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介入(1)

「エバは無事か!?」



 エバを背負ったイムカにアンデルは問う。



「ええ、気を失ってるだけ。」



 イムカはぐったりとしたエバを、同じく気を失っているオルフェンの隣に降ろす。



「オルフェン・・・お前・・・」



 苦しげな表情でうなされるオルフェンに、アンデルは言葉を飲み込む。



「なんだか騒がしかったから、向こうは任せてこっちにきてみたけれど、状況を説明してもらえる?」



「イムカ、あれは魔族だ。物理的な攻撃じゃ傷一つつけられない。」



「魔族ですって!?なんでこんな街中にいるのよ!」



 イムカがアンデルに食ってかかる。



「どうやらソファラの魔術師に化けていたみたいだ。この戦争、どうも臭いな。」



「魔族なんてどうすればいいのよ!魔術師二人がこの状況じゃお手上げじゃない!」



 イムカが取り乱す。



「取り敢えず俺が時間を稼ぐ。このままじゃオットーも危なそうだしな。」



 二人が話している間にも、オットーは断続的に矢を放ち、デーモンの意識を逸らしていた。



「オルフェン・・・はしばらく無理だな。とにかく、エバが意識を取り戻すまで護衛を頼む。」



 そう言い残し、アンデルは物陰から躍り出た。



「ちょっとアルがいっても・・・」



 役に立てないでしょ。その一言をイムカは飲み込んだ。アンデルが苦悩していることは知っている。だからこそ自分は、マクスウェル劇団の仲間だけは、アンデルのことを役立たずだなんて思わない。イムカはいざとなったら自分が盾になってでもアンデルを守ろうと、双剣に手を伸ばす。



「妾がいる限り死なせぬぞ。」



 ソユがふわふわと浮かびながらアンデルの後を追った。



「っていうかあんた誰よ!」





「チョロチョロと目障りな蝿が!」



 デーモンが矢を払いながら、衝撃波を飛ばす。



「アウチッ!」



 崩れた瓦礫の陰から、オットーの苦悶の声が上がった。



「そこかあ!」



 口元を歪めたデーモンが魔力を掌に収束させる。



「シャイニング!」



「ぬおっ!」



 激しい光に目をくらませ、デーモンの魔力が霧散する。



「小賢しい真似ばかり!」



 デーモンが腕を振るが、空を切る。



「インフェルノフレイム!」



 目の眩んでいるデーモンは、闇雲に炎を吐き出した。



「うおっ!」



 横っ飛びでかわしたアンデルは、派手な音を立てて地面に転がる。



「そこか!」



 デーモンが黒炎で追撃する。



「無茶をするのう。」



 アンデルの前に水の膜が張られ、黒炎をかき消した。



「ソユ!攻撃手段はないのか!」



「妾一人じゃ防御と癒すことしかできぬのじゃ。すまんの。」



「なら防御に力を貸してくれ!」



 ソユが宝石に戻り、アンデルは魔力を練り始める。



「熱くなりすぎた。我輩の全力を持って貴様らを葬ってやろう。」



 デーモンの体に、今までにないほどの魔力が凝縮されていくのをアンデルは感じた。アンデルの肌が粟立つ。



「はあっっっ!」



 デーモンが魔力を解放し、アンデルが身を屈めたその時、



「ホーリーディメンジョン!」



 デーモンの頭上より、光の雨が降り注いで来た。



「おおおおおおっ!」



 デーモンの体からは煙が立ち昇り、苦悶の声が上がる。断末魔と共に雨が止むと、デーモンの姿はかけらもなかった。








 ーー所変わって、キャンドル平原。散発的な騎馬兵の突撃と、それを受ける盾のぶつかる音が鳴り響く。そんな戦いが繰り広げられている両翼とは対照的な、静かな本陣にウェイクが姿を見せる。



「ようウェイク。あのアンデルって野郎はやってくれたな。」



 ギリアムが歯を見せる。



「暴れたらねえんじゃねえのか旦那。」



 ウェイクはニヤニヤしながらギリアムに話しかける。側近達がウェイクの態度にざわめくが、ギリアムの制止で大人しくなる。



「犠牲が減るに越したことはねえよ。」



「うむ。アンデルには二度も救われてしまったな。」



 ギリアムの横で戦場を眺めているマーシュがしみじみと呟く。



「後はアンデル達が敵の魔術師を捕らえれば万事作戦通りだな。お?」



 ウェイクが何かに気付く。



「どうした?」



 ギリアムがウェイクに釣られて戦場に目をやる。



「中央からなんか来てねえか?」



 ウェイクが目を細めて、混乱した歩兵でごった返す中央を注視する。相手陣営側に逃げていく歩兵の中にあって、唯一人、こちらに向かってくる兵士の姿があった。



「ん?確かに一人こっちに来てるな。」



 ギリアムとその男に気付いた。まるで気負うことなく歩いてくるその兵士に、グラシエル兵が二人近づく。その手には槍を携え、交戦する構えである。歩いてくる男に槍を向け、串刺しにせんと振りかぶった瞬間、グラシエル兵二人は崩れ落ちた。



「おいウェイク、見えたか?」



 ギリアムが問う。



「ああ、恐ろしく速い抜刀と納刀だったな今のは。」



 仲間がやられたのを見て、中央のグラシエル兵が慌ただしく集まってくる。その男の四方八方を囲み、一斉に飛びかかる。



「・・・だめだな。」



 ギリアムが呟く。その言葉通り、飛びかかったグラシエル兵達は、先程の二人と同じように地面に倒れこんだ。



「ウェイク、暴れる機会があったみたいだぞ。」



 ギリアムは獰猛な笑みを浮かべ、立ち上がった。ウェイクも大剣を背負い直す。



「ユングヴィ騎士団長!何が起こっているんだ!」



 ギリアムやウェイクの様に人並みはずれた視力を持っているわけではないマーシュが、ぴりついた二人を見て慌てる。



「殿下はここでお待ちください。私が出ないと片付かない案件がありまして。」



 ギリアムはそう言い残し、マーシュに目をくれることなく戦場に向け歩き出した。



「旦那、どうする?」



「俺がやる。お前は見てろ。」



 楽しげなギリアムを見て、ウェイクはへいへいと呆れ気味に返事をする。



「はわわわわ!なんで幻惑魔法が効いてないのー?」



 途中、前線の違和感を感じ取ったパムに下がる様指示をだし、二人は勇敢なる挑戦者の元へ向かった。



「下がってろ。お前達の手に余る相手だ。」



 謎の闖入者に対し、取り巻くことしか出来ずにいる兵士を押しのけ、ギリアムが前に出る。それまで歩みを止めることのなかった敵兵士が立ち止まる。



「名のある将ってわけでもなさそうだな。何者だ?お前。」



 一見普通の歩兵にしか見えないその男を、まじまじとギリアムが眺めまわす。しばしの沈黙の後、ソファラ軍の鎧を来た男が動く。常人には追えない速度で、ギリアムに襲いかかる。



「なかなかの速さだ。」



 ギリアムは腰にぶら下げた剣を抜き、神速の太刀とも言える一撃を受け止めた。剣を受け止められたことに驚きも見せず、男は跳び退り距離をとる。



「来いよ。」



 ギリアムが剣を肩にかつぎ、手招きして挑発する。そこからは目にも留まらぬ速度の攻撃の応酬が始まる。時に避け、時に正面から受け止め、ギリアムと謎の兵士の大立ち回りが繰り広げられる。ウェイクはいつでも割って入れる様、大剣に手を伸ばす。



「ほらほらどうしたそんなもんか!」



 ギリアムは余裕の表情を浮かべながら剣撃を捌く。グラシエル兵達もギリアムの勝利をにわかに感じ始め、沸く。



 と、その時、



「ソファラの総大将キシュワードの首!インペリアルガーディアンのキグナスが討ち取った!」



 ソファラ陣営から飛んだ急報に、両陣営がざわめいた。

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