第五話 スミス一家
アルが家族に加わって二年が経った。
子供達は元気いっぱい、のびのびと成長してゆく。
アレクやダリアたちは5歳になっていた。
「なあ、外で遊ぼうぜ!」
とアレク が言い出した。
「いいよ、みんな外で遊んでおいで」
「はーい」
子供達はみんな外に走って行った。
「どうするのみんな?追いかけっこする?それともボール遊びとかの方にする?」
「ピィおままごと!」
「おままごとは家の中でもできるだろ?せっかく天気がいいんだから追いかけっこしようぜ!」
「ちょっとアレク!ピィはまだちっちゃいんだから!」
「……そっか。じゃあ、ピィが遊べそうなことにする」
「ねえねえ、宝物探ししようよ!」
とアル。
「いいぜ!俺が一番すごいの見つける!」
ここで言う宝物探しとは、たまに外の業者が捨てに来るガラクタや廃ビルの中から使えそうなものを集めることだった。
本当に役に立たないガラクタもあれば、使えるものもある。
子供達はそれらを探し出し、それを今度は生活の役に立てている。
曲がった針金、割れたガラス瓶、電気のコード、壊れた機械など。
一見何の役にも立たないそれらだが、それなりに用途はある。
針金はまっすぐ伸ばせばまた使えるし、ガラス瓶はリサイクル業者に売れる。電気のコードもまた再利用が可能だ、壊れた機械類は物によっては 修理すれば使えるし 使えなければバラせば 部品だけでも使える。
もちろん子供たちの手で修理などまだできないが、オスカーのところに持っていけば使えそうなものは教えてもらえる。
子供達は遊びの中でそれらを学んで行く。
何が使えるか、何をどうすれば生活に役に立てるか、本当の意味で使えないものなどほぼないのだ。
「それじゃあオールドアルケディアの北エリアまで宝探しの冒険だ!」
「ちょっと待ってよアレク、そんなに遠くに行くんだったらママに言わなきゃ」
ダリアが慌てて止める。
「そうだよ、遠くに行っちゃダメって言われてるんだから」
「えー、ちょっとぐらい、いいだろ?」
「とりあえずアイリスママに一言、言ってからにしよう」
とデイジーが一言。
「ちぇ、わかったよ!」
アレクは拗ねた顔をした。
「ねえアレク。近くの川のそばでも色々と流れてきてるから、宝探しできるよ」
とアルが言った。
「そうだな!じゃあ川のところで何か落ちてないか探そうぜ!」
アレクはピィの手を握る。
「わーい、きれいなのみつかるかな」
ピィは嬉しそうに笑った。
川辺ならばガラスのかけらが削れシーグラスとなって落ちている かもしれない。
ピィはキラキラとした綺麗なものが好きだ。
子供たちは川辺に向かって歩き出した。
その時に、見慣れない子供の姿を見つけた。
年齢はアレクやダリア、アルたちと同じぐらいの5歳ぐらいに見えた。
「こんにちは!」
ダリアがそう話しかけるとその男の子は引きつった顔をして、後ろを向いて走り去ってしまった。
「だれだろ?北エリアか中央エリアの子かな」
「さあー、私は見たことないよ」
「ボクもあの子見たことない」
「ピィも!
5人とも顔を見合わせる。
もっとも、その後川へ宝物探しに行った子供たちは昼間会った男の子のことをすっかり忘れてしまった。
夕食時、
「ダリアお皿並べるの手伝って。アレクも」
「はーい」
「そういえばママあったこともない男の子に今日はあったんだ」
「どんな子?」
「あのね……」
ドンッ!ドン!
ダリアがそう言いかけた時に扉を激しく叩く音が聞こた。
「お願い、母さんを!母さんをたすけて!」
扉を開けるとそこには昼間の男の子が立っていた。
息を切らし、今にも泣きそうなを顔して。
「どうしたの?あなた確かスミスさんのところの……」
「はやくきて!母さんが死んじゃう!」
「アレク、オスカーを呼んできて!スミスさんのところにオスカーを連れてきて!」
「分かった!」
アレクは駆け出した。同じビルの三階のオスカーの部屋へと走って行く。
アイリスは、その子と一緒に外に出て行った。
「まって、私もママと行く!」
ダリアも後追いかけて行く。
「ピィも!」
幼いピィが 行こうとしたらアルとデイジーは慌てて止めた。
「ダメだよ、何か大変なことが起こってるんだ。ママとオスカーが何とかしてくれるからボクたちは行っちゃだめだよ」
「そうよ、ママたちが帰ってくるまで待ちましょう」
二人は不安な気持ちで扉の向こうを見つめた。
三件隣のビルにアイリスとオスカーそれに昼間の男の子とアレク、ダリアは入って行った。
「母さん!しっかりして母さん!」
子供の声がする。やっと声変わりが始まったぐらいの少年の声だ。
……その光景に全員息を飲んだ。
あたり一面血だまりになっていて、まだへその緒のついた息をしていない赤ん坊がいる。
女性はぐったりとしていて目をつぶって動かなかった。
それを抱える13歳か14歳ぐらいの少年。
すでに女性は事切れていた。
後ろで青ざめた男の子がペタリと座り込んだ。
何もかも手遅れだったのだ。
オスカーとアイリスで血の後を拭き取る。
死んでしまった女性と赤ん坊の服を整えそっとベッドに寝かす。
「父さんがマフィアに殺されて、俺と母さんとコールでここに逃げてきたんです。他にどこに逃げていくこともできなくって。母さんは身重だったし、コールはまだ小さいし……でもこんなことになるなんて」
消え入りそうな声で少年は話していた。
「他に身寄りは?」
少年は静かに首振った。
アレクは震える自分と歳の変わらないぐらいの男の子の横に座った。
ずっと震えてる彼の手をそっと握る。
「俺はアレク」
男の子はアレクの方を見た。
「コールだ」
そして一言そう言った。
弔いは翌朝行われた。
薪を積んで火葬し墓に埋める。
身寄りのない少年たちは、やがてアイリスたちのコミュニティへと交流した。同じ廃ビルの中、身を寄せ合って生きていく。
彼らもまた外の世界で生きていくにはあまりにも困難な問題が多すぎるのだ。
兄のジョン・スミスは少しでも働いて弟を養おうとした。
アイリスがそうであるように、彼もまた弟を守ろうとしているのだ。




