第十二話 朝食バイキング part10〜 「じごうじとく。たろ、じろ、ペンペン、しなかったら、ラルクちゃ、あのよ、ばいばい。」
「………とりあえず、俺たちも食うか………。」
ガルとシロの食べっぷりにドン引きして固まっていた冒険者一同は、ガイルの言葉にハッと我に返って、テーブルの上にトレイを置き、着席し、カトラリーを掴んだ。
────さて、ここからは、爆食するガルとシロを横目に、自身のトレイに並ぶ男飯へと、カトラリーを伸ばした、男性陣のリアクションから見ていこう。
まずその先陣を切ったのはガイルだ。
揚げたてのから揚げをフォークで突き、大きく口を開けてガブリと一噛みした。
その瞬間、口の中にジューシーな肉汁がジュワリと広がる。
「ん〜!昨日の唐揚げのむちゃくちゃ美味かったが、コレも同じくらい美味ぇ!!
エール、いやビールが欲しくなる!!!
これを二郎たちが作ったのか!!
スゲェな!!!」
「ん!おいちく、できてりゅ!!
おいちー!!」
衣の完璧なサクサク感と、溢れ出す鶏肉の圧倒的な旨味。
昨夜のコンビニの唐揚げも、その美味さたるやという感じだったが、それと同じ程の美味さ、それを作ったもふもふたちにガイルは感嘆の声を上げる。
そんなガイルの声に、隣に座っていた二郎(ラルクを見張るためにこっちについた)は唐揚げに齧りつきながらも、嬉しそうに尻尾を振った。
微笑ましい光景である。
その微笑ましい光景に引っ張られるように、またその隣のレオンもいい焦げ目がついたウインナーを齧り、パキッと良い音を立てて、肉汁が口の中で弾ける。
その旨味を口に含んだまま、白米をかき込んだ。
「〜〜〜っ!!こっちのウインナーもマジでヤバいよ! 兄貴!!
皮がパキッて鳴って、肉汁が中から噴き出してくる……!
ライスを進める手が止まらない……!!」
「おいちい!!おいちい!!!」
夢中でかきこむレオンの横で、五郎も小さな手で器用にフォークを持ち、一生懸命手を動かし、口に運んでいる、非常に愛らしい光景である。
さらに、両頬に綺麗にワンコの肉球スタンプを押されたラルクも、ふかふかのパンに白いバターを贅沢に厚塗りして口へと運んだ。
「……うぅ、サクサクで、ふわふわだ……っ。
こんな王族くらいしか……いや王族でも食えないようなものが食えるなんて……。
昨日から思ってたけど、このホテルってやっぱりすごいんだな…………。」
そう呟くラルクは涙目である。
それもそのはず、中世ヨーロッパ風のこの異世界において、一般人が口にするパンといえば、固い黒パンが当たり前。
王侯貴族が食べるような白いパンであっても、ここまで耳がサクサクで中が綿菓子のようにふわふわな代物は存在しない。
「……でもせっかくなら、万全な状態で食べたかったな………」
そう言いながら、ラルクはそっと両頬に触れた。
一口噛むたびに、手加減なしで叩かれた両頬がズキズキと激痛を訴える。
せっかくの極上パンなのに、顔が腫れすぎていて猛烈に食いにくいのだ。
自分の自業自得なのは分かっているが、あまりにも生殺しすぎる。
「じごうじとく。たろ、じろ、ペンペン、しなかったら、ラルクちゃ、あのよ、ばいばい。」
「分かってるけど、恐ろしいこと言わないでくれませんかね????」
涙目でパンを咀嚼するラルクの横で、太郎が、ローストビーフに目を輝かせながらも、冷ややかなジト目でラルクを一瞥し、片言で自分たちが止めなければ、お前は死んでいたぞと言う太郎。
その辛辣さに別の意味でラルクは涙目になった。
すぐ近くに姉たちがいるので、詳しい話を聞かれたくないという気持ちもあるのだろう。
そしてそれを自室でモニタリングしているルナはと言うと。
(…………マジで、何やらかしたんだ、ラルクさん……………。
遠回しに死んでたって言われてんだけど。
え?殺されてたって意味じゃないよね??
ホテルで殺人事件起きそうだったわけじゃないよね???
ここは推理漫画の世界じゃないから迷宮入りになりかねないんだが????
………あ、でももしラルクさん死んだら、犯人一目瞭然か。
今もお姉様方が能面のような顔でランクさんを見てるもの。
死んだ目してるもの。
どこか腹くくった目をしてるもの。
本当に止めてもらってよかったね、ラルクさん?!)
本当にそのとおりである。
ちなみに一連の流れのBGMはガルとシロの吸引している音だったりする。




