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可憐な華でも、姫でもナイッ(仮)  作者: 桜雪りか
Ⅲ.英エリカ、中学3年生の葛藤編
15/33

Ⅲ-3



「どうも、それで…御用件は?」


『ま、…まぁっ!』



 撫子原が口元を押さえて大袈裟に仰け反る。

 苦手なので茶番はよして下さいな、なんて言ったら面倒なことになりそうだ。



『貴女……お名前は?』


『撫子原様に失礼じゃない!』


『そうよそうy「英です」



 あ、しまった。被っちゃった。

 睨まないで!悪気はないのッ!



『単刀直入に聞きますわ。ズバリ貴女、親睦旅行のとき、陵様に無礼なことをしたんじゃない?』



 ……あ~、そういうことか。

 アレを見られていたのね?だったら、こっちにだって言いたいことはある。



「無礼?人聞きが悪いわね。それよりも茉姫子さん、あなたこそアレを見ていたならもう少し行動に移せたんじゃない?」


『な……!』



 撫子原は、顔を真っ赤にして口を噤んだ。

 美人なのに勿体無い悪役顔が本領発揮で、迫力がすごくて、これもスチルにしたいかも。



『陵様のみならず、撫子原様への御無礼……許しませんわっ!』


『そうよそうよっ!』



 取り巻き二人が、不意打ちにあたしのおさげを引っ張った。



「い、痛たたたたッ!ちょっと!」



 女の子には手を上げない主義なんだってばッ!

 抵抗してブッ飛ばしてしまったらと思うと、安易に動けない。

 ギャーギャー暴れているうちに、ガチャン!と音を立てて、デジャヴを思わせるかのようにメガネが落ちた。



「あ~~っ!スペアがぁ~!」


『煩いわっ!おとなしくしてなさい!』


『そうよそうよ!』―――グチャッ!バリッ


「ぎゃぁぁぁぁ今踏んだわね!?!?」



 こればかりは許さない。

 値段いくらすると思ってるのか。ナメとんのか?と、もう少しで堪忍袋の緒が切れる寸前で撫子原が、



『ミサキ、アヤコ。そこまでよ』


『で、でも!』


『茉姫子様…』



 引っ張られていたおさげが解放される。

 散々やって今更そこまではないだろうが……。

 三人があたしから離れ、あたしはすぐさま木っ端微塵になったメガネを拾っていた。


 が、それも束の間。



『―――貴方はそこで反省していなさい!』



 しゃがんでいるあたしの背後、遠くから撫子原の声が聞こえた。

 「え?」と振り返るとほぼ同時に、ガッ…シャン!!と大きな音を立てて倉庫の扉が―――閉まった。



(う、う、)



「う~そ~で~しょ~~!?」



 当然の如く、あたしの叫びは誰にも届くことがなかった。……




――――

―――――




「携帯忘れた…」



 嫌な予感は見事に的中。完全に油断していた。


 言い訳をすると、メガネが壊れてから折角スペアに代えたというのに、それまで壊れたというのがあまりにもショックで油断した。

 こりゃ、当分コンタクトだ。



(それより問題は……)



 視界は微妙にボヤけ、目を細めれば辛うじて認識できる程度の視力。


 閉まった扉は力づくでも開く気配がなく、人一人分サイズの窓が一箇所あるが、ここから降りたら間違いなく運が良くて骨折、悪くて死…

 って、こんな所で死んだら滑稽過ぎてシャレにならない!

 ……諦めて別の方法を探そう。



「にしても、体育倉庫ってもっとこう…ロマンが溢れている場所だと勘違いしていたわ」



 唇を尖らせて独り言を零してみた。虚しい。……じゃなくて。



 たとえ物語の中でも「二人きりで体育倉庫に閉じ込められて(はぁと)」なんて、ときめきシチュエーションはメインキャラにしか起こらない。それはわかりきったこと。

 要は、基本モブにはカメラが回っていないから、何が起ころうと物語(ハナコイ)ではどうでもいいということなのだ。



 まあ、よくよく考えたら寄り道などしない真面目なエリカのことだ。

 夜になればきっと母が心配して異変に気づくだろう。

 見つけてくれるかどうかは別として。



 さもなくば体育の授業で使うから、明日には―――


 ハッ!大変。

 今、とても恐ろしいことに気づいてしまった。



「……夏休み前の平常授業、今日で終わりだった」



 も、ものすごく不運!ツイていない。

 しかも授業のみならず当分は部活動も無いので、この倉庫に人が来るのかすら危うい。


 なんとか今日最後の授業で来てくれる人はいないだろうか。



 ―――そんな切なる願いも虚しく時間は過ぎてゆくばかりで、気づいた頃には。



「ふぇ…くしょんッ!フガッΣ!」



(や、やだ。寝ちゃった!)



 誰かが来た形跡もなく、いつの間にか辺りは真っ暗で。

 あたしは慌てて、幸い身に着けていた腕時計を確認した。



(20時!?)



 とっくに完全下校時刻を過ぎている。

 これじゃあ、やはり朝までコース真っしぐらだ。

 「はぁ」と小さく溜め息を吐いて立ち上がり、窓の外へ目を向けると―――



「あ、明かり…?」



 丁度向かい側の校舎にある窓から、カーテン越しに明かりが見えたのだ。

 一つの希望が芽生える。

 もしかしたら向かいの教室に、まだ人が居るのでは?



 これ以上何もしないで待つより少しでも行動したい派なので、あたしは倉庫内に何か使えそうな物は無いか、探すことにした―――。



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