第十三話 おかしい。こんな鍛錬は許されない
ボスに呼び出されたリュースケ、付き添いにラビとライガーが同行してボスの部屋に向かう。
ボスの部屋に入り、二日ぶりにボスと対面するリュースケ。
「元気にしてタ? それジャ、挨拶代わりのハグヨ~!」
逃げる隙を与えず抱きついてくるボス、なぜかラビも抱きついてくる。
「ちょっ……やめて下さいって! ラビさんも何してるんですか!」
「なんだかリュースケさんにくっつくと落ち着くんですの~」
女性達に抱きつかれて悪い気はしなかったリュースケ。
それはそれとして話が進まないしドキドキして落ち着かないので無理矢理二人を引き離す。ボスとラビはがっかりとした顔をしつつ元の位置に戻った。
リュースケはボスに尋ねた。
「そ、それで自分の今後は?」
真面目モードに入ったボスが答えた。
「幹部達との会議の結果、貴方には二つの選択肢が用意されました。私としてはほぼ一択ではあるんですが両方お伝えして選んでいただきます」
そしてボスが説明を始めた。
「最初はこの世界の常識やルールを学んでいただき、その後は組織から離れて町で生活してもらう案もありました。異世界から、しかも子供を放り出すなんて真似は許せなかったので却下にしました。ですのでその点はご安心下さい」
実はその点を心配していたリュースケはひとまず安心する。
ボスが続けた。
「先程言った二つの選択肢のうちの一つはこのまま組織に留まってもらい、貴方のスキルを研究して今後の退治活動の発展に協力して貰う案です。もちろん人体実験だとか解剖だとか非人道的なことはしないし、させないのでご安心を。私としてはこれをおすすめしますね。本部勤めで安全ですし私の目が届きますから」
確かに安心安全な案だった。
ボスが二つ目の説明を始めた。
「二つ目は正直、私としては反対なのですが一応言います。最近、幽霊がらみの事件が多発しています。人手が正直足りません。報告通りなら貴方のスキルは幽霊相手にかなり強力です。ですからこのままラビチームに加わり幽霊退治に行ってもらう案です。ですが貴方は巻き込まれた民間人で子供で異世界人です。この世界の問題に命を賭ける必要は無いはずだと私は思います。出来れば一つ目の選択を選んで欲しいと一人の大人としては思います」
説明を終えたボスはリュースケを見つめる。
ボスの提案を受けてリュースケは考える。
「……(ボスの言うとおり、このまま本部で研究していた方が絶対に安全だろうな。漏らす心配も無いし、食事も美味しいし他のチームの人達も感じが良いし……でもな……自分の力が村の人達みたいなあの笑顔に直接繋がるのなら……)……ョシ!!」
リュースケは結論を出してボスに言う。
「自分をラビさんのチームに加えて下さい! 正直、怖いしおっかないですけど……自分のスキルが他の人の笑顔に直接役立つのなら!!」
「本当に良いんですか? 命の危険も伴いますよ?『構いません』分かりました……いつでも研究の方に移って貰って構いません、そうしたくなったら言って下さい。それと今後は異世界に関する情報収集も行いますので何か分かれば連絡します『お願いします!』」
ボスは確認を終えるとラビ達に言った。
「聖女ラビおよびラビチーム全員に命じます。まずはリュースケの身体検査、それからは戦闘訓練と座学を施すように。本来なら養成所から鍛えて行きたいところですが彼は魔法が使えません。養成所の訓練方法とは合わないでしょう……ですから彼が命を落とすことの無いように貴方達が直接しっかりと鍛え上げなさい。関係各所には私から連絡を入れておきます」
「「了解!」」
真面目モードから切り替わったボスが言う。
「これからよろしくネ~! いつでも遊びに来てイイからネ! それジャ、早速身体検査からハジメルヨ~! ラビ達はスタッフ達が変な事しないように見張ってネ!」
「リュースケさん! 行きますわよ!」
リュースケ達はボスの部屋を後にする。
なお、別れ際にボスとラビからハグされそうになったが本気で動いて回避に成功したリュースケ。中々に動きは良いと感心するボスであった。
医療棟に向かう途中、入院中のチャールズやリョウコを除く他のチームメンバーとも合流して向かう事となった一行。
リュースケの今後が心配だったようでラビチームがリュースケの教育係に任命されたことを聞きやる気を出す。早速カリキュラムを話し合いつつ医療棟にて検査が始まった。
基本的な身体検査から血液検査、尿検査などリュースケの世界でもやるような検査を受ける。その後は蛍光灯のような棒状の物で体中を照らされた。その最中に検査室の外ではラビ達とスタッフ達がざわついていた。
その検査が終わると何を騒いでいたかラビ達に尋ねるリュースケ。
近くのスタッフが説明してくれた。
「貴方が異世界人というのは本当だったことが分かりまして……あなたには”魔臓”がないんですよ、驚きです」
「”魔臓”?」
グレイが説明する。
「この世界には目に見えないくらいに小さな”魔素”というもので溢れているんだ。生き物や植物は魔素を体内で作り出して循環させて余剰分は放出している、その魔素を生み出す器官が魔臓だよ。体内の魔素を材料に空気中の魔素に干渉して様々な現象を引き起こすのが”魔法”なんだ。でもこれで納得したよ、体内で魔素が作り出されず循環されても無いからリュースケ本人に魔法が発動しなかったんだね……」
スタッフが言う。
「この世界の生物には必ず魔臓があり、魔素が体内を循環しています。あなたにはそれが無いのでざわついたんです。回復魔法や回復ポーションは対象の体内の魔素に働きかけて身体の回復力を活性化させることで怪我の治療を行います。ですが貴方にはその働きかける魔素その物が存在しません、という事はそれらに頼らない方法でしか治療が出来ませんからくれぐれも怪我には注意して下さい」
リュースケが尋ねる。
「空気中に溢れているのなら吸い込んでいて体の中にあるんじゃ……」
「我々もそれは考えました。体内の魔素がひどく欠乏した際の治療法にそれと関連した方法をとります。しかしなぜだか何一つ無いんですよ、貴方の体内には……」
「えぇ……」
困惑するリュースケ、ラビが言う。
「良かったじゃありませんか! 分からないことが分かってすっきりしましたわ! これで鍛錬の方針が決められます! リュースケさんは回避能力と危機察知能力が高く見えますから、そこを徹底的に鍛え上げれば怪我の心配はありませんわ!」
ライガーが頷きながら言った。
「そうですね……回復魔法や回復ポーションに頼れないとなればそうするしかありませんな。相手の攻撃をひたすら避け続けて隙を見せたら触る、という戦法でいきますか。となると座学はユミルに任せるか……」
訓練方針を固め始めるライガー、ユミルが続けて言う。
「ある程度は教えられるだろうけど……う~ん……ワタシだけだと偏りがありそうだから他の皆も手伝ってよ?!」
頷く一同。
そして検査を終えて医療棟を後にする。
早速鍛錬場に向かう中、ライガーが言う。
「ではまずは体力測定から始めよう。君がどこまで、何ができるか把握したい」
「分かりました!」
測定が始まった。
測定終了後……
「う~ん……」
結果を基に他のメンバーと細かく方針を決めていく。
話し合いが終わるとライガーが言った。
「はっきり言わせて貰えば”民間人以上見習い未満”といったところだ『そうですか……』気にするな、最初は誰もがそんなもんだ。というか思ったよりも動けているなと驚かされたぞ?」
「あ、ありがとうごさいます……」
「まずは基礎能力向上の筋トレ、走り込み、グレイ考案のトレーニングを行う。グレイはシーフの役割でな? 君が目指すべき動き方や戦い方とほぼ同じなんだ。その後は……リュースケと呼ばせて貰うがリュースケの長所を伸ばしつつ戦闘経験を積むために我々としばらくは特殊な模擬戦をしてもらう」
「一体、何を……」
「ルールは簡単だ。まずは一対一で戦う。リュースケは一度でも攻撃を食らえば負け、逆に相手にしっかりと一度でも触れたら勝ち、そんな感じだ。もちろん模擬刀だったり威力を抑えた魔法を使うから大きな怪我の心配はいらないぞ」
「もしかして今から?」
「ああ! 今日はラビ様が対戦相手だ! いざとなったら我々総出で止めに入るから心配するなよ?」
リュースケとラビを残し、離れるライガー達。
リュースケの正面には戦闘モードに入ったラビが立ち塞がる。
「遠慮しねェで……かかってこいやァ……」
怖い笑顔を浮かべるラビ、漏らすリュースケ。
「コッチからァ……いくぜオラァッ!」
「ひいいいいぃいぃぃぃぃぃっ!」
轟音鳴り響くハードな模擬戦が始まった。
好きな仮面ラ○ダーはビ○ドです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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