第十二話 朝食バイキング part13〜「いや、納得すんな。」
「わぁぁ! お姉が食べてるの、すっごく美味しそう!
私も次はそれ取ってこようかなぁ。」
美味しそうにサラが口に運んでいると、隣の席から、ソラの弾んだ声が聞こえた。
ソラに視線を移すと、彼女はサラの食べている目玉焼きを見ていた。
実は卵料理が好きなソラ。
彼女もサラが選んだ、目玉焼きが気になってはいた。
しかし、それ以上に興味をそそられた物が卵焼きだったため、選ぶのをやめたのだ。
普通のオムレツとは違う、四角い形。
昨日のソバを彷彿とさせる出汁の香り。
ここの食事にハズレはない。
ソラはワクワクしていた。
「たまごやき、甘じょっぱくて、おいちいよ!
ソラちゃ、あーん!!」
ソラにくっついているフェンリルの四郎が、自分の皿から小さな前足で箸を器用に操り、一切れをソラの口元へと持っていき、勧めてくる。
「ふふ、じゃあいただくね! あーん……」
ソラがぱくりと、その一切れを口に含んだ。
その瞬間、ソラの目を丸くし、大きく見開かれた。
「――っ!? んんんん〜〜〜っっっ!!!
噛むと中からじゅわりと、良い出汁の味が染み出してくる!!
なのにどこか甘くて………。
これを甘じょっぱいって言うのね!!美味しい!!!」
異世界のオムレツといえば、塩とハーブで味付けされた塩味が基本だ。
それなのに、この卵焼き、出汁巻き卵は、ほのかな甘みと出汁の旨味が何重にも層になって、口の中でとろけるように解けていく。
ソラの表情も思わず美味しさで蕩けた。
そんな彼女に四郎は得意げな顔を向ける。
「おいちいでしょ!! しろうたちが作ったんらよ!!」
「えっ、四郎ちゃんたちがこれを作ったの!?
天才、天才だよ……!!」
この卵焼きの製作者の一人である四郎に、ソラが感動のあまりぎゅーっと抱きつき、四郎も嬉しそうに「わぁー」と声を上げる。
そんなソラと四郎の微笑ましい様子を横目に、自身の皿に乗ったしゃけを見つめ、目を輝かせているミーナ。
大好物なこともあり、食べる前から幸せそうな顔をしている。
そんなミーナの横では、クロがすでに自分の皿に山盛りに重ねた鮭の塩焼きを、前足で箸を器用に扱いながら「ハムハム、もぐもぐ」と幸せそうに口を動かしている。
さすがは猫型魔獣、魚を前にした時の行動はガル並みに早かったらしい。
「おいちい、みゃ!!!」
「ふふ、クロちゃん、本当にサーモンが好きなんだね……よし、私も食べようっと!」
幸せそうに表情を崩すクロにミーナも嬉しそうな顔をし、自分も食べようとカトラリーを手に取った。
炊飯ジャーからよそったばかりの、つやつやで湯気が立ち上る白米の上に、程よく脂の乗った鮭の身をごろりと乗せる。
そして、クロ曰く『最強の組み合わせ』である白米と鮭の身を一緒に大きな口でハムっと咥える。
「――ッ!? んんんん〜〜〜っっっ!!! 美味しい、これ凄く美味しいよ……!!」
噛み締めた瞬間、ミーナの口いっぱいに絶妙な塩気と、じゅわりと溢れ出す濃厚な鮭の旨味が広がった。
そこに、ふっくらと甘い白米の粒が上手く調和し絡み合う。
ミーナの実家の食堂でもサーモンは看板メニューだが、こんな風に白米と一緒に食べる文化はない。
白米はあるがこんな風に食べたりしないし、実家ではリゾットなどに使われてるものしか見たことがなかった。
こんな食べ方があるなんて、塩気のある焼鮭がこんなに合うなんて、ミーナは知らなかったのだ。
彼女にとっては未知の衝撃だった。
「うちの食堂の鮭料理も、サーモン料理よ自信があったけど。
……この鮭の絶妙な塩加減と、この温かいライスの組み合わせは反則だよ……っ!
毎日これでも良いくらい、ご飯が進んじゃうし、いっぱい食べたすぎて、太っちゃいそう。」
「しゃけ、おいちいみゃ!
ミーナちゃ、どんどん、たべるみゃ!!
ミーナちゃ、かわいい、みゃ!!
ふとっちぇも、かわい!!!
ちょれに、ミーナちゃ、ぼうけんちゃ、らいじょぶ!!」
「ヤダ!!クロちゃん、めちゃくちゃ紳士!!
ショウさんの影響かしら?!」
「え???は???」
クロが口の周りを満足げにペロリと舐めながら、さらに、バイキングの方を指差し、鮭を勧めてくる。
……若干、タラシ的なセリフを添えて。
それにミーナが反応すると、明らかに巻き込み事故の祥は目を丸くして、振り向いた。
………ここ数話若干不憫である。
………いや?最初のページからルナに振り回されて不憫だったか………うん。
「いや、納得すんな。」




