第十四話 夢の設計図②
「お帰り!ジャック!ってローズ!」
扉を開けて入ってきたのは北エリアの子供たちだった。
オスカーに勉強を教えてもらうためにやってきたのだ。
「こんにちは、オスカー 先生。みんな何やってるの?それ何の絵?」
3人の女の子たちの中で一番年長のリリーがそう尋ねた。
「あのね。みんなでサーカスするの!そうだ、リリーとローズとヴィオラも一緒にやろうよ!」
ピィが笑ってそう話しかける。
「サーカス?」
ローズが聞き返した。
「うん!いいでしょアレク?ねえみんなもいいよね!」
ピィは笑顔でみんなの方を見た。
「ああ、そうだな。三人も一緒にどうだ?」
「私は大賛成よ!」
とダリア。
他の子供たちも頷いている。
「サーカスって何やるの?」
ヴィオラがそう尋ねた。
「それを今から考えるんだ。今はみんなでテントをどういう風に作るか考えてるところだよ」
アルがニコニコしながらそう答える。
「ふうん、面白そうね」
ローズは少し乗り気になったようだ。
「私も興味あるわ。面白そう」
「わ、私も!」
リリーとヴィオラが答える。
「ところでそれって毎日やるの? だったら私はちょっと難しいかも、弟のこと放っておけないもの」
リリーはそう言った。
「いや、さすがに毎日は俺たちも仕事があるから無理だ。……なあ エースお前とジャック、土日は休みだったよな?俺とコールも仕事が休みだったから、どちらかだったら大丈夫だと思うんだが」
「ああ、土曜日か日曜日だったらみんなの予定が揃いやすいと思う」
「コールはどう思う?」
「そうだなそれだったら、日曜日の方がたくさん見てもらえるんじゃないか」
「いいわね!私も週に1日か2日だったらママのお手伝いと内職に無理が出ないわ!」
「そうだな、じゃあリリーたちは土曜日と日曜日どっちが動きやすい?」
北エリアの三人の女の子たちは顔を見合わせた。
「そうね、私も土曜日でも日曜日でも大丈夫だけど。週に二日はちょっと大変かも」
と、ローズ。
「私はいつでも大丈夫よ!」
ヴィオラもはにかみながらそう言った。
「じゃあみんなでいつにするか決めようぜ!来週の日曜日、初公演なんてどうだろう?」
アレクがそう言ってみんなの方を見た。
「さんせいー!」
ピィは元気いっぱいに手をあげる。
「ボクも!」
その横で小さくクリスが手を上げた。
「僕も賛成だよ」
アルがそっと手をあげる。
「はい!もちろん賛成よ!」
ダリアが手を上げつられてデイジーも手を上げた。
他の子供達も一緒に手をあげる。
「よーし!みんな賛成だな!」
アレクが 笑ってそう言った。
「……ジャックがまだだけどね」
アルが微笑んで言う。
こうしてサーカスのメンバーに、北エリアの少女たちが加わり公演の日も決まったのだ。
三人の少女たちはともにテーブルにつき、アレクたちの話を聞き始めた。
――さて、その頃のジャックは……
「こんにちはーー!!」
資材屋の扉をガラガラと開け、中で働いていた人たちに大きな声で挨拶をした。
「なんだ、アイリスさんところのジャックじゃないか」
「なあなあ、おっちゃん!木材とかの大きさと重さ測らせてくれよ!みんなでサーカスすることになったんだ!」
「一体何なんだ、急に」
「だから!みんなで移動サーカスをすることになったんだ!それで みんなでテントを作って、組み立ててサーカスをするんだ!だからおっちゃん余ってる木材とかパイプとかあったらくれよ!それで 俺たちがサーカスのテントを作って公園に持って行って、みんなでサーカスするんだ!」
興奮気味に話すジャックに周りの人々は若干呆れ気味である。
「なんだ、なんだ……」
「サーカスって……みんなってアイリスさんのところの子供たち全員ってことか?」
「そーだよ!みんなでテントを作って公園で組み立ててサーカスをしてお金儲けするんだ!」
「……それお前が言い出したのか?」
「ううん、アレクだよ!壊れたバイクを俺たちで拾ってきて修理して、そうしたらアレクがテントの道具をバイクで運んでみんなで移動サーカスしようって言い出したんだ」
「うーん、アレクか……なら大丈夫か」
資材屋の男性は少し考え、そう言った。
「だからさ!材料になりそうな物ちょうだい!あと何がどれぐらい必要なのか重さとか 長さとか 測らせて欲しいんだ。もちろん ただでとは言わないよ!何か俺たちで手伝えることがあったらするからさ!」
「うーん、そうだな」
男性はしばらく考えているようだった。
「よし明日、旧市街の方で建物の解体作業があるんだ。必要なものをその時にもらってくる。お前たちも一緒に来るか?その時に お前たちが 必要なものを持って行ってもいいぞ。それから向こうに置いてあるやつだったら持って行ってもいいぞ。仕事の邪魔はすんなよ」
そこにあったのは曲がってしまった扉のアルミサッシだったり、折れたり曲がったりしている塩ビパイプだったり、腐って虫が食った木の柱だったり、あまり売り物になりそうにないものが積んであった。それでもそれらのものも、利用価値はあるにはあるのだが……
「ありがとう、おっちゃん!」
ジャックは
「ほらよ。メジャーは貸してやるから怪我すんなよ!そこの測りだったら使ってもいいぞ!」
「サンキュー!」
メジャーを受け取るとジャックは廃材の山に向かって走っていった。引っ張り出してはメジャーで長さを測って、持ってきた鉛筆とチラシの紙にメモをしていく。重さを測り、材料を見比べて行った。
日がすっかりくれた頃 、ジャックは戻ってきた。
「ただいまー!なんだよ、みんな2階にいるかと思ったらもう家に帰ってんのか。お腹空いたー!ダリア、今日の晩御飯なに?」
「もうすっかり暗くなっちゃってるでしょ。それよりもまず手を洗ってそのドロドロの服も着替えた方がいいんじゃない?さすがに 汚れすぎ」
「へへへ、へへ」
ジャックはいたずらっぽく笑う。
そして流し台の方に行って手と顔を洗う。
「お疲れ様、おかえり」
そう言って アルはタオルを渡した。
「いっぱい 調べてきてくれたんでしょう。大変だったね」
ジャックはガシガシと顔を拭く。
「へへへ、まあな!じゃーん!見ろよこれ!何が重いか、どんな材料があるか調べてきたぜ!」
「じゃあ、晩御飯を食べ終わったらみんなで作戦会議だね!」
「おぉ!任せとけよ!」
「アルー、ジャックー、早く来て!晩御飯よ」
デイジーの呼ぶ声が聞こえた。
いつもの通りのラジオを聞きながらの夕飯だったが、子供達は テントやサーカスの話で盛り上がっていた。
「なんだよ俺がいない間に、いつサーカスやるか決めちゃったわけ?」
「仕方ないだろ。お前待ってたら今日が終わってたぞ。それに来週の日曜日にやるの反対じゃないだろ?」
エースが横からそう言った。
「うん、というより1日でも早くやりたい!」
「でも何するのか、まだ決めてないから。それが決まってからじゃないとね」
とアル。
「明日は、資材屋さんのお手伝いみんなで行くんでしょう?」
とアイリスが尋ねた。
「うん!必要なもの持って帰っていいって!」
「そうなの。それは良かったわね。でも怪我しないように気をつけてね。明日は何人で行くの?ジャックとエースとアルも行くのかしら。それからコールとアレクは昼から仕事だけど大丈夫なの?」
「はーい!俺と一緒に行きたい人!」
ジャックが手を挙げる。
「ピィも行く!」
「ボクも!」
「待って、2人とも危ないのよ!だからお願い二人は、アイリスのお手伝いをしていて」
ダリアが慌てたようにそう言った。
「そうだよ怪我したら危ないから、サーカスの道具集めと資材屋さんのお手伝いは僕たちで行くから二人は今回はお家にいてほしい」
「アルまで!」
ピィがちょっと拗ねた表情をする。
「ねぇピィ、私と一緒にテントの飾りとかを作りましょう。お花の飾りを作るのがすごく上手でしょ?とっても可愛いサーカスのテントになるわ!」
デイジーがそう言った。
「うん」
ピィの目が輝いた。
「それじゃあ、明日資材屋さんのお仕事に行く人!手を上げて」
とアイリスが言った。
アレクとコールとダリア、ジャックとエースとアルが手を挙げた。
「よし決まりね!じゃあ明日みんなにお弁当を用意するわ」
アイリス はそう言って微笑む。
「なあ夕飯が終わってから、持って帰ってきた台本のシェイクスピアのロミオとジュリエットを音読してみようと思うんだ。これをベースにお話を考えたいから。みんなどうかな?」
アレクがそう言った。
「聞きたい!聞きたい!」
ピィが目を輝かせてそう言った。
「みんな、ご飯食べてからね」
「はーい!」
「アイリス姉ちゃんおかわり!」
「私も、ママおかわりいい?」
「もちろん!」
そう言ってアイリスはパンをダリアとジャックに渡す。
子供達はみんなワクワクしていた。
夕飯が終わるとみんなであと片付けを急いでする。
そうして、台本を手にしたアレクの前に集まったのだ。
これから始まる物語に胸を膨らませながら。




