リリィは美しいでしょう?
「私達の美しさには誰にも敵わないわ」
幼い頃の記憶。
お母様のとっても綺麗な笑みだけが目に焼き付いている。
私とそっくりなその顔が。
我が家は歪だ。
私とお父様とお母様。
両親の仲は良いし、美しいお母様に良く似た私もお父様は溺愛しているわ。
お姉様はお父様の前妻の娘。
私が産まれる前に亡くなってしまったそうだ。
お姉様はその方によく似ているらしい。
正直お父様の愛は私達に偏っているし、地味な見た目で憐れとは思うの。
だから幼い頃は姉というものに興味を持って遊んだりしたわ。
けれど小難しい本を薦めてきたり、私との遊びより家庭教師との勉強を優先したりするばかりでとてもつまらなかったわ。
「あれの母親もとてもつまらなかった」
「そうなのですか?」
「あぁ、リリィはあんな風になるんじゃないぞ。いつまでも可愛いリリィでいてくれ」
「はぁい、お父様」
私を宝物と撫でるお父様。
部屋の外に姉が一瞬見えた気がしたが聞いていたのだろうか?
でも見た目だけでなくつまらないからお父様に愛してもらえないのよ。
自業自得だわ。
年を重ねる度に私達の差は顕著になっていった。
百合の姫君と呼ばれるほど美しくなった私に才女とは呼ばれても相変わらず地味なお姉様。
けれどそんなこと興味ないといった様子が腹立たしい。
そんな時お父様から良い知らせが届く。
「王妃様が我が家からナサリオ殿下の婚約者をと仰ってくださっている」
「まぁ、なんて光栄な事でしょう。でもリリィの美しさなら選ばれるのも納得ね」
王太子の婚約者。つまりは次期王妃。
言い寄られる事なんてなれているがさすがに王族相手に選ばれたことにお母様同様に興奮してしまう。
けれどそんな私達にお父様は気まずそうに喋り出した。
「まだリリィに決まってないのだ。顔合わせはアイビーとそれぞれ行うと仰せだ」
まさかの発言に怒りを露わにしたのはお母様。
「どういうことですか!あの子とリリィなら比べようもないはずですのに」
「わかってる。だが高官の奴らの中には血を重視する奴も多い。けれど殿下が直接顔合わせをした上でリリィを選べば文句を言わないだろう」
「亡くなったのに忌々しい女」
お姉様もいるのに気にしない両親。まぁ、お姉様も気にした様子はないけど。
二つの公爵家の血を引く姉に対して私は子爵家のお母様の血を引いている。
私自身はセヴィニエ公爵家で育っているからあまり気にしてないけどお母様は前妻の事もあって気にしているようね。
「アイビーも分かったな。リリィの邪魔だけはするんじゃないぞ」
「承知いたしました」
そう言うとお姉様は部屋をあとにした。
あの方が怒ったり悲しんだりするの見たことないのだけれど感情ってものないのかしら。
ナサリオ様は思っていたより素敵な人だった。
何より王家の白に近い金髪と美しい顔は私にふさわしい。
彼も私を気に入ってくれたようだ。
「リリィ嬢は噂以上に美しいね」
「まぁ、殿下にそういっていただけるなんて」
「照れる姿も愛らしい。そういえば姉君とも先日お会いしたのだが・・・あまり似ていなかったが」
「お姉様とはお母様が違いますの。私は後妻の娘で・・・そのせいかアイビー様はあまり私を良く思っていないのかもしれません」
少ししなを作って悲しそうに視線を落とせばそれだけで殿下は私に視線を奪われる。
「なんと、それはリリィ嬢のせいではなかろうに」
「アイビー様はきっとお寂しいのです。だから私だけでも寄り添わないと」
「なんと・・・」
正直お母様を見て育った私からすれば男性が惹かれる仕草なんて簡単だった。
やはり殿下も例外ではなく、姉に嫌われながらも姉を想う可憐で健気な妹。
そういうのがお好きでしょう?
私の予想通り殿下は私に好意を持ったようで顔合わせ以降贈り物やお茶会のお誘いも。
お姉様には当然なにもない。
「リリィがナサリオ殿下の婚約者に選ばれたぞ!」
お父様が慌てながら帰ってきた。
正式な発表はまだだが先に知らせをもらったらしい。
喜ぶ両親と相変わらず我関せずなお姉様。
けどいいの私が貴方より優れていると証明されたから。




