第十二話 朝食バイキング part6〜グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!! 「うわッうるさっっっ!!!」
祥が両頬が腫れたラルクを怪訝な顔で見つつ、ガイルへ問いかけた。
その祥の問いかけに、ガイルは心底呆れ果てたように大きく溜め息をついた。
「……あぁ、ラルクか。
俺たちも朝起きてロビーに来たら、あいつが先にいてな………。
珍しいこともあるもんだと思って、話しかけようとしたらあの顔だろ?
んで、何があったか聞き出そうとして、3人で問い詰めても、だんまりで、何があったか一切言い出しやがらねぇ」
「……言い出さない、ですか」
「ああ、唇噛み締めて、目ぇ泳がせてんだから、疚しいことがあんだろうなと思って、ホテルに迷惑かけちゃならんと、結構キツめに尋問したんだが、目をそらすばかりでなぁ………。」
そう言うと、ガイルは頭を抱えて肩を落とした。
(………何があったんだよ。あの叫びの後。)
「ラルクさん?何があったんです?」
一番手っ取り早いのは本人に聞くことだろうと、祥はラルクに話しかけるが、バッと顔をそらし、祥を見ようとしない。
それもそうだろう。
読者の皆様は既にご存知の通り、この男、寝ぼけて女性冒険者のテリトリーに突撃仕掛けたアホなのだ。
もしも、太郎と二郎が粛清してなければ、ラルクは朝日を拝めていないだろう。
両頬はとてつもなく痛いが(なんせ手加減してるとはいえ、とっさに殴ったのだ、皆さんご存知の通りあの怪力である。痛くないはずがない。)、ラルクは太郎と二郎に感謝していた。
(…………言えねぇぇぇぇぇぇ!!!!
寝ぼけて、寝込みを突撃とか、さすがの俺にもわかる、洒落にならんこと、しかけたとは言えねぇぇぇぇぇぇ!!
風呂覗くよりもワンランクところか、ぶち抜いた案件だろ!!!
紳士が名乗れなくなるところだった!!
これ、姉ちゃんにバレたら、塵も残らないどころか、来世すらねぇ!!
墓場まで持ってく案件!!
太郎、二郎、止めてくれて、マジでサンキュー!!!!)
………この男、倫理観があるのかないのか、わからない男である。
まぁ一応、反撃ができるか、拒否と罵倒ができるかがラインらしいが。
そういうことではない気がする。
ジッと祥が見つめても、ラルクはそちらを見ようとしない。
(………答えねぇな、これ。
ってことは、次に手っ取り早いのは……)
心の中で思いつつ、祥はスッと足元で実にあざとく可愛らしく首を傾げているフェンリル兄弟――太郎と二郎へと視線を向けた。
いつになくあざとい反応。
なにを聞かれるか、分かってやっている。
「……お前ら、なんか知って――」
そう祥が言い終わるより早く、太郎と二郎は一瞬でスンッと真顔に切り替わると、そのまま祥の視線を綺麗に黙殺した。
呆れ果てているのもあるが、昨日言った通り、なんだかんだ言って、ラルクを気に入ってる二人の慈悲である。
犯罪は認めないし、気に入ってるなら止めるべきだと思ったから、やったのだ。
自分たちは悪くない。
その反応を見て、自室でモニタリングしているルナも、二匹に聞いた祥も予想通り自業自得なことが起きたんだろうと察し、それ以上追求するのをやめた。
太郎と二郎がこれ以上動かないのだ。
追求しなくても、大丈夫な案件だろう。
もふもふたちに対する信頼は厚いのである。
「………まぁ、ご本人が無事ならよろしいでしょう。
…………では、そろそろお時間ですので、参りましょう。
朝食バイキング、オープンです!!」
祥は腕時計の針が午前7時半を回ったのを確認し、レストランの自動扉の横にある開場ボタンを押した。
ピロン♪と爽やかなチャイムが全館に鳴り響く。左右へと静かに滑り出した重厚な扉の隙間から、様々な料理の芳しい香りが漂ってくる。
その中でも、この世界の人間である彼らが、未だかつて嗅いだことのないような「スパイシーな香りに惹きつけられ、冒険者一同の口の中いっぱいに、唾液が溜まった瞬間。
グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!!
「うわッうるさっっっ!!!」
一段と地響きのような音が響いた。
……………まぁ、この男が我慢できるはずがないのである。




