【Side-Erica-】-2
『ふふっ。凜子さんたら、すぐ側にこんなにも面白い方が居ますのに…』
クスクスと愛らしい笑みを浮かべた絵鞠ちゃんはあたしを見て言った。って、あたしかいっ!
絵鞠ちゃん、あたしを観察していたのね。どうりでさっき、あたしを見て笑っていたわけだ。
それはさて置き、あたしは誰を観察しようか。
帝や陵だと残念ながら、夏休み中は接触困難だ。ただでさえ目立つ行動もできないし。
では、最有力候補のプリンスはどうだろう?
……いやいやいや!
そこまで出して引っ込める。
結局走馬灯は未だに流れて来ないので、接触は勘弁だった。
それに一瞬、「私の王子様観察記録~Rock on (はぁと)」なんて書き始める想像をしてみて、ゾッとした。ノロケになり兼ねない。これも後回しだ。
『あ~ん!ちょっと休憩しましょっ』
『そうですわね。メロン、戴きますわ』
あぁ!やっとメロンにありつける。戴きます。
……もぐもぐ。ん~、超甘い!デリシャス夕張ッ!
休憩で思い出したが、大体勉強会とかその類のを誰かの家でやると、そのうち遊び始めちゃったりするんだよね。お喋り大会とか。
実際にそうだった宮間青春時代を思い出す。
もはやくっちゃべるだけのお菓子パーティーになっちゃったよ。
でもまぁ、このメンバーなら、そんなことなさそう。
『……ねぇ、ところで夏休み中に三人でどこかへ遊びに行かない?』
『! 凜子さん奇遇ですわ、私も思っていましたの。水族館はどうかしら』
『絵鞠、本当に水族館好きねぇ~!私はやっぱり海に行きたいわ』
……うん、そんなことは全然あった。
この風習にお嬢様も一般人も国境は無いみたい。ちょっと安心した。
「じゃあ両方行きましょうよ!お二人の都合が合えばだけれども、もし……恋人とバカンスなんて予定がありましたら遠慮なく仰って下さいまし~!ほほほほっ」
正直二人について気になっていたことをまだ聞けていなかったから、それとなく挟む。
それは二人に、恋人またはエリカみたく婚約者がいるのでは?ということだ。
この際だから教えてもらいたいなぁ。ドキドキ。
可愛い二人のことだから、その可能性はエリカよりもずっと高そう。
『……恋人!?二人とも恋人がいらしたの!?やだ~!私だけ帝様、陵様って騒いでしまって恥ずかしいわ~』
『そ、そんなことないわ凜子さん!私なんて、まだ想い人すらいませんのよ!?』
そう言うと二人は顔を赤らめて照れてみせた。くっ、二人とも可愛い。攻略しちゃいたい。
冗談はさておき、この二人の純潔は必ずやあたしが守り抜くと誓います。
……いやいや、好きな人ができたら(相手によっては)邪魔はしないこと。ってノートにも書いておこう。
『そういうエリカさんは、どうなんですの?』
「ゑッ!」
自分で聞いておいて答えないわけにはいかないよね。
とはいえ、「つい最近初対面だった王子がいるよ!超絶王子なんだよ!」なんて興奮丸出しで言ってもノロケだ。
またノロケか。何してもノロケか。
「……ええと…こ、婚約者が…」
『婚約者!?エリカにはいたのね?先越されちゃったわ』
『本当だわ~エリカさんの家は早いのね』
……はれはれ?意外と、驚愕ってレベルの反応でもなかったみたい。
ここでカルチャーショックを発動したのかな。
『ズバリどんな殿方ですの!?容姿、身長、年齢、誕生日、血液型、出会いの経緯まで是非とも教えて頂きたいわ~!ご結婚の予定も!!』
『凜子さんったら。そんなに一度に聞いてしまったら、エリカさんが困っちゃうわ。そうね…まずは容姿、身長、年齢、出会いの経緯だけかしら!』
絵鞠ちゃん、それ凜子ちゃんが言ったやつのほとんどだよ。しかも容姿と身長くらいしかわかんないよ。
あとは、プリンスがどのくらいプリンスであったかの熱弁で誤魔化せる…だろうか?
「そ、そうね。容姿は優しい印象かしら」
『まあっ!素敵ですわね』
時々眼光に違和感を感じることを除けばね。
「身長は帝……ゲホッ。帝様に近いわね」
『高身長なのね!素敵~!』
二人ともバッチリ確認できる程接近しました。どちらも不可抗力です。
「出会いの経緯は……。長話になってしまうから、また今度お話ししますわ!あとはそうね、結婚の予定は全く決まっていないわ」
逆に決まっていようものなら白目どころじゃない。
そんな話を二人は、うんうん、と頷きながら熱心に聞いてくれる。
ハッ。
もしやこれって俗に言う〝恋バナ〟なるものでは?もしかしてもしかして、久々に〝リア充女子〟な会話をしているのでは!?
しかしながら、未だに戻らない或の記憶。なぜだエリカ。まさかとは思うが、彼を独り占めしたい!という願望の現れではないだろうか…?
嗚呼、教えてエリカ様ぁぁッ!
悶々とした気持ちをぶつけるように、ザクッ!とメロンにフォークを突き刺した。
『…? エリカさん、どうかなさったの?』
『あらっ、本当。エリカってば機嫌が悪いの?』
「ぁ…い、いえ。ちょ~っとばかり心が寒くなっただけですわ。お、おほほほほ!」
『あら!真夏なのに心が寒いだなんて、ウフフ。おかしなエリカさん』
あぁ!絵鞠ちゃん、こんなあたしを観察しないで下さいまし。嘘だから。冷や汗ダラダラで超暑いからッ!!
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