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薄明を告げる鐘の音  作者: 桐谷瑞香
番外編 日常の穏やかなひと時
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想いは贈りものに乗せて (444書)

 終業後、先輩が紙に使い慣れたペンを走らせていた。

 俺は先輩に挨拶をしようと近寄るが、書くのに夢中なのか気づかれなかった。


 書くのが嫌いな先輩が珍しく熱心に文章を綴っているのは、おそらく大好きな妹さん宛ての手紙だろう。日常や仕事のことなど、色々と書いては送っているらしい。

 今日は何か話題になることはあっただろうか。

 町を巡回している中、ある店の前で先輩が足を止めたのを思い出した。



「マチアス、そこで突っ立って、どうした?」


 先輩が顔を上げていた。俺は慌てて半歩下がる。


「すみません、帰りの挨拶をしようと……」

「わざわざ悪いな。明日の便で急に手紙を送りたくなって」

「妹さんを思い出すような、万年筆がありましたものね」


 先輩は目をパチクリした。


「その通りだ。成人したら贈ろうかなって思っている」


 にかっと笑うと、再び紙に視線を戻した。



 先輩が使っているペンは、都市に来るときに妹さんから贈られた品だという。

 高いものではないが、とても大切に使っていた。


 互いに想い、贈り合う姿は見ていて微笑ましいものだった。


2021年に開催された、尼崎文学だらけ(通称あまぶん)内の企画、「444文字程度で創作を投稿しよう!」参加作品。(通称444書)

2021年5月7日からのお題「文房具」で投稿したものです。

本編よりも前、ギルベール視点のお話。

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