第135話 お年玉
「ほお〜本当に浮いておる」
おじいちゃんの要望で魔術で本を浮かせる。
おじいちゃんはそれを糸がないかなどを確かめながら観察する。
「火とかも出せるのか?」
「うん、出せるけど、危ないから水ね」
そう言って今度は水玉を出して見せる。
一つの水玉を動かしてみたり、増やしてみたり。
「お〜すごいのぉ〜これをアリシアちゃんやセレスティーナさんもできると」
「はい、できますよ」
「異世界すごいの〜」
「もうお父さん、さっきからそればっかりじゃない」
「実際すごいのだから仕方ないじゃろ」
「すごいよね、セレスさんたちの魔術。私もできるようになりたいな〜」
「神様から教えるのを禁止されていますから、残念ながらダメですね」
「そうなのか……」
若干残念そうにするおじいちゃん。
「お義父さんも使いたかったのですか?魔術」
「勿論、空とか飛べたら面白いじゃろ?」
「確かに、お兄!飛んでみてよ」
「無茶言わないでくれよ。魔術は万能じゃないんだ」
そう言いながら俺は浮いて見せる。
「浮けるんじゃん!」
「浮けるだけで移動はできないよ」
「下手なマジシャンよりすごいのお……そうだ」
なにを思い立ったのか、おじいちゃんは席を立つ。
しばらくして戻ってきたおじいちゃんの手元にはポチ袋があった。
「ほれ、お年玉じゃ」
「やった〜!ありがとう、おじいちゃん!」
「アリシアちゃんもじゃ」
「いいのですか?」
「わしのひ孫なんじゃろ?ならもらう資格があるじゃろうて」
「では……大切に使わせて頂きます」
アリシアは両手でしっかりとお年玉を受け取る。
「ほれ、和也も」
「俺はいいよ。向こうだと27だし、結婚もしたし、子供も産まれた。だからいいよ」
「なにを言うてる、この世界では17じゃし、儂の孫。受け取って家族サービスにでも使いなさい」
おじいちゃんは頑として渡してこようとする。
「ほれ」
「そんなに言うのなら……今年だけもらうよ」
「なにを言うとる。20まできっちり渡すぞ」
そうしておじいちゃんはセレスにもポチ袋を差し出す。
「え、私にもですか?」
「勿論。イースガルド?での年齢は知らんが、こちらの世界では17歳、そして和也と結婚したのなら家族じゃ。受け取れ」
「……ありがとうございます」
「うむ、それで良い。渚沙くんにはどうするかの?和也たちに渡しておけば良いかの?」
「うん、渚沙の口座に入れておくよ」
年始特番を見ながらストーブで焼いた餅を食べる。
……まあ、人数が多いから足りない分は別で焼いているのだが。
これぞ年始。素晴らしい過ごし方だ。
魔術や異世界の話に花を咲かせた後、渚沙もいることだし、俺たちは家に帰ることにした。
「もう少し居ればいいのに」
「さすがに新生児連れて長居はできないよ」
「それもそうじゃの。今度は儂がそっちに顔出すわい」
「無理しなくていいのよ?お父さん」
「まあ、この足じゃからの」
そう言っておじいちゃんは足を摩る。
おじいちゃんは足が悪い。
昔、事故で怪我をした後遺症だそうだ。
「……少し、見せていただけますか?」
「セレスティーナさん?」
「私の魔法で治せるかもしれません」
セレスの持つ魔法は治癒。俺たちは戦時中その能力に支えられた。
通常、魔術による回復は、怪我発生から時間が経てば経つほど治りづらく、外傷にしか効果がない。
しかし、セレスの魔術は違う。
どれだけ時間が経とうがどんな外傷であろうが治せてしまう。
まさに、神秘と言うべき魔法。彼女を賢者とたらしめる魔術だ。
「本当か?無理はせんでもええぞ?慣れとるからの」
「大丈夫ですよ……少し触りますね」
そう言ってセレスはおじいちゃんの足を摩る。
「――【エクスリカバリー】」
ぽわと優しい光が灯る。その光はおじいちゃんの足を包み込み、パッと消えた。
「どうでしょう?」
「どれ」
おじいちゃんは足を確かめるように動かしてみる。
「お、おお!」
おじいちゃんは着いていた杖を手放す。
倒れると思い急ぎ支えようとする父さんたちを手で制し、おじいちゃんはその二足で立っていた。
「歩けるぞ!」
「お父さん……!」
「よかったね!おじいちゃん!」
「いやあ、助かった!これで杖とおさらばじゃ!」
「魔法が効いてよかったです」
おじいちゃんは両手でセレスの手を握る。
杖を手放したおじいちゃんは今日あった時よりも何倍も明るい笑みで俺たちを見送ってくれた。
「素敵な方でしたね」
「そうだな……よかった。受け入れてくれて」
腕の中ですやすやと眠る渚沙と、俺に頭を預ける形で眠るアリシアを見ながら俺たちはそう語り合う。
「次は初詣だな」
「初詣……新年が明けてから初めて神社やお寺に参拝し、旧年への感謝を伝え、新年の無病息災、家内安全、商売繁盛などを祈願する日本の伝統行事ですよね。楽しみです」
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