【Side-Erica-】-1
『おじゃましま~す』
『おじゃま致しますわ』
『いらっしゃい。エリカがお友達を連れて来るなんて初めてね~!』
そうだったの!?エリカ、初めてを奪ってごめんなさい。(語弊)
驚愕の婚約者、キラキラプリンス・駿河或。彼と薔薇色の一日を……正確には、帰国したばかりで色々忙しそうなので、或君とは夕方までお話をしてから帰って来たという、そんな日から数日が経った。
あたしはというと、とうとう絵鞠ちゃんと凜子ちゃんをお家に招いて、勉強会と言う名の女子会を開くことに成功した。
『こちらがエリカさんの部屋ね?』
「どうぞどうぞ、ご遠慮なくー!」
『おじゃまします……まあっ!』
因みにエリカの部屋は最近、あたしの趣味で侵食されつつある。
最初はシンプルだった部屋も、今や順調に甘い甘い花園へと化していた。
これまであまり話題に出さなかったが、あたしはどちらかというと、昔から女の子らしい可愛い小物とか綺麗なお花とかが好きなタイプだった。
露骨に趣味は晒さなかったものの、このラブリーな部屋を実現できたのは英家の財力のお陰。
財力があるのは今のうちだけの可能性が高いから、あるうちは大いに利用しちゃおうという魂胆です。でも保険として貯金も始めたいな。
『あらエリカさん!お花がお好きでしたのね!?』
『本当だわ!このお花はなんていうの?』
「ええ、この花は―――」
そして頻繁に学校の温室に行くようになったあたしは、花の世話が個人的な趣味になっていた。
本当は本格的に園芸を始めたいくらいの勢いだったり。
夏休み中、是非とも本郷さんに会いに行きたい。
最後に温室に顔を出したのはテスト前だったけれども、テスト勉強の傍らで本郷さんから教わった園芸の極意が頭から離れなかったことが、テスト週間最も心に残る思い出だったのは確かだ。
授業に「園芸学」があればやる気出るのにな~。
そんなにも園芸に興味があったなんて、実はあたし自身が一番驚いている。
なんてったって趣味は乙ゲー……の他に、あったとしても時々カラオケやグルメ巡りに行くことくらいで、園芸とは程遠いものだった。
「やっぱ、始めてみようかしら?」
『?』
『?』
「もう少し難易度を上げてみるとか…」
『エリカ?』
……ハッ!しまった、本気で独り言になっていた。
「ご、ごめんなさい?なんでもないの!課題始めましょう」
「独り言が増える=年取った証」だとかなんとか、誰かが言ったのを聞いたことがある。
でも、そんなはずはないと信じたい。だってまだ三十路じゃないもん。まだだもん若いもん。
白目になっていると、コンコンッと部屋のドアがノックされ、お母様が果物―――わあっ!メロンを持って来てくれた。これはまさか!
『みんな暑いのにご苦労様。二人共これ、エリカの好みだけどお口に合うかしら…?ゆっくりしていってね』
『まぁ!甘そうなメロンですわ』
『ありがとうございます、戴きますわ』
「お母様、ありがとう!」
このオレンジ色の輝きは正しく、まだ口にしていない夕張メロンに違いない……!ジュルリッ。
お母様が去った音さえ気づかずに、すっかり目の色を取り戻したあたし。もうあなたしか見えない眼差しで夕張氏に狙いを定め、スプーンを手に取った。
―――すると。
『あ、エリカさん。まず課題が一つ終わったら食べましょう?』
「……ふぇ?」
絵鞠ちゃんがとんでも発言をした。
凜子ちゃんまで『そうしましょ!』なんて仰る。冗談ポイは金魚すくいじゃ。
『エリカ、どうか目を白黒させないで頑張りましょ?…ムプッ』
『ファイトですわ、エリカさん!』
嗚呼……。新手のお戯れね?そうなのねッ!?
泣く泣く課題に向かうあたしを見て絵鞠ちゃんがなんとなく、ほくそ笑んだような気がしたが気のせいだろうか。
(さて…)
読書感想文と人権作文は後回しにするとして、国語プリントから始めようかな?古典は最近やったからか、少し自信あるし。
その次は計算問題を解いて、取り敢えず今日中に面倒なの二つは終わらせたい。
『―――ところでエリカ、この総合学習の〝身近な人を観察しよう〟のプリントは進んでる?』
「へ?何それ」
唐突に質問に出た凜子ちゃんの言葉であたしは初めてその存在を確認する。そんなのあったっけ!
『あらやだ!人を見る目を育てる為の学習になるんだから、ちゃんと書かなきゃ。…見れば減るもんじゃないし、私は帝様や陵様を観察したかったわ~』
『夏休みじゃなければっ』と嘆いた凜子ちゃんの気持ちがわかる。
確かにあの二人ならどんな生活してるんだか気になるよね。特に陵は私生活とか謎に満ちたままだ。
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