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可憐な華でも、姫でもナイッ(仮)  作者: 桜雪りか
Ⅳ.英エリカ、中学3年生の真夏編
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【Side-Erica-】-4



 気を取り直して、宮間青春時代の淡い記憶を辿ってみると、あたしの初デートは高校2年の時だ。

 …誰よ今、遅いって言ったの?十分早いから!



 王道の映画館デート。確か、あれが最初だった。


 当時相手は、緊張からか、とてつもなく無口だった。あたしは性格上の問題か、逆に緊張し過ぎて一人でペラペラとお喋りが止まらなかった。



 家のエアコンがぶっ壊れて、氷が降ってきた話とか。コーヒーをコーラだと思って飲んでしまった時ってモヤモヤするよねとか。カップ麺を3分どころか、忘れてしまって10分以上放置してしまい、言いようのない敗北感を感じたとか。とにかく、いらんことばっかり喋ったことを憶えている。


 挙句、ジュースを飲み過ぎて後半ずっとお手洗いのことしか考えられなくなった。なぜ我慢したあたし。



(…完ッ全、黒歴史……。)



 恥ずかしい思い出のせいで気分が落ちては台無しなので、宮間青春時代の回想は今日はこれにて、強制終了。

 そうこうしているうちに、明日のコーディネートの準備ができた。有り合わせにしては頑張った方だと思う。



 一日くらい、ちょっとオシャレしたいのは乙女の本能である。

 決して脳内お花畑で乙女思考の持ち主、というわけじゃないけど、まだあたしにだって「憧れ」はある。特に、そう。この世界でならね。


 ……って、ガッツリ浮かれてんじゃねえか。



 ちょっと秒針の煩い壁掛け時計は、午前2時を過ぎていた。残業でも早々無い時間だ。

 本日二度目の何やってんだあたし状態を感じつつ、あたしはベッドの中でまたおさげ髪を引っ張って寝た。



***



 デート当日。

 女の子って、少し遅れて到着した方が可愛いってよく言うよね。



「あは…ははは……はは」



 遅れたのが本当に少しならば、……の話だ。


 目覚まし時計も、あの変な鶏も、大事な時には起こしてくれない。自業自得だってわかってるけどさ!

 お母様も、今日に限ってママ友会(という名のわが子自慢の会)に出かけてるらしい。



 っと…とりあえず或君に連絡しないと。

 寝ぼけた脳をブンブン!と振り払うように起き上がり、あたしは或君に電話をかけた。



 すると―――まさかの、コール一回目。



『―――もしもし、エリカっ…!?』


「ぁ…或君、ごめんなさい。わt『エリカ、無事なんだね…?どこも怪我は無い?事故に遭ったんじゃないんだね!?』



 説明する間も与えられず、すごい勢いで心配されてしまった。ああぁぁ……悪いことしちゃった。



「ええ、勿論。ごめんなさい私、お恥ずかしい…!寝坊してしまって」



 正直に簡潔に説明をするも、なかなか返答が無い。

 不思議に思って、「あの…或君?」と呼びかけると、数秒後に深い溜め息が返ってきて……。



『……よ、かった』


「ぇ…?」



 その震えた声から伝わる。心底心配してくれていたのだ、と。



『…ごめん。やっぱり迎えに行ってもいいかな』


「ぁ…ええ、わ、わかりましたわ」



 断れなかった。


 一度の寝坊でこんなにも罪悪感を感じてしまったのはおかしな話だが、そう思わざるを得ないくらいの何かがあったのだ。そういう〝空気〟だったのだ。




 ―――現代の日本国が舞台なこの世界には似つかわしくない、左ハンドルの外車が迎えに来た時は何事かと思った。でも、運転手付きのリムジンよりはずっとマシだ。


 それにしても。



「……」


『……』



 ……空気。重い、重すぎる。

 こんなはずじゃなかったのに、こんな事態を招いたのは他ならぬあたし。折角のデートがぁぁぁ!!あたしのバカバカバカッ。



『エリカ、こっちだよ。入って』


「ええ…」



 車内では一言も会話しなかったから、これが電話口以来の初会話だった。



 しかし、流石上流階級のお家。英家よりも小さいけど、外装は西洋の邸宅を思わせる程綺麗だ。

 ……だけど、そこで気づく。

 あれ?今なんて?あたしの聞き違いじゃなければ今の台詞、まるでエリカは初めてこの家に来たみたいだ。


 だが、そんな謎はすぐに解決することになる。



(もしかして、或君って―――)



 玄関を見るからに女性物の靴が並んでいない。もしかして、或君って一人暮らしなのでは?だからエリカは招かれたこと無かったのかな?


 そんな仮説を立てていたが、リビングに案内されて今度は確信する。

 生活感の無い家具は必要最低限の物を揃えているように見えた。



『座ってて。今準備する』


「ああっ、そんなに気を遣わないで…!」


『いいから、待ってて?』



 Oh……やっぱり。


 あの威圧感の塊である帝零司には言い返せるのに、彼は有無を言わせない見えない力がある気がする。

 考えたくないが、あの帝より大物説があっても無理な話じゃないよ。前からラスボス臭するもん。



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