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可憐な華でも、姫でもナイッ(仮)  作者: 桜雪りか
Ⅱ.英エリカ、中学3年生の苦悩編
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【Side-Sakyo-】



『―――ふぅ、ここらは何かと不便だな。特に宿の敷布団、あれは肩が凝った。しかも枕は、中に真珠でも入っているのかと思ったぞ。』



 眉間に皺を寄せてそう零した帝会長は、肩の関節を鳴らし、溜め息を吐いた。



『座椅子と脇息(きょうそく)は褒められるがな、あの宿のは素材が悪い』


「……。少しは慣れてはどうですか?これが一般的な〝普通〟というものですから」


『―――陵、』



 帝会長は満面の笑みで俺の名前を呼び、



『無理だ。』


「……。」



 また眉間に皺を寄せた表情に戻し、そう言い放った。




 計画通りの時間で目的地の三十三間堂に到着できたところ、帝会長はまだ不機嫌顔のまま『疲れた、休む』と呟くと、移動に使ったタクシーに戻ってしまった。


 ……この名所に来てまで、帝会長も勿体無いことをなさる。



 また去り際に、

 『お前は好きに見て来るといい』

 と、女子生徒を釘付けにしてしまいそうな柔和な笑みを浮かべながら、付け加えた。


 彼なりの心遣いだろう。忝い。

 しかし、遣う場所がどこかズレている。

 そんなところも帝会長らしいといえば、そうなのだが。



 ―――そんな矢先の出来事だった。




『わおっ!オレ、この子どストライク!』


『俺も俺も!』


『君可愛いね~。高校生だよね?』


『ち…違いますわ』



 女子一人に男が三人。

 嗚呼、……なるほど。一瞬で状況は把握できた。


 〝普通〟の人間がこの神聖な場にも関わらず、こんな低劣で、卑陋(ひろう)な行動を執れるものだろうか?



 自分は常識を語れる程の者でもなく、正直この手の部類と関わることさえ、考えるだけでも反吐が出る。


 しかし、このような輩を帝会長に見せたくはないという気持ちが勝り、俺は一歩を踏み出そうとした、その時だった―――。



『―――絵鞠ちゃんッ!!』


『エ、リ…カさ…』



 ある女子が、絡まれていた女子の方へ駆け寄り、庇うようにして背中へ隠した。

 俺はその時、何が起きたのか全く解せずにいた。


 だが、現れた三つ編みのメガネをかけたその姿に見覚えがあった。忘れるはずもない。



 ……彼女は〝素〟を出した帝会長に対し、唯一声をかけた女子だったからだ。



『何だ、テメェ』


『……アンタらこそ何様のつもり?』



 俺が驚いたのは、彼女の表情はしっかりと見えないものの、声音・口調からして怯んだ様子はなかったことだ。



『俺達、この可愛子ちゃんを誘ってるの。おブスちゃんは下がってましょうね~』


『……あら、ブスって自分のこと?素敵なゴマ塩頭だこと。』


『あ…あぁん!?』



 不謹慎ながら、大人しそうな外見に似合わず見事な物言いに「クスッ」と笑みが零れた。

 しかしこの場に彼女がいるということは、絡まれている女子も我が校の生徒ということだ。見逃す訳にいかない。



『ブハッ!あんた、女だからって容赦すると思った?痛い目合いたくなかったらさ―――』


『……っ!』




 しまった―――…!



 気づいた頃には男の中の一人が、彼女に向かって拳を振り上げていて。


 俺が咄嗟に駆け寄ろうとする前に、鈍い拳の音、そして彼女のメガネが地面に落ちた音が、閑静な空間の中で聞こえてきたのだ。


 しかし、次には。




『―――ッ…イ、痛ってェェ~~!!』



 なんと彼女は男の拳を上手く避けると、壁の方へ促していた。


 それを物語るかのように男は拳を思い切り壁にぶつけ、手を痛めた様子で、当の彼女は躱した反動でメガネが落ちてしまったくらいで無傷だ。



『……今、あたしに手を出したってことでいいのよね?』


『痛てテテテ…ッ、な、何言って…』


『証拠は、アンタの拳とあたしの壊れたメガネ、それに目撃者よ。言い逃れはできないと思うけど?』



 先程までとは形勢逆転し、今度は男達が青い顔を見せた。

 すると最後の手段に出たのか、拳が空振りしたせいで地面に悶え込んでいた男が立ち上がった。



『クッソ……おい、お前ら行くぞ!』


『な、っ!逃げる気!?』



 流石にこれには彼女も慌てた素振りを見せた。

 だが、ここからが俺の仕事だ。



「―――待て」



 逃げようと此方側を向いた男達の服装―――着崩された制服に付いた校章を、俺は咄嗟に確かめる。



「まさか、逃げられるとでもお思いですか。慧樵(ケイショウ)高等学校の御三方」



 我が校の生徒に手出しをするとは、帝会長を敵に回したようなものだと教えてやりましょう。皇華京の名にかけて。




「……覚悟はよろしいですか?」




.

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