第十二話 朝食バイキング part8〜「……あ。あいつ、確実に全部食うわ」
「ガルちゃ、ガルちゃ。
ここ、ちゅきなもの、ちゅきなだけ、いーーーっぱい、おかわり、ちゅるの!
おいちいもの、いっぱい!!
のんびり、たべりゅ、ごはん、ないないよ!」
目を光らせるガルとそれにドン引きするガイル。
そんな2人に構うことなく、ガルの裾をちょんちょんと引っ張り、満面の笑みを浮かべたシロが悪魔の囁きをした。
ソワソワと早く行きたげに、チラチラと並べられた料理を見ている。
深夜のコンビニで絆を育んだシロからの「なくなる」という言葉が決定打となり、ガルのリミッターがぶっ壊れたらしく、トレイをがっしりと掴み、弾かれたように、いの一番にスパイシーな香りの素である、カレーライスコーナーへとシロと共に突撃していった。
「おい、ガル! 待て!」
慌てたガイルの制止の声など、ブラックホールと化した男の耳には1ミリも届かず、ガルの暴走を止める為に、ガイルを始めレオン、ラルク、太郎たちもふもふが後へと続く。
「おい、ガル! 盛りすぎだろ!! 溢れそうになってんぞ!!」
「シロ、器用だね?!」
一番乗りにカレーライスコーナーに辿り着いたガルは、どこから持ってきたのか、特大の皿の上に、これまた、これでもかと山のようにつやつやの白米を盛った、大皿のカレー皿を乗せ、その上から、お玉を凄い速さで往復させて、ドボドボとカレールウをカレーの大皿へと注ぎ続けていた。
その横ではシロが器用にトングを前足で持ち、ベーコンやハム、唐揚げなどを皿に大量に盛っている。
それを目撃したガイルの悲鳴のようなツッコミをいれ、レオンがシロに驚きの声をあげた。
ガルの皿はすでに大皿の境界線を越えて、重ねている特大皿に溢れかけそうになっているが、ガルは気にしない。
「………大丈夫だ。
こうなることを見越して、一番デカい皿を借りた。
溢したりしない。」
「そういう問題じゃねぇだろ!!
おまえ、食える分だけ取るのがマナーだろうが!!
おいショウさん! こいつを止めてくれ! 皿から溢れて――」
慌ててガイルが振り返るが、後ろから付いてきていた祥は、苦笑いをして口を開いた。
「私共としては、ほかのお客様に迷惑になる行為や取った料理を理由なく残す行為さえ、されなかったら、問題ございません。
…………それに、失礼ですが、ガル様が完食されないとは思えないのですが…………。」
「……あ。あいつ、確実に全部食うわ」
「うん、絶対に一口も残さないよね…………。
というか、俺らが追いかけたのって、食い尽くされるかもって危機感だったわけだし。」
「………というか、止めたら俺らの身が危ないんじゃねぇ………?」
祥の言葉に、ガイルとレオンはスンとした顔で悟り、ラルクは引いた顔をした。
ガルの食欲は昔から知っているし、それでも我慢してくれていたことも知っている。
………そしてここで昨日から暴走している様もずっと見ているのだ。
止められるはずもない。
諦めた方がいいだろう。
そう思って、ため息を吐き、ガルを止めるのを諦めた男たちの目に美味しそうな料理が飛び込んでくる。
先ほど、扉を開けた時に香ってきた芳しい香り、ガルに気を取られ、忘れていた食欲を刺激する香りが、再び3人の鼻腔を擽り、生唾を飲む。
カリカリに焼かれたベーコンのジューシーな脂の香り、じゅわりと出汁が染み出す黄色い出汁巻き卵、ふっくらと焼き上げられた鮭の塩気。
さらに、ガルが虜になりつつあるカレーの暴力的なスパイスの香りが胃袋を直接掴んでくるような感覚に陥る。
「……っていうか、めちゃくちゃ美味そうな匂いだな………。」
ガイルが思わず溢れたという風に呟くと、その横でレオンが嬉しそうに言う。
「兄貴、見てよこの肉料理! このウインナー、皮がパキパキに張ってて絶対に美味いよ!
俺、これ食べよ!!!」
レオンがトレイを握りしめ、目を少年のように輝かせ、トングと皿を手に持った。
その横にいる両頬をラルクすらも、食欲で痛みを忘れたのか焼き立てのふかふかしたパンの香りに鼻をピクピクと動かしている。
「……よし、お前ら。
ホテルの厚意に甘えて、俺たちも片っ端から盛るって、食うぞ!
もちろんマナーを守ってな!!」
「「おう!!」」
「「「あ〜い!!!」」」
ガイルの号令とともに、男性冒険者3人ともふもふたちは一斉に皿とトングと共に料理の山へと飛び込んだ。
「このフワフワした卵、美味そう〜〜!」
「お、これコンビニって店にあったから揚げじゃねぇか!!これ美味かったんだよな!!!このベーコンも美味そうだな!!」
「パンにこの白いバターをたっぷり塗るなんて………なんて贅沢な………」
「たろ、これ、たべる!!」
「じろ、これ!!!!」
「おいちちょうね〜。」
3人は気になるおかずを我先にと片っ端からお皿へ盛っていき、もふもふたちも嬉しそうに続く。
ガルの異次元の山盛りカレーを筆頭に、男たちや、もふもふたちのトレイの上の皿は、茶色くてジューシーで食べ応えがあるものばかりが並んだ。
日本で言うところの『ザ男飯』である。
野菜はないが、まぁ幸せそうなのでいいだろう。




