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薄明を告げる鐘の音  作者: 桐谷瑞香
番外編 日常の穏やかなひと時
58/60

いつもと違う雰囲気 (300字SS)

 使い込まれた仕事着ではない、小綺麗なジャケットを羽織った彼。彼に誘われて来た場所は、普段入る食堂とは違う、眩い光で照らされている格式高い料理店だった。

 給仕に促されて、彼と対面するように椅子に座る。出てくる飲み物や食事を待ちながら、疑問を投げかけた。


「マチアス、どうしてこのお店に?」


 彼はあからさまに肩をすくめた。


「テレーズ、今日が何の日か、わかっていないな」

「え?」

「誕生日だろう、自分の」


 あっと声を漏らす。


「ギルベールさんに聞いていた通り、物事に集中すると誕生日すら忘れるんだな」


 かあっと顔が赤くなるが、彼はそれを微笑んで見ていた。


「俺が覚えていくから安心しろ。誕生日おめでとう」

「……ありがとう」


2024年5月、第17回 毎月300字小説企画参加作品。お題『椅子』。

本編終了後、テレーズ視点でのマチアスとのお話。

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