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可憐な華でも、姫でもナイッ(仮)  作者: 桜雪りか
Ⅲ.英エリカ、中学3年生の葛藤編
16/33

Ⅲ-4



 その1:脚立を使おう!


 ……ここからは精神的負担を減らす為に、あくまでもお遊び風にお送り致します。



 なんと、開始早々に有力な道具を見つけてしまった。皆の味方脚立君だ。

 「これなら!」とモチベーションが上がったところで、早速それを窓から下へ降ろした。



「……。」



 あっ、長さ足りない。どう頑張っても足りないじゃない。

 終わった、次探そう……。




 その2:何かを投げてみよう!


 向こうの窓へ何かを投げてみれば、もしも人が居たら気づいてくれるかもしれない。

 ちょっと試しに、身近にある物でやってみよう。



 あたしは可能な限り目を細めながら、おさげを結んでいるヘアゴムを取り、その1本を両手の人差し指にセッティングして窓の外へ向け発射してみた。

 なんとかギリギリではあったが、窓に当てることができたようだ。

 ……傍から見たらこの図は地味だけど、頑張れば音を出すまでいけるかも。



 ―――が、予想と反して2発目・3発目と、的を外してしまった。

 4発目で最後の1本だ。

 勢いをつける為に力いっぱいゴムを引く。



 ……言っておくが、これは物語クライマックスのカッコ良いシーンでもなんでもない。

 はっきり言って、窓のヘリに片足を置き、身を乗り出してゴムを引っ張るという今のあたしの姿はダサ恥ずかしくて誰にも見られたくない。


 でも致し方ないのだ。

 モブとはこういう役回りなんです。ちょっと特殊な気はするけどね……。



(いっけぇぇぇえっ!!!)



 当たれ!と、心の声大袈裟に願いを込めて窓へ放つ。


 すると今までよりも勢いよく飛び、最後の1本は「ぺんっ」と小さく音を立てて落ちた。

 此処でも聞こえたのだから、向こうも聞こえないはずはない。



「……。」



 反応、無し。




 最終手段:もっと投げてみよう!


 今までなんて愚かだったのか。

 ゴム飛ばしに全てを捧げたせいで余計精神的負担が高まった気がする。


 が、此処は体育倉庫なのでもっと適した物がある。



(あっ!これとか良さそう)



 あたしが目を付けたのはバスケットボールだ。

 落ちたら目立つバスケットボールは、SOS効果―――無人島とかで砂浜に「SOS」と書くと目に付きやすいアレ―――もありそう。



 ええい、この際窓ガラスが割れても構わない。

 カーテン敷いてあるから安全でしょう。

 あたしはボールを持ち、また窓から身を乗り出した。今度こそ!



「それっ…!」



 効果覿面だ。

 投げたボールは「ダンッ!」と力強い音を立てて窓に当たった。


 と、次の瞬間。


 ゆらりとカーテンに人影が映った。



(た、助かる―――!)



 ホッと胸を撫で下ろしている間に向こうのカーテンと窓が開く。

 助けを求める為、あたしは顔を上げてその人を見た。



「すみません!!あの、助けていただけ―――」



 人影がはっきりと姿を現したその時、絶句した。

 最初は視力のせいで普通に声をかけてしまった、が。


 何故ならそれが、見知った顔だったからだ。




『貴様、そこで何をしている……?』




 眉間に皺を寄せて平気で人のことを「貴様」と呼べる神経の図太い男といったら、あたしが知る限り一人しかいない。



「帝、零司…」



 しかもこの男に「貴様」と呼ばれた者はその時、かなりの確率で良くない意味での覚悟というものが必要とも知っている。

 が、なんの覚悟かは予測も不能だ。


 あれ?まさかまさか。


 突然の脱出ゲーム強いられてからのこんなタイミングであたしってば、厄ルート解放?

 脱出したのに鬼現るパターン!?



『おい貴様、俺様をおちょくってるのか。減らず口をたたいていないでさっさと質問に答えろ』


「へ、減らず口!?」



 目の前で俺様が自分を俺様って言った貴重な体験に感動する暇もない。

 減らず口なんて心の中でしかたたいてないっての。 な、なんなんだ、心を読まれているのか?そんな魔力あったっけ?



『そんな場所で何をしているのかと聞いている。言い分によれば退学させるぞ』


「させるぞ?〝なるぞ〟じゃなくて、させるぞ!?アホじゃないの!?」


『……は?』



 ……………あ。


 あ、しまった。


 つい心の声を言葉に出してしまった。

 終わった。もう、二人分死んじゃう。

 おやすみパトラッシ●。



『…? 何を言っているんだ、遠くて聞こえん』



 え……?


 ああああ助かったあぁぁ!帝の耳が遠くてよかった!帝がジジくさくてよかったぁぁぁ!!



「あの~~っ!お手を煩わせてしまって申し訳ないのですけど、そちらの窓そのまま開けておいて頂けないかしら~~?」



 これなら、おじいちゃんにも聞こえるビッグボイスだよ。

 もう待っていられないから大事なことのみになるけれど。



『…ほう?俺様に指図か』



 帝の表情に、影が帯びた。

 この世界に来て初めて彼を見たあの日と同じだ。

 この場所から見ても、妖しく笑ったのがハッキリと見えた。


 えっ、ちょッ!超絶丁寧に頼んだのに!?


 そうか、そうなのか。この男って地雷が多過ぎてイチイチ避けていたらキリがないのか。

 たった今それを悟り、今まであたしは何をしてきたのだろう?って、なんか気が抜けた。

 あたしの葛藤を返せだ。


 するとあたしの中で何かがプツリと切れたように、地雷なんて気にならなくなり……。



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