第十二話 朝食バイキング part5〜「……あの、あそこにいるラルクさんなんですが。 あの顔、一体何があったんです? 」
第三者視点。
さて、ルナがポテチとコーラを用意し、まぁ今夜も祥にアイアンクローされるフラグを立てたようだが、視点を変え、祥を追っていこう。
バタンとルナの部屋のドアが閉めた瞬間、祥は小さくため息をつき、手元の食べ終わったトレイを持ち直し、そのまま廊下を進んで、レストランの方に向かっていく。
廊下を進むにつれて、スピーカー越しではない、地響きのようなガルのお腹の音が文字通り床を伝うように、足の裏に響いてくる。
(マジでお腹に何か飼ってんのかな、ガルさん…………)
なんとなく、行きたくないと祥は思いつつも、足を止めることなく進み、やがてレストランへとたどり着く。
たどり着いた祥の目に飛び込んできたのは、モニターに映っていた通りのカオス、いや、実際に現場に来てみると、それ以上の視覚情報だった。
「グゴゴゴゴゴ……!」と凄まじい重低音を響かせ、自動扉の前に張り付き、動こうとしないガル。
その横では、引き剥がされたはずのシロが、諦めきれずにトラの隙を突いては扉を前足でカリカリと引っ掻いている。
その後ろで、いつもよりも美しくなっている女性陣が距離をとって佇み、さらにその後ろで、ガイルたちがドン引き、その内一人、ラルクは両頬に肉球の跡をつけて腫らしている。
………全てモニターに映っていた光景にも関わらず、肉眼の方がダメージが来るのは何故だろうか?
(………モニターで見るよりヤベェな………。)
「…………皆様、おはようございます。よくお休みになられましたか?」
カオスな空間にドン引き&遠い目をしつつも、支配人として振る舞う祥。
そんな祥に気づいた冒険者一同は祥を向き挨拶を返した。
「……おう、ショウさん、おはよう」
「ガイル様、おはようございます。
………ガル様は随分お早くお着きになったんですね?」
「………すまん。
仮眠を取ったら、胃袋がリセットされたとか言っててな………。
一時間前からあの調子らしい……。」
「………ガル様は夜中にコンビニで食事をされたはずなんですが。」
「は?!マジか?!」
「はい、うちの従業員であるシロとコンビニで、肉まん、唐揚げ、スイーツとたくさん召し上がられたはずですよ。
夜間店員のロボ太より聞いております。」
「…………マジですまねぇな、ショウさん………。
アイツ、ここの代金がタダなのを良いことに…………。」
「いえ、それはよろしいのですが。
ガル様が、本来常識がある方なのは見ていればわかりますし。
恐らく、お金を払うとなっても、変わらないのでは?」
「………まぁ、そうだな。
昔からよく食うなとは思っていたが、ここまでとはな…………。
若い頃は貧乏クランだったし、今も余裕があるわけじゃねぇから、我慢してくれてたんだろうが………。
まさかこのタイミングで………。」
そう言い、ガイルが頭を抱える。
そんなガイルに苦笑いをこぼしつつも、祥は一歩、ガルへと近づき、声をかけた。
「ガル様、よくお休みになられましたか?」
「………ショウさんか。
ああ、とても寝心地がいい部屋だった。
シロも側にいてくれて、俺が腹が減ってるのを気にして、コンビニに連れて行ってくれたんだ。
いい子だ。
………ショウさん、シロも俺たちと共に飯を食いたがってるんだが、何とか一緒に食べれないか?」
「ええ、実はその事で提案が。
皆様に私からお願いがございます。」
「お願い?」
「ショウさん、それってなに?」
ガルの願いに祥は微笑み、冒険者全員を見回しながら言うと、全員が戸惑ったような顔をし、サラとソラが聞いた。
そんな冒険者たちから視線を外し、祥は足元のシロたちを一瞥して、口を開いた。
「私共のホテルの従業員である、もふもふたちは朝からバイキングの準備をとても頑張っておりました。
それ故にまぁ、シロが顕著ですが、とてもお腹が空いております。
ですので、ぜひとも皆様と共に食事を取らせていただきたいのです。
よろしいでしょうか?」
祥がそう告げ、困ったように笑うと、ガイルがパッと表情を明るくして手を叩いた。
「おお! 俺たちは大歓迎だ!
昨日もあいつらには世話になったしな。
ガルもこう言ってることだし、こちらこそぜひ、お願いしたい。
なぁ、良いよな、みんな?エルダさんたちもいいですよね?」
そうガイルが冒険者一同に声をかけると、皆、笑顔で快諾し、それを聞いた祥がシロに声をかける。
「よかったな、シロ。
冒険者さんたちは良いってよ。」
「いいの?!やっちゃーーー!!!」
許可をもらったシロの目がパァァァッと輝き、小躍りをしだした。
そんなシロに祥は続ける。
「アイツにも礼言っとけよ。アイツの提案なんだから。」
「あいつ?あいつってル「シロちゃ!めっ!!」あ、おにゃまえ、らめだった。
おーにゃー、いい?いっちゃ?」
「ああ、そうだよ。」
「ん!!ありあと、いう!!」
そう言うと、シロはルナの部屋のカメラに向かって短い前足をブンブンと振り始めた。
ありあとー!!!と可愛らしく大きな声で叫ぶ。
………悶絶ものである。
(〜〜〜〜可愛い!!!昨日あんなにコンビニでむさぼり食ってたとしても可愛い!!!)
ベットで悶えるルナを知る由もない、祥は冒険者たちに向き直り、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
「よしてくれ、世話になってるのはこちらなんだから。」
そう言い、ガイルは祥の頭を上げさせ、祥はならばと変わりのように、感謝を込めて微笑んだ。
場に柔らかな空気が流れた。
とても温かな空気だが、ふと、祥が思い出し、空気を壊すことに申し訳なさを感じつつも口を開いた。
「……あぁ、それと、ガイル様。もう一つ聞いてもいいでしょうか?」
「ん? なんだ?」
祥の言葉にガイルは首を傾げる。
そんなガイルから祥はスッと視線をその背後へと向け口を開いた。
「……あの、あそこにいるラルクさんなんですが。
あの顔、一体何があったんです? 」




