱出出来なかったでしょうし、危ないところから何度も助けて貰いましたし……」
「そう言っていただき助かります……貴方の今後についてなのですが……異世界からやってきた、しかも幽霊を瞬殺できるスキルなんて前代未聞です。幹部達と会議を行い、貴方の今後を話し合って行こうと思いますのでそれまでは我々組織の寮にてお過ごしください。至急会議をしますので二日ほどお待ちいただきますがよろしいですか?」
「はい、よろしくお願いします!」
「ありがとございます……ふぅ……ほんとに大変だったネー! ラビ達を助けてくれてアリガトネ!」
陽気な喋り方に戻ったボス。いきなりリュースケに近づく。
「お礼のハグするネー!」
リュースケを抱きしめるボス。
リュースケはいきなりビキニ美女に抱きしめられ顔が真っ赤になる。只でさえ刺激的な見た目でなるべくガン見しないようにしていたのに急に至近距離に近づかれ、更にいい匂いまでしてきてますます赤くなる。
リュースケは直ぐさまボスから逃げだした。
「そんな急にハグしちゃだめですよ?! 僕だって男子なんですから! やらしい目で見ちゃいますって!」
「アラ! 照れてるノ~? 坊や可愛いネ~! じゃあラビと坊やとワタシでハグ~」
「分かりましたわ!」
ラビか駆け寄る。
「「ハグ~」」
サンドイッチみたいに挟まれてハグされるリュースケ。
「やめろって! というかライガーさんもいますよ!」
ライガーに飛び火させるリュースケ。二人は即答する。
「「ライガー(さん)はスケベだから……」」
「えっ……」
きょとんとするリュースケ、ライガーを見ると真顔で答えてくる。
「生き物はスケベだからここまで発展できたんですよ? スケベの何が悪いんですか?」
開き直るライガー、その潔さに憧れるリュースケ。
更に彼は続ける。
「それに俺はボイン至上主義ですからお二人はちょっと……」
部屋の温度が下がったように感じるリュースケ、チラリと見ると確かにラビは控え目、ボスはラビよりも更に平たいお胸様をお持ちだった。
「ライガー、明日はワタシと模擬戦決定ネ~! ラビもドウ?『お供しますわ!』ヨシ!」
据わった目で言い放つボスとラビ、ライガーは冷や汗まみれである。
「ソレジャ! ライガーは坊やを騎士寮に案内よろしくネ~! ミンナ、お疲れ様ヨ~……ライガー、明日の朝、鍛錬場の前に集合して下さい、遅刻厳禁ですよ……」
「ひゃい……」
それからボスに別れを告げて男子寮に向かうリュースケとライガー。
部屋を出た時からライガーは死刑宣告を受けたかのような顔をしながら案内してくれている。ラビは途中で医療棟に向かい他のメンバーの様子見兼自分も手当てを受けるとのことだった。
先に寮に入り、すれ違う者達からは何者だという視線を受けつつ中を進む。
とうとうある部屋の前に到着する二人。
「ここが俺たちのチームの男子部屋だ。ボブは元々自宅暮らしだからな、他と違ってスペースに余裕はあるんだ、気にせず使ってくれ」
二段式ベッドが二つに、大きな長机も二つある部屋だった。
就寝の準備を始め、それが終わると今度はライガーに敷地内を案内してもらうリュースケ。食堂や医療棟、研究棟、先程ボスに会った本棟などを案内される。なお、鍛錬場の前を通ったときだけライガーは元気を無くしていた。
大体の案内が終わるとライガーと共に食堂に向かうリュースケ。
野営とは違うしっかりとした食事に涙を流しながら味わい、腹を満たした後にライガーは医療棟で検査と手当てを受けるとのことで途中で別れて部屋に戻る。
静かな部屋で一人ベッドに横たわるリュースケ、強烈な睡魔と疲労が来る。
この濃い二~三日の出来事を振り返りながら深い眠りについた。
それからリュースケはボスからの連絡があるまでの二日間をほとんど眠って過ごすことになる。ラビ達は眠り続けるリュースケを心配して医療スタッフに診てもらうが、ただの疲労との診断を受ける。リュースケを見守りつつ、各自が戦いの疲労やけがを癒やして過ごした。
リュースケがボスと会った翌日、珍しく鍛錬場に姿を現したボスと顔が青ざめたライガーとの模擬戦が行われた。
ボスの苛烈な攻撃に悲鳴を上げながら逃げ回るライガー、ラビも合流しひたすらに追い詰められる。更にラビから話を聞いたチームの女性陣が合流してズタボロにされるライガーだった。
模擬戦後はボス直々にトレーニングが課されライガーはひたすらそれに励まされる事となる。
一連の流れを見ていた他の男性陣は女性への接し方について考えさせられたとのこと。
リョウコ、チャールズは医療棟で短期入院となる。回復魔法でもフォローしきれないダメージを受けている可能性があるためであった。
きっかけはチャールズだった。
医療棟での検査の後にけがの治療をしようとした所、彼は突然倒れ込んでしまう。直ぐさまスタッフが治療に入り、処置が完了するがしばらくは目を覚まさなかった。医師はダメージや疲労によるものだろうと診断する。チャールズは治療の一日後に目を覚ますが、顔色が悪くしっかりと休まさせられていた。
彼の件を受けて、同じくもろに王の攻撃を食らったリョウコも念のため入院となった。その間リョウコはこれ幸いとため込んだ魔法書を読みふける。
ボブは整備工場で魔導車の整備を終わらせた後、愛する妻が待つ自宅に帰還した。
妻の手料理に舌鼓を打ち、しっかり休息する。翌日からは妻と手をつなぎながら町中に繰り出し、バカップルみたいな過ごし方をして二日間を過ごしていた。
ユミルはライガーを懲らしめた後、酒場と競馬場を何度も往復して過ごしていた。
まずは酒場できつい酒を飲み、酔いが少し落ち着いたら競馬場に繰り出し勝負する。レース後は負けた場合はやけ酒に、勝てれば祝い酒という具合にまた酒場に向かう、そんな酒カス&ギャンカスなサイクル生活を送る。途中、イチャイチャしているボブ夫婦を見かけて精神的に大ダメージを負いつつ、酒とレースを楽しむ二日間を過ごした。
グレイはライガーを懲らしめた後、町中に繰り出しのんびり景色を眺めながら散歩していた。
あまり通らない道や店に足を運び、新たな発見をするというルーティーンをしてから鍛錬場に向かい、ひたすらに鍛錬を積む。夕食後は酒場で酒瓶を抱きしめ酔い潰れているユミンを回収して、夜の散歩を楽しみながら寮に帰り眠りにつく。そんな二日間を過ごす。
ラビはライガーのお仕置き後はボス直々に手ほどきを受けて鍛錬に励む。鍛錬後は腹一杯に飯を食らい少し休み、その後は本部の敷地内にある一部有志が作った農園で農作業に精を出す。その後に夕食をしっかり食べて眠りに着いた。そんな二日間を送っていた。
二日後……
「う、う~ん……」
「やっとしっかり目覚めたか……」
目をこすりながら起き上がるリュースケ、安心した様子のライガー。
大きな腹の音が鳴り響き、直ぐさま食事に向かう。この二日間はトイレを半分寝ている状態で済ませ、食事もほとんど取らなかったリュースケ。すさまじい食いっぷりで食事を取り、しっかり風呂に入り、ようやくいつものリュースケに戻る。
「少年、ボスから連絡が来た。本部棟の前のラビ様と合流して結果を聞きに行くぞ」
「分かりました」
ライガーと共にラビに合流するリュースケ、ボスの部屋に向かう。
自分はこれからどうなるのか不安になりながら進むリュースケ、そんな不安を感じ取ったのかラビが横に並び手を握って微笑む。
ラビに元気づけられるリュースケ。
そして部屋の前に到着した。
干支は全部ウサギでいいのでは?
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