第131話 初めての夜
夜、夕食を食べ終わった後、俺たちは渚沙を連れて自室に帰ってきた。
「う、あ〜!」
「さあ渚沙、寝ましょうね〜」
リビング同様、セレスの匂いがするものと一緒に渚沙を寝かせ、睡眠を促すためにぽんぽんと優しく手を添える。
「ぅ……」
「寝たか?」
「はい、寝ましたよ」
程なくして眠った渚沙。文字通り無垢な寝顔に癒される。
「さあ、俺たちも寝るか。これから3時間おきに起きなきゃならないんだ。寝れる時に寝ないと」
「そうですね」
俺たちもベッドに横になり、寝る体勢になる。
昨日まで二人だった部屋に3人分の吐息。アリシアと一緒に寝た夜を思い出す。
「カズヤさん、まだ起きていますか?」
「ああ、起きてるぞ」
「カズヤさんは思うところなかったのですか?」
「何がだ?」
「渚沙のことです」
確かに、突然の出来事だった。
もう話すことはないと思っていたイーディス様から、急に『俺たちの魔力から生まれた子供』だと渚沙を授かって。
急いで赤ちゃん用品を揃えて。
怒涛の1日だった。
「育てることはもちろんですけど、よく受け入れたなと」
「思うところはあったさ。けど、確かに渚沙は俺たちの子供だ。目元なんてセレスそっくりだ」
「口元はカズヤさん似ですね」
「将来的にもう一人子供は……と思っていたが、いきなりだったからな。あ、貯蓄が足らないわけじゃないぞ?それはセレスもよくわかっているだろう?」
「はい、現金だけでも私たち人生3周分ぐらいありますものね」
「この世界で俺たちはまだ子供だ。子供が子供を育てるなんて、問題しかない。けど、それ以上に俺はこの子を育てたいと思った」
「それは私もです」
「だって俺は世界を救った勇者だぞ?この程度問題になんかなるものか」
楽観的と思われるかも知れない。けど、悲観的に見てどうなる。
もし、あの時断っていたら渚沙はどうなっていたのだろう。
イーディス様のことだから酷いことはしないだろうが、想像できない。
いや、俺たちが育てる以外の選択肢が想像できないと言った方が正しいだろうか。
「頼もしい勇者様です」
「初めて自分を勇者と言った気がする」
何はともあれ、渚沙は俺たちが育てる。
これは決して揺るがない。
「葛西さんたちにどうやって説明しましょう」
「確かに、遼たちにどうやって説明しようか」
俺たちが異世界にいたこと以上にこの子を隠すのは難しいだろう。
そのことを知る葛西さんと遼には話ていいだろう。
けれど、どう説明したものか……
いや、まあ。あるがままを説明するだけだが。
「ともかく、なるようになるさ」
「あ〜!」
「どうした渚沙〜?ミルクか?おしめか?」
俺たちの格闘は続く。
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