第十三話 それぞれのホテルの楽しみ方part3〜「………せやな。あの心の傷はどうもならん。」
「さて、お次は……」
私の渾身のボケに祥ちゃんが突っ込んで、ガイルさんのパートは終わった。
ガイルさんは買い物を終わらせて、奥さんに味も分からない物をあげるわけには行かないからって、今はコンビニのイートインで実食中らしい。
ガルさんとシロちゃんと横並びで。
……………このホテル、医務室あったっけ?
………ああ。あるんだね、祥ちゃん。
正◯丸用意しとこうね。
ベットも3ついるかもしれないよ。
そんなやり取りをしつつ、私がリモコンを操作して、画面の映像を切り替えると、モニターに映し出されたのはカプセルホテルの通路の映像だった。
ある一つのカプセルブースの前に、五郎がいた。
その入り口を見つめる五郎の様子は焦って混乱しているようだ。
「? あれ、五郎だよな?
んで、あれ、レオンさんの客室だよな?
なんか焦ってるけど、レオンさんになんかあったのか?」
モニターに顔を近づけて、心配そうな顔をする祥ちゃん。
そんな祥ちゃんを横目に、私は乾いた笑いを浮かべた。
「んー………なんかあったとか事件じゃないけど。
いや、ある意味では事件か?」
「レオンさん、体調でも悪いのか?」
「………体調………まぁ、ある意味悪いというか、心が重症というか…………。
いつかの私や私の姉妹たちだよ。
昨日コンビニでさぁ、レオンさん、勉強にもなるかもしれないって、某鬼退治の漫画と呪いで呪いを祓う漫画の単行本を買っていったでしょ? 」
「………察した。
お前ら、3日も寝込んだもんな。」
「そ、地獄を体験中。
見ているうちに、推しが出来ちゃったみたいでさぁ。
…………辛い展開とか推しが死ぬの耐えきれなかったらしい。
号泣中。」
「は!? 号泣!?」
驚く祥ちゃんの前で、モニターの音声を少し大きくすると、確かに閉まった垂れ幕の奥からすすり泣く声が聞こえる。
『うっ……ううっ……嘘だろ……なんであんな良い奴が……っ』
『なんで、なんで……ッ!!
彼女の覚悟は否定されるものではないけどッ………。
あんな…………ッ
遺体も残んないとか……………ッ』
…………見事に私らと同じ反応しとるわ。
レオンさん剣士っぽいし、同じ剣を振るう者として、身内の敵討ち、自分は首を斬れないからその代わりに、己の肉体を毒化させてまで、戦った彼女の壮絶すぎる最期がぶっ刺さったようだ。
レオンさんにはガイルさんっていうお兄さんがいるしね。
あまりの悲痛なレオンさんの大号泣っぷりに、カプセルの前で五郎一人が小さな前足をあわあわと動かしながら、「どうちよう、どうちよう……」と完全に大混乱に陥っていた。
「………どうしようか、祥ちゃん………。
五郎ちゃん困ってるみたいだけど……………。」
「…………そっとしといてやろう。」
「………せやな。あの心の傷はどうもならん。」




